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【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第2章その3 患者の信念や準拠枠を利用すること 

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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ミルトン・エリクソン入門を読む

WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)という本があります。

この本は、ブリーフセラピーの源流になったと言われる天才的な精神科医ミルトン・H・エリクソンのアプローチについて、著者の目線からまとめられており、僕自身の臨床の中で一番大きな影響を受けている本の一つです。

自分の臨床を見直すという意味でも、ミルトン・エリクソンについて多くの方に知っていただくという意味でも、この本に書かれていることを紹介しつつ、自分なりにコメントを書いて行こうかと思います。

関心の在る方はお付き合いください。

 

患者の信念や準拠枠を利用すること Utilizing the Patient’s Beliefs and Frames of Reference

 

エリクソンは、患者の非論理的な信念を修正しようとはあまりしなかった。そのかわりに、これらの信念を利用して、患者を問題の外へ引き出そうとしたのである。

出典:ミルトン・エリクソン入門 第2章P38より

 

事例1

昔々、あるところに自分のことを鶏だと思いこんでしまった王子がいた。彼は服を全部脱いで裸で過ごしており、地面のトウモロコシをつついて食べる以外何も食べようとはしなかった。

遠くから医者や賢者を呼び寄せたものの、この王子が鶏ではないことを王子に納得させること、行動をやめさせることは誰も出来なかった。

最後に来た賢者は、それまでの者とは少し違っていた。

まず王子と二人きりになると、自分の服を脱いで、王子と一緒に床のトウモロコシをつつきはじめた。

王子は賢者に「お前は誰だ?」と挑むように尋ねると、賢者は「私は鶏です」と答え、さらに王子に「あなたは誰ですか?」と尋ねると「私も鶏だ」と王子は答えた。しばらくして王子は賢者を自分と同等なものと認識するようになった。

ある日、賢者は人間の服を身にまとうと、王子はそれに抗議した。

賢者は「鶏である私が服を着るということは、鶏は服を着るのです」とだけ答えた。しばらくすると王子もいくらか服を身にまとうようになった。

しだいに賢者は人間の食べ物を食べるようになり、またしばらくすると真っすぐ立って歩くようになった。王子もそれに抗議しつつも、同じように返され、次第に王子の振る舞いは、人間としてのそれに変わっていった。

 

この事例(?)は王子の「私は鶏です」という準拠枠を大切に扱う。然る後、少しずつずらしていく、まさにペーシングとリーディングのエッセンスが詰まった逸話(?)かと思います。

 

事例2

大学の授業で板書をしている途中に大きなおならをしてしまい、それ以後6ヶ月間、夜中に買い物に行く以外はアパートにこもっている女性がいた。

エリクソンは彼女が信心深いことを知り、「あなたは不信心で罰当たりだ!」と彼女を責めた。彼女は当然憤慨したが、エリクソンはなおも続けた。「液体と固体を残したまま気体だけを外に出すバルブを人間の技師が創ることは出来るでしょうか?」と。彼女は「それは難しいだろう」とそれを否定した。
エリクソンはさらに、神はあなたに肛門を与え、あなたはそれに感謝をしなければならないと伝え、毎日おならの出やすくなる豆料理を作り、大きいおなら、小さいおなら、うるさいおなら、やさしいおならを出せるように練習させた。

彼女はこの課題を実行し、大学に復帰した。

 

この事例についてどんなふうに考えたらいいのでしょう。

彼女は自分が人前でおならを出してしまったことについて、羞恥にまみれた意味付けをしていたはずです。また彼女の恐れは「またおならが出てしまったらどうしよう」というものであったでしょう。

この課題は、彼女の持っている信念を使って「おなら」についての意味付けを変えている、というふうに取ることも出来るかもしれません。

また、エリクソンが「罰当たり」と言って彼女が憤慨した瞬間に、この介入はバチッと入る形になっていたのかなと思います。

彼が暗に彼女に伝えているのは「あなたの肛門は、紛れもない神の御業で、あなたはその神に与えられた肛門を使って、自由に出したい時におならを出し、出したくない時は蓄えていられるのです」ということなのだと思います。

つまり「あなたはおならをコントロールできますよ」ということなのでしょう。

課題を通じて彼女は身体からそのことを理解してきました。

 

事例3

自分は全く役に立たない人間であると、自分のケアを全くしようとしなかった農場労働者の男に対して、エリクソンはトラクターがいかに洗練された農作業のための機械か、ということについて話し始めた。

男はこの話を理解し、続けてエリクソンは、農機具は手入れをしないとすぐに役に立たなくなることを指摘し、機具の手入れの仕方を詳しく説明した。

男は自分の生活を変えようというエリクソンの提案を受け入れるようになった。

 

男は、自分自身のことについては投げやりになっていたのですが、こと仕事のことについては、とても誇りを持ってやっていたのかもしれません。
それをこの男に「あなた、前は仕事を頑張っていたじゃない」と直接伝えても、今の彼には何の意味もないことでしょう。

エリクソンは、男の中にある仕事の誇りという資源(リソース)を呼び起こすために、トラクターや農機具の「良さ」について、そしてその農機具の手入れについて語ることで、農機具を大事に手入れしている男の記憶を呼び覚ましたのかもしれません。

リソースを扱うにしても、抵抗の起こらないやり方があるということかと思います。

 

まとめ

準拠枠(frame of reference)とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、その人の拠って立つ考え方のクセや判断基準というように僕は捉えています。

準拠枠は、その人の中に眠っていることもあれば、行動を観察する中で明らかになることもあるでしょう。

カウンセリングの中で、その人の信念を大事にしながら話を聞くことはもちろん重要なことなのですが、この準拠枠をどう捉えるか、どうやってそこに沿って話をしたり、介入の流れを決めるかということが、臨床の勘所のような気がしています。

エリクソンのような介入をしない場合であっても、そこを掴むか掴まないかでは、カウンセリングの中で起こる相互作用のスムーズさに大きな違いがあるのではないかと思います。

 

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