「できるのにやらない」は本当?子どもの主体性を育てる“補助線”という考え方

結論

子どもが「できる時もあるのに、いつもはできない」とき、
私たちはつい「怠けている」「やる気がない」と考えてしまいます。

しかし実際には、子どもの能力だけではなく、
環境や見通し、不安や安心感との相互作用が影響していることが少なくありません。

そんな時に大切なのは、叱ることではなく「補助線を引くこと」です。

子どもが今の力で取り組めるように環境や仕組みを少しだけ調整する。
その積み重ねが、結果として主体性を育てることにつながっていきます。

「できる時もあるのに、できない時がある」問題

保護者の方からよく聞く相談があります。

  • やればできるのに宿題をやらない
  • 自分で準備できる時もあるのに、できない日もある
  • 分からないことがあるとすぐ止まってしまう
  • 少し困ると「分からない」と言って動けなくなる

こうした時、保護者としてはどうしても、
「本当はできるのにやらない」
と見えてしまいます。

もちろんそう感じるのも自然なことです。

でも私はそんな時、
「どうやったら補助線が引けるだろうか」
という視点で一緒に考えることが多いです。

「できる」と「いつでもできる」は違う

例えば学校では姿勢良く給食を食べている子が、
家では肘をついてダラダラ食べていることがあります。

すると保護者は、

「学校ではできるのに、なんで家ではやらないの?」

と思います。

でも見方を変えると、
学校では頑張っているとも言えるかもしれません。

つまり、

  • 自然にできるレベル
  • 頑張ればできるレベル

は違うのです。

学校では頑張っている。
だから家では力が抜けている。

そう考えることもできるかもしれません。

まず親の心に補助線を引く

子どもを変えようとする前に、
まず保護者自身の心に補助線を引いてみる。

例えば、

  • 学校で頑張ってきたんだろうな
  • 家だから安心しているのかもしれないな
  • 疲れているのかもしれないな

そんなふうに考えてみる。

もちろん本当にそうかどうかは分かりません。

でも「怠けている」と決めつけるよりも、
親子関係を傷つけにくい見方です。

怒ったところで行動が改善することは意外と少ないものです。

むしろ、

  • また怒られる
  • どうせ自分はできない
  • 何をやっても否定される

そんな体験が積み重なってしまうこともあります。

自主学習が難しい子どもたち

不登校の子どもが学校復帰を目指す場面で、
先生から

「自主学習でいいですよ」

と言われることがあります。

とてもありがたい配慮です。

しかし実は、
自主学習だからこそ難しい子もいます。

なぜなら、
自由すぎるからです。

  • どこまでやればいいの?
  • 何をやればいいの?
  • これだけで怒られない?
  • 先生は本当にOKと言う?

こうした不安が強いと、
結局何もできなくなってしまうことがあります。

仕組みとして補助線を引く

そんな時は、
子どもと一緒に小さな計画を作ります。

例えば、

  • 漢字1ページ
  • 教科書を2ページ読む
  • 計算問題を3問やる

それくらいでも十分です。

そして、
それを紙に書いて先生に確認してもらう。

「これでOK」

というサインをもらう。

すると見通しができ、
不安が減り、
行動しやすくなります。

これは甘やかしではありません。

子どもが動き出せるようにするための補助線です。

主体性は補助線の先に育つ

保護者からよく聞く言葉があります。

「最終的には自分でできるようになってほしいんです」

その通りだと思います。

でも主体性というのは、
いきなり生まれるものではありません。

誰かと相談しながら、
小さな成功体験を積みながら、
少しずつ育っていくものです。

特に不登校の子どもたちは、

  • 自分で決めたら失敗した
  • 頑張ったのにうまくいかなかった
  • 自分の判断が信じられない

という経験を重ねていることも少なくありません。

だからこそ、
安心して試せる環境が必要なのです。

「何でも入れる箱」も補助線になる

帰宅後、
カバンの中身を出せない子がいます。

そんな時、
大きな箱を一つ置く方法があります。

帰ったらとりあえず全部入れる。

それだけです。

夜になってから整理してもいい。
保護者が確認してもいい。

最初から完璧を目指さなくてもいいのです。

まずは一歩。

そして慣れたら、
少しずつ補助線を減らしていく。

これも立派な成長支援です。

子どもに届く高さまで梯子を下ろす

親から見れば簡単なことでも、
子どもからすると大ジャンプが必要なことがあります。

だからまず、
子どもの手が届くところまで梯子を下ろす。

登れるようになったら少し梯子を短くする。

また登れるようになったら少し短くする。

その繰り返しです。

私はそれが子育ての本質の一つではないかと思っています。

チェックリスト

  • 「怠けている」と決めつけていないか
  • できない理由を本人の性格だけで説明していないか
  • 見通しの不足が影響していないか
  • 環境の調整でできることはないか
  • 子どもに届く高さまで課題を小さくできないか
  • 補助線を引いた上で主体性を育てられないか

まとめ

子育ては、
補助線を引く作業の連続なのかもしれません。

大切なのは、
子どもを楽にすることだけではありません。

補助線を通して、
少しずつできることを増やし、
主体性を育てていくことです。

最初は手間がかかるかもしれません。

でも半年、一年と続ける中で、
子どもは少しずつ自分でできることを増やしていきます。

そして最終的には、
保護者も楽になる。
子どもも嬉しい。
一緒に成長を喜べる。

そんな関係につながっていくのではないでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q. 補助線を引くのは甘やかしではありませんか?

補助線は「代わりにやること」ではありません。子どもが取り組めるように環境を調整することです。最終的には補助線を減らしていくことを目指します。

Q. いつまで手伝えばいいのでしょうか?

子どもが自分でできるようになった部分から少しずつ手を離していきます。最初からゼロか百かで考えないことが大切です。

Q. 怒った方が早くできるようになるのでは?

短期的には動くことがありますが、長期的には不安や回避を強めることもあります。特に不登校の子どもでは慎重に考える必要があります。

Q. 主体性はどうしたら育ちますか?

自分の意見を出し、それが周囲と調整され、実際に形になる経験を積むことが主体性につながります。


天白こころとからだのケアセンター

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