子どもの「好き」に関心を持つことは、心を大切にすること|不登校の子どもとの関わり

■ 結論

  • 不安が強い子どもには、「何ができたか」だけではなく、「自分は大切にされている」と感じられる経験も大切です。
  • 子どもが大切にしているゲーム、漫画、キャラクター、趣味などに大人が関心を向けることは、その子自身の気持ちや主体性を大切にすることにつながります。
  • 好きなことを認めることと、何でも許すことは同じではありません。気持ちを受け止めながら、必要なところには境界を作ることができます。
  • 不登校では、登校だけを成長の物差しにせず、親子の関係、自分の気持ちを表現する力、興味や主体性が戻ってきているかも丁寧に見ていくことが大切です。

子どもが大切にしているものを一緒に大切にすることは、その子自身の心を間接的に抱きしめるような関わりになるのだと思います。

不安が強い子どもに、何を育てていけばよいのか

不登校の子どもや、情緒的に不安定になっている子どもと関わっていると、不安が強かったり、物事をかなりネガティブに受け取りやすかったりすることがあります。

自分の思っていることをうまく言葉にできず、

「困っている」

「怖い」

「助けてほしい」

と伝える代わりに、暴言になったり、ときには自分を傷つけるような形で苦しさが表現されたりすることもあります。

もちろん、こうした行動にはさまざまな背景があります。すべてを一つの理由で説明することはできません。

ただ、臨床でお会いしていると、「自分の気持ちを誰かと共有して、それを受け止めてもらう」という経験が十分ではなかったのかな、と感じるケースがあります。

そうした場合には、目に見える行動だけを変えようとするのではなく、その子の情緒そのものを支えていく視点が必要になります。

「できる自分」より前に、「大切にされている自分」がある

自尊感情について考えるとき、私は近藤卓先生の「基本的自尊感情」と「社会的自尊感情」という分け方が、とても臨床的にわかりやすいと思っています。

参考:近藤卓著『子どもの自尊感情をどう育てるか そばセット(SOBA-SET)で自尊感情を測る』(ほんの森出版)

社会的自尊感情は、たとえば、

「勉強ができる」

「スポーツが得意」

「人から評価される」

といった、何かができることや社会的な評価と関係した自信です。

一方で基本的自尊感情は、もう少し土台にあるものです。

「何かができるから、自分には価値がある」というよりも、

「自分はここにいていい」

「自分の気持ちは大事にしてもらえる」

「自分という存在そのものが大切にされている」

という感覚です。

不登校の子どもに対して、

「学校に行けた」

「勉強できた」

「朝起きられた」

という結果だけを評価していると、できたことへの評価は増えても、この土台の部分にはなかなか届かないことがあります。

むしろ調子の悪いときほど、

「何もできていないと感じる自分でも、この人は自分に関心を持ってくれる」

という経験が大切になるのではないかと思います。

アタッチメントは大事というけれど

幼い子どもであれば、泣いているときに抱きしめたり、膝に乗せたり、一緒に遊んだりすることで、「自分は大切にされている」と身体的に感じてもらうことができます。

でも、子どもが大きくなってくると、そういうわけにはいきません。

中学生や高校生を、何かあるたびに親がぎゅっと抱きしめるというのは、現実的にはなかなか難しくなります。

では、身体的な距離が少しずつ離れていく中で、どうやって「あなたを大切に思っている」ということを伝えればよいのでしょうか。

私は、その一つが「子どもの関心に関心を持つこと」だと思っています。

子どもの関心に関心を持つ

その子が大切にしているものを、大人も少し大切にしてみる。

たとえば、その子がポケモンの話を一生懸命しているなら、その話を聞いてみる。

恐竜が好きなら、「どの恐竜が好きなの?」と聞いてみる。

プリキュアが好きなら、「それいいね」「どこが好きなの?」と少し一緒に楽しんでみる。

仮面ライダーが好きなら、仮面ライダーの話を聞いてみる。

ゲームが好きなら、どんなところが面白いのか教えてもらう。

私は、こういう関わりは、間接的に、しかも具体的な行動として、「その子自身の心を大切に扱う」ことになるのではないかと思っています。

その子が好きなものは、その子自身が選んでいます。

「これが好き」

「これは面白い」

「これについてもっと知りたい」

そこには、その子自身の感情や意思や主体性があります。

だから、その子が選んでいるものを大切にしてもらえるということは、

「あなたの感じていることや、あなたが選んだことを大切にしています」

というメッセージにもなります。

高学年になるほど、「そんなことより勉強しなさい」と言いたくなる

これは、親御さんの立場になると、とてもよくわかることでもあります。

小さいうちは、子どもがプリキュアや仮面ライダーの話をしていると、「好きなんだね」「面白いね」と一緒に楽しみやすいものです。

ところが、小学校高学年、中学生、高校生になってくると、親の側にも不安が増えてきます。

勉強は大丈夫だろうか。

進学はどうなるんだろう。

学校に行かなくて大丈夫なのか。

将来、働けるのだろうか。

そうすると、子どもがゲームや漫画について一生懸命話しているのを見ても、

「そんなことをしている場合じゃないでしょう」

「ゲームばかりしていないで勉強しなさい」

「そんなくだらないことに夢中になってどうするの」

と言いたくなってきます。

これは、子どもへの関心がなくなったからではありません。

むしろ、親御さんが子どもの将来を心配しているからこそ起こることでもあります。

ただ、その親の不安によって、子どもの「好き」に一緒に関心を向ける機会が失われてしまうとしたら、少しもったいないなと思うのです。

好きなことを認めると、ますます依存してしまう?

