問題志向のメガネと解決志向のメガネ──原因–結果モデルの限界
問題志向と解決志向──原因–結果モデルの限界
ここでは、「問題の見方」について少し丁寧に考えてみたいと思います。
私たちはつい、悩みや不調を「原因さえわかれば解決できる」と考えてしまいがちです。しかし、臨床の現場ではこの発想だけではどうにもならない相談が少なくありません。
目次
Toggle原因–結果モデルに依存すると、何が起きるのか
近代以降の科学技術は、
「問題には原因がある。原因を修正すれば解決する」
という原因–結果モデルの上に発展してきました。
車が壊れたら故障箇所を探し、悪い部品を交換すれば直る。
とてもわかりやすい世界観です。
そのため、心の問題にも同じ発想が適用されがちです。
たとえば不登校の子どもがいたとき、
- 先生が怖いのか
- 友だちに何かされたのか
- 家庭に要因があるのか
- 愛着の問題なのか
と“原因”を探しに行こうとします。
しかし、心の問題は必ずしも原因–結果の一本道で説明できるわけではありません。
原因を追うほど、かえってこじれていくケース
もちろん、原因–結果モデルが有効に働く相談もあります。
認知行動療法や薬物療法のように、
「仕組みがこうだから、ここを変える」という発想が力を発揮する領域です。
しかし一方で、世の中の多くの相談は、
原因を追いかければ追いかけるほど、かえって状況がこじれていく
という特徴を持っています。
先ほどの不登校を例にすると、
- いじめを疑って会議をしても事実が見つからない
- 「家庭が悪いのでは」と親に原因を探しに行く
- さらに愛着の問題を疑い、母子関係を掘っていく
- それでも改善しないで手詰まり
なんてことはよくある話です。
実は子供自身も「何が原因で学校にいないのか?」ということが理解できていないことがほとんどです。言葉にすれば「なんか無理」としか言えばい場合もあります。
そんな状態で理由を聞き出そうとすると、そこまで重要ではない様々な「苦しさ」や「嫌な気持ち」が語られることになります。それが語られることは大事なのですが、それをたとえ改善したとしても、なぜか登校というところに辿りつきません。
むしろ、「原因は取り除いたのになぜ行けないんだ」と状況が混乱することが多いですし、逃げ場がなくなった子どもへの圧力が「これだけ状況を良くしたのになんで学校に行かないんだ」と強まってしまう場合すらあります。
心の問題には、原因–結果モデルがそもそも馴染まない領域があるのです。
解決志向は「何を見る」アプローチなのか
そこで重要になるのが、解決志向(Solution Focused) の視点です。
問題志向が「問題とその原因」を見ようとするのに対して、
解決志向はまったく別のところに焦点を当てます。
解決志向が注目する3つのポイント
解決志向が見ていくのは、
- その人の健康さ(すでにできていること)
- その人が本来なりたい姿・望んでいる生活
- すでに持っているリソース(資源)
といった側面です。
ここで注意したいのは、
「ポジティブに考えればいい」という話ではまったくない
ということです。
本当に苦しい人に、いきなり
「10年後どうなっていたいですか?」
と聞くのは、現実からあまりに離れすぎています。
「今困っているんですけど」と感じても当然です。
「問題志向」で整理してから「解決志向」に開く
実践の場では、この順番が非常に大切になります。
① まずは「問題志向」で丁寧に整理する
- 相談者が「問題だ」と感じていることを、まずはそのまま聞く
- 主訴に含まれている「困りごと」を、ニーズの形に分解していく
問題の輪郭が曖昧なままでは、解決志向に入っていけません。
② そのうえで「解決志向」に開いていく
問題整理をしたあとで、はじめて
「もし今より少し楽になったら、どんな生活をしてみたいですか?」
「その生活を支えるために、今のあなたのまわりにどんな資源がありますか?」
といった問いが機能し始めます。
いきなり「未来の話」や「リソースの話」をしても届きませんが、
問題が整理されていると、少しずつ前を向きやすくなっていくのです。
「問題志向」と「解決志向」の往復が、大きな変化を支える
大事なのは、どちらか一方に寄せることではありません。
- 問題志向で「今」を整理する
- 解決志向で「未来」や「資源」を見出す
- また問題志向に戻って微調整する
こうした 行き来 を繰り返すことが、相談者の抵抗を最小限にしながら変化を支えていきます。
臨床の現場では、この「相談者の抵抗に配慮した自然な面接の構成」が非常に大きな力を持つのです。
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