トラウマ体験のあと、「自分が悪かった」「もう誰も信用できない」「頑張らないと価値がない」と感じ続けてしまうことがあります。
認知処理療法(Cognitive Processing Therapy:CPT)は、そのような苦しみを生み続けている考え方を整理し、今の自分に役立つ考え方へ少しずつ育て直していく心理療法です。
■ 結論
- トラウマは出来事だけでなく、その後の「意味づけ」にも影響を与えることがあります。
- 認知処理療法は、自分を責め続ける考え方をやさしく見直していく心理療法です。
- 考えだけではなく、感情や身体の反応、人との関係も含めて回復を目指します。
- 安心できる人との関係の中で取り組むことで、少しずつ未来への希望を取り戻していくことが期待できます。
トラウマからの回復は「出来事を忘れること」ではなく、「今を生きやすくする新しい意味づけ」を育てていく過程です。
「もう十分頑張っているのに、自分だけが苦しい」「人に合わせすぎてしまい、自分が何を望んでいるのか分からない」「いつも相手の機嫌ばかり気になってしまう」。
このような悩みを抱えて相談に来られる方は少なくありません。
一見すると性格の問題のように感じられるかもしれません。しかし、お話を伺っていくと、その背景に過去のつらい経験や傷ついた体験が影響していることがあります。
トラウマという言葉を聞くと、大きな事故や災害だけを思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、長い間否定され続けた経験や、安心できない家庭環境、いじめ、人間関係の傷つきなども、その後の生き方に大きな影響を与えることがあります。
認知処理療法(CPT)とは
認知処理療法(CPT)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法として研究されてきた心理療法です。
トラウマ体験をした後、人は出来事そのものだけでなく、自分や他人、世界に対する見方まで変わってしまうことがあります。
例えば、
- 私が悪かった。
- 人は信用できない。
- 頑張らないと認められない。
- 安心できる場所なんてない。
こうした考え方は、その時の自分を守るためには必要だったのかもしれません。
しかし、今もその考えが続いていると、人間関係や仕事、家族との関係、自分自身との関係まで苦しくしてしまうことがあります。
認知処理療法では、その考えを無理に否定するのではなく、「今も役立っているだろうか」と一緒に見つめ直していきます。
「自分が悪い」と思ってしまう理由
トラウマを経験した方の多くが、自分を責める気持ちを抱えています。
これは「本当に自分が悪い」という意味ではありません。
「自分が悪かった」と考えた方が、「次は頑張れば防げる」と感じられるため、心が何とか状況を理解しようとしていることがあります。
つまり、自分を責めることも、生き延びるための方法だった可能性があります。
カウンセリングでは、このような考えを否定するのではなく、「その考えは何を守ろうとしてきたのだろう」と一緒に考えていきます。
当センターの認知処理療法プログラム
天白こころとからだのケアセンターでは、認知処理療法を土台としながら、身体への気づきやセルフコンパッションの視点も取り入れたプログラムを行っています。
主な内容は次のような流れです。
- 出来事と意味づけを整理する
- 苦しみを長引かせている考え方(スタックポイント)に気づく
- 考え・感情・身体のつながりを理解する
- 考え方をやさしく見直す
- 自分を責める代わりに、自分を支える方法を学ぶ
- 安心を感じる力を育てる
- 人との信頼関係を少しずつ取り戻す
- 自分で選び、自分で決める感覚を育てる
- 自分の価値を見つめ直す
- これからの人生の物語を書き直していく
「関係」の中で回復していくという視点
トラウマは、人との関係の中で傷つくことがあります。
だからこそ、回復もまた、人との関係の中で少しずつ育まれていきます。
カウンセリングでは、「一人で頑張る方法」を教えるだけではありません。
安心して話せる関係を土台にしながら、「本当はどう感じているのか」「どう生きていきたいのか」を一緒に整理していきます。
その積み重ねが、「自分よりも相手を優先してしまう」「断れない」「将来に希望が持てない」といった苦しさを少しずつ変えていくきっかけになります。
こんな方におすすめです
- 自分を責め続けてしまう
- 他人の機嫌を優先してしまう
- 断ることに強い不安がある
- 安心して休めない
- 過去の出来事が何度も思い出される
- 将来に希望が持てない
- 医療だけではなく、じっくり相談しながら取り組みたい
まとめ
トラウマからの回復は、「忘れること」でも、「前向きになること」でもありません。
これまで自分を守ってくれた考え方を理解しながら、今の生活に合った新しい考え方や安心の感じ方を育てていくことです。
その過程では、自分を責めることよりも、自分を理解することが大切になります。
一人で抱え続ける必要はありません。安心できる関係の中で、自分らしい回復の道を一緒に探していけたらと思います。
■ よくある質問(FAQ)
Q. 認知処理療法はトラウマがないと受けられませんか?
A. PTSDだけでなく、自分を責めやすい、人間関係で苦しみやすい、過去の経験が現在の生活に影響している方にも役立つ場合があります。状態に応じて適切な方法をご提案します。
Q. 過去の出来事を詳しく話さなければいけませんか?
A. 必ずしも詳細に話す必要はありません。安心できるペースを大切にしながら進めていきます。
Q. 他人の機嫌ばかり気になってしまいます。認知処理療法は役立ちますか?
A. 「嫌われないように」「迷惑をかけてはいけない」といった考え方がどのように生まれたのかを整理し、より生きやすい考え方を育てていくことを目指します。
Q. どのくらい通えば変化を感じられますか?
A. 天白こころとからだのケアセンターでは6回の認知処理療法プログラムを行っております。個人差はありますが、一定期間継続して取り組むことで、ご自身の考え方や身体の反応、人との関係の変化に気づかれる方が多くいらっしゃいます。
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