ここで、よく出てくる心配があります。

「ゲームを認めたら、ますますゲームばかりになりませんか?」

「漫画の話を聞いていたら、そこから抜け出せなくなりませんか?」

という心配です。

もちろん、生活リズムが大きく崩れていたり、ゲームなどの使用が本人や家族の生活をかなり圧迫していたりする場合には、それ自体を丁寧に見ていく必要があります。

ただ、「好きなものに関心を持つこと」と「何をしても制限しないこと」は同じではありません。

私はむしろ、その子が好きなものを大人が否定せず、「それいいね」と一度ちゃんと一緒に味わってあげることで、子どもが次の関心へ動き出すことも少なくないと感じています。

好きなものを取り上げたり、繰り返し否定したりすると、かえってそこに強くこだわることもあります。

反対に、

「あなたがそれを好きなのはわかったよ」

と十分に共有されることで、

「もう少し別のこともやってみようかな」

と動きやすくなることがあります。

もちろん、すべての子どもが同じように変化するわけではありません。

ただ少なくとも、「認めたら永久にやり続ける」と単純に考える必要はないと思います。

子どもの趣味の話を、じっくり聞く

実際の支援でも、私は子どもたちの趣味の話をじっくり聞くことがあります。

支援者としては、本当は進学や就労のことを話したい、という思いが頭の中にあることもあります。

もちろん、本当に必要な話はします。

しかし、

「今日はどうもそこじゃないな」

と感じる日もあります。

そんなときに、

「今日はあなたの好きな○○について、じっくり聞こうか」

という気持ちで話を聞いていると、さっきまで沈んでいた子であっても、気がつけば目を輝かせながら、立て板に水のように話し続けていることがあります。

好きなことについて話しているときには、本当に表情が変わります。

その姿を見ていると、私は冗談半分で、

「回復魔法がかかっているみたいだな」

と思うことがあります。

もちろん、その子が好きなものそのものに治療効果がある、という意味ではありません。

大事なのは、

「自分が好きなことに、この人は関心を持ってくれている」

「自分が大切にしているものを、この人も大切に扱ってくれる」

という経験です。

直接「あなたは大事だよ」と言わなくても、その子が大事にしているものを大事にすることで、間接的にその人自身を大事にすることができます。

その時間によって気持ちが少し充実し、

「まあ、嫌なことも少しやってみるか」

と次の行動につながることがあります。

「好き」を聞くことは、問題から逃げることではない

親御さんも支援者も、子どもが不登校になると、「大事な問題について話さなければ」と考えやすくなります。

不登校なら登校について。

高校生なら進路について。

年齢が上がれば就労について。

もちろん、必要な課題について話すことは大切です。

しかし、毎回そこに向かわなくてもいいのではないでしょうか。

人が動き出すためには、問題について正しい話をすることだけでなく、もう一度エネルギーが戻ってくることも必要です。

子どもが自分自身に戻れるような時間があり、そのあとで現実的な課題を一緒に考える。

私は、その順番のほうがうまくいく場面をたくさん見てきました。

心理学の研究から考えると

「子どもの好きな話を聞けば、基本的自尊感情が高まる」と直接証明した研究があるわけではありません。

ただ、この考え方は、愛着研究や自己決定理論など、いくつかの心理学的な考え方とよく重なります。

愛着研究では、大人が子どもの状態や気持ちに気づき、それに応答することが、安全感や感情を調整する力の発達を支えると考えられています。

また、自己決定理論では、人が主体的に活動していくうえで、

「自分で選んでいる」という自律性と、

「他者とつながっている」という関係性の感覚が重要だとされています。

子どもの「好き」に関心を向けることは、

「あなたが選んでいるものを尊重しています」

という自律性への支援と、

「あなたの世界に私は関心があります」

という関係性への支援の両方を含んでいる、と考えることができます。

だから私は、「好きなことを聞く」という一見何でもない関わりを、とても大切なものとして見ています。

家庭だけで全部支えなくてもいい

こうした関わりが家庭の中でできると、子どもは家で少し気持ちを充電して、外で頑張りやすくなることがあります。

でも、家庭に余裕がないこともあります。

親御さん自身が疲れ切っていたり、仕事やきょうだいへの対応でいっぱいだったりすることもあります。

その場合に、

「家庭でできていない」

と親御さんを責める必要はありません。

学校の先生やスクールカウンセラー、支援者など、周囲の大人が少しずつ補うこともできます。

大げさなことではありません。

子どもが発言したときに、少し目線を向ける。

小さくうなずく。

「そうなんだ」と返す。

その子が何に興味を持っているのか覚えておく。

以前話したことに、

「この前言ってたやつ、どうなった?」

ともう一度関心を向ける。

