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【論文読んでみよ】学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー を読む(その1)

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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論文読んでみよう

論文を読んでみましょうのコーナー。

僕は論文を読むのがとても苦手なのですが、なんとか克服しようと思って読んでいるうちに、書いてあることをスクールカウンセラーをやっている仲間や、今ちょうどこの問題にかかわることで悩んでいる人にシェアしたいなと思う論文に出会うわけですよね。

まだ論文の良しあしとか、この論文のココがすごい!とか分かるわけではないですが、僕の感じたことを交えながらインターネット上で公開されていて、誰でもアクセスすることのできる論文について書いていきたいと思います。

 

ちょっと気になるあの論文、

今回は

 

帝京大学 心理学紀要 2003,No7,27-42

本永拓郎先生の 学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー

https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/tmotonaga7.pdf

を読んでみました。

 

治療構造と相談構造

この論文では「治療的かかわり」に対して「相談的かかわり」、「治療構造」に対してより日常的な「相談構造」という概念について語られています。

心理療法では、心理療法を行うための枠組み、「時間」や「場所」や「料金」「守秘義務」「治療契約」といったもので構成される「治療構造」というものががとても重視されています。

これは、相談に来た方の内面を深く探っていったり、治療者や相談に来た方の安全を守ったりするためにとても大事なものなのです。

これがあるからこそ安心して心理療法に取り組める、いわば「安全に非日常を体験するための装置」ともいえるものなので、病院やクリニック、あるいは臨床心理士の資格を持っている方のやっている施設相談室ではかなり厳密に設定がされているものですが。

スクールカウンセリングでは、こういった治療構造とは程遠い設定の中で相談活動を行うことになります。

スクールカウンセリングで行うのは心理療法ではなく、相談活動なのですが、それにはこの「構造」の問題が関係してます。

例えば学校に着いて職員室に入った瞬間に「ちょっと30分だけこの子の話を聞いてやってください!」なんて急に頼まれることもあるし、そもそも児童生徒が嫌がっているのに無理やり連れてこられたり、相談中に学校の先生が部屋に入ってくることもあれば(最初はびっくりしましたが心理療法ではなく相談業務をやっているんだから要はどう活かすかが問題)、体育倉庫のようなとこ(本当に申し訳ない)で保護者面談をしなきゃいけなかったこともあるし、料金を取るわけでもないし、とにかく病院なので普通に使っている「治療構造」を持ち込もうとすると、「ありえない!」ってことになっちゃうわけです。

(実際に「ありえない!」とか言って穴倉みたいに相談室にこもってカウンセリングだけをやろうとしている方もいるかと思いますが・・・学校からしたらその「ありえない」!が、ありえないですよね・・・)

日常性と中立性と専門性のバランス

もともとスクールカウンセリングをやっている方はご存知の通り、学校の相談室というのは職員室の横にあったり、会議室をあてがわれたりと、通常の病院や開業領域で使われている面接室に比べて、日常的な生活場面に近いところに置かれがちですよね。

さらに、日常的に児童生徒と関わっている学校の先生との連携の中で行われるために、どうしてもそこには協働的なかかわり方が必要になってきます。

ところがここで問題になるのはカウンセラーとしての中立性です。

教師から教育的な指導を求められたときに、それをそのままやってしまっていては、カウンセラーとしての専門性とはなんだという話になりますし、児童生徒や保護者にとっては中立的な存在ではなくなってしまいます。

かといえ、学校からのオーダーを自分の専門性を盾に無視してしまえば(守秘義務を盾に一切カウンセリングについて話さないなど)、協力が出来なくなってしまう。

このように、日常性と協働性と専門性のバランスを取るのがとても難しいのがスクールカウンセラーだったりします。

本当にその通り。

多方面からのニーズ

もう一つ、学校では例えば相談に来るのが児童生徒であっても、その児童生徒に関わる要望を持った人がたくさんいることがままあって。

それぞれ相反するような、宿題のプレッシャーを感じすぎてしまっている児童生徒に「ちゃんと宿題をやらせてくださいみたい」な担任からの要望とかね、保護者は「担任が子供の気持ちをわかってくれないから担任を変えるように学校に働きかけてほしい!」みたいな。

こんな極端なことはなかったとしても、それぞれが違う解法をもって生きてるのが今生きている社会の多様性であって、学校もそれと同じですよね。

症状消失にこだわらない目標設定

あと相違点として、「目標設定」が挙げられていて、病気の治癒や症状の消失が目標として設定されることが多いのだけど、学校場面では症状があったとしても症状云々よりも生活の中で困っていることに焦点を当てていく、その個人の持つ主訴の解決をすることで、本人の持っている健康な部分を活かしたり、自己効力感を高めていくことが目標に設定されやすいと書いてあります。

SCの難しさってここだなと思うのですが、学校の目指していることや教育的な役割みたいなことと、本人の望むことをどうやってちゃんと同時に成り立たせるのかってバランス感覚だと思うんですよね。

この論文では

つまり学校臨床は、学校構造または教育構造とも言うべき大きな構造を常に意識し、日常性や協働性の視点を保持しておく必要がある。

という風にまとめて書いてあります。

 

多くのスクールカウンセラーは、経験の中で徐々にその学校ならではの環境と、自分に合った方法でその学校独自の相談構造を作っていくものですが、なかなかそう器用に自分のこれまでの在り方を変えられなかったり、経験が少なかったり、教えてくれる仲間や先輩に恵まれなかったりで、どうしていいかわからずに、なんとか仕事をやろうと苦労している方もいらっしゃるかと思います。

「あいつらスクールカウンセラーのスクールの部分がわかっちゃいないんだ!まずは学校理解だろ!」なんて一緒に働いていた先生がよく言っていましたが、そこをどうやって担保しつつも専門性を失わないでいられるのか?ってところがなかなか、それこそ大学や大学院ではなかなか教えてもらえない実際にやってみてトライ&エラーの中で知を集積していく、の部分なのだろうなと思います。

ここらへんを教えれる人はなかなかいないし、学生時代に教えられてもなかなかピンとこないものかもしれませんよね。

 

後編に続きます。

【論文読んでみよ】学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー を読む(その2)

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