こうした一つひとつの関わりが、大げさに言えば、子どもの心に安心を少しずつ積み上げていくことにつながるのだと思います。

「オッケー」と受け止めることと、何でも許すことは違う

ここは、とても大切なところです。

子どもの意思や興味を肯定することは、子どもの行動をすべて許容することではありません。

危険な行動には制限が必要ですし、家族の生活に大きな影響が出ている場合には、境界を作ることも必要です。

ただ、そのときにも、

「あなたがそうしたくなる気持ちはわかった」

と気持ちや願いを受け止めることと、

「でも、この行動については一緒に別の方法を考えよう」

と現実的な枠を作ることは両立できます。

「オッケー、オッケー」とその子自身を肯定しながら、必要なところには境界を作る。

この両方があるからこそ、見守りが単なる放任にならず、関係が依存だけに傾かず、その子自身が主体的に動いていく余地が生まれてくるのだと思います。

学校に行っていなくても、子どもは成長している

不登校の子どもと関わっていると、どうしても「学校に行けているかどうか」だけで状態を評価したくなります。

でも、しばらく学校に行っていなくても、

以前より自分の気持ちを話せるようになった。

好きなことについて生き生きと語れるようになった。

家族にお願いができるようになった。

嫌なことを「嫌」と言えるようになった。

少し先のことを考えるようになった。

という変化が起こることがあります。

そんなときには、

「学校にはまだ行っていないけれど、この子はものすごく成長しているな」

と感じることがあります。

登校は大切な指標の一つではあります。

でも、人間としての成長は、それだけで測れるものではありません。

安心できる関係の中で、自分の気持ちや興味を少しずつ取り戻していく。

その過程そのものを、私たちはもっと丁寧に見ていいのではないでしょうか。

■ 保護者の方へ

子どもの好きなことに関心を持ちたいと思っても、親御さん自身が不安でいっぱいだと、なかなか難しいことがあります。

「このままでいいのだろうか」

「見守っているだけでいいのだろうか」

「ゲームを止めなくていいのだろうか」

「学校の話をしたほうがいいのか、それとも触れないほうがいいのか」

こうした迷いがあるのは、とても自然なことです。

一人で正解を探し続ける必要はありません。

お子さんの状態や親子関係、学校との関係、ご家庭の状況によって、ちょうどよい関わり方は違います。

天白こころとからだのケアセンターでは、不登校や思春期の子どもへの関わり、親子関係、子育てについて、保護者の方からのご相談もお受けしています。

天白こころとからだのケアセンターについてはこちら

■ 無料50分体験カウンセリングのご案内

天白こころとからだのケアセンターでは、無料50分体験カウンセリングをご用意しています。

「子ども本人がカウンセリングを嫌がっている」

「まず親だけで相談してもいいのかわからない」

「今の見守り方でよいのか、一度整理してみたい」

「学校との関わり方について相談したい」

という段階でもご相談いただけます。

不登校の場合、お子さん本人にすぐカウンセリングを勧めるよりも、まず保護者の方と一緒に現在の状況を整理したほうがよいケースもあります。

「学校に行かせるか、行かせないか」という二択だけではなく、お子さんの今の状態、興味や主体性、親子関係、学校との関係などを一緒に見ながら、次の一歩を考えていきます。

無料50分体験カウンセリングのお申し込みはこちら

■ よくある質問(FAQ)

Q. 不登校の子どもがゲームばかりしています。止めるべきですか?

A. ゲームをしていることだけで判断するのではなく、睡眠や食事、家族との関係など生活全体を見ることが大切です。ゲームへの関心を認めることと、必要なルールを一緒に考えることは両立できます。

Q. 好きなことばかり話させていると、現実から逃げ続けませんか?

A. そうとは限りません。安心して好きなことを話せることで気持ちが整い、そのあとに現実的な課題へ向かいやすくなる子どももいます。必要な話をしないのではなく、話す順番やタイミングを考えることが大切です。

Q. 学校の話はしないほうがいいのでしょうか?

A. まったく触れない必要はありません。ただ、毎日のように登校の話だけをすると、子どもにとって家まで緊張する場所になってしまうことがあります。本人の状態を見ながら、話せるタイミングを探していくことが大切です。

Q. 子どもが何も話してくれません。どうしたらいいですか?

A. 無理に聞き出そうとしなくても大丈夫です。その子が見ている動画や好きなものに少し関心を向けたり、話し始めたときに遮らず聞いたりするところから関係を作ることができます。

Q. 見守っているだけで、本当に大丈夫なのでしょうか?

A. 見守ることは、何もしないこととは違います。子どもの気持ちや変化に関心を持ちながら、必要なときには安全や生活上の境界を作ることも含まれます。迷う場合には、家庭だけで抱え込まず専門家と一緒に整理する方法もあります。

 

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