【古武術と心理臨床】無駄な頑張りをしないことで力を引き出す
リラックスすることについて、武術家の甲野善紀先生が、たくさんの技法を編み出しています。
甲野善紀先生の無駄な頑張りをしない研究
甲野先生は「無駄な努力や頑張りをしないことで、本来の自分の力が出せる」という考えで研究をしているようです。
体の力を出すことを考えると、筋肉を鍛える、体重を増やす、スピードを上げる、というような、足し算、場合によっては掛け算のような発想がほとんどだと思います。
握力✕スピード✕体重=破壊力みたいな。
引き算で力を引き出す発想
甲野先生は、引き算と割り算を使うことで、逆に人間の力を引き出そうとしているんです。
例えば指先の形のコントロールによって、前腕部の力を技と出させなくすることで、体幹の力を効率よく引き出といったように。
いつもの習慣ででしゃばって動いてしまっている部分の動きを消すことで、無駄な力の浪費を減らし、効率よく力を出すアプローチを考えています。
例えば、手のひらを虎の手の形にするだけで、下半身の力が底上げ、階段の上り下りがラクラクになるという「虎拉ぎ(とらひしぎ)」など。
ラグビー元日本代表も。
「虎拉ぎ」とは甲野善紀先生の術のひとつで、手の形をまるで虎の手のようにするもの。手を虎のようにするだけで身体能力が底上げされるのである。詳しくは『術と呼べるほどのものへ』を参照して欲しい。おかげで今日はとても心地のよいランニングでした。終)
— 平尾 剛 / 『脱・筋トレ思考』(ミシマ社)絶賛発売中! (@rao_rug) October 18, 2013
海老蔵さんも。
邪魔している無駄な努力を省く、そして少ない力で大きな効果を出す。
この引き算の発想が心理療法や問題解決に生きることがあります。
役に立っている努力と、役に立っていない努力とを分ける
僕が相談を受ける中で「今やっていることがなんだかうまく行っていない」「努力しているのに思ったような成果が出ない」というような状況のときに。
「変化を求めて、なにか新しいことを始める」のではなく「今すでにやっていることで、効果のあることと効果のないものに分けていく」ということをやります。
「効果のないことを続けているわけがない」と思う方もいるとは思いますが、人は意味がない、効果がないことがわかっていることや、悪影響がすでに起こっていることでも、思い込みや単なる習慣で「なんとなく」続けていってしまっているものです。
例えば、子どもに「家に帰ってきたら宿題をしなさい!」と毎日怒っているのに、いっこうに自分から宿題をするようにならない、なんてことはよくありますよね。
毎日、子どもに「宿題をしなさい!」と怒ることは、親として当然のことかもしれませんが。求める結果が出せていないわけですから「役に立ってない努力」と考えていいわけです。
役に立っている努力と役に立っていない努力を分別し、役に立っていない努力をやめてもらうことだけで、生活や問題の解決に大きな変化が起こることが往々にしてあります。
既に出来ていることをイメージする
以前、静岡の身体研究家の曽根彰さん身体革命のHPに紹介していただき、静岡での甲野先生のセミナーに参加した際、二人組みになって、片方からの手刀の攻撃を、もう片方が撃ち落とすという練習をしました。
普通にやっているとほぼ必ず防御側が成功するのですが、既に出来ていることをイメージして、そこに追いつく、既に出来ている場所に手を戻すように手を動かすと、不思議と防御側の反応が全く間に合わない。
実際に手のスピードが上がったかどうかはわからないのですが、そのイメージ以外は同じ条件でやっているのに結果が変わるということは、イメージが体の使い方に変化を与えたのだろうと。
そしてそれは多分、能動的にあそこに手を持っていこう、と思うと手と体は順々に連動して動くのですが(普通の動き)、それは筋肉の微妙な予備動作や反動を作る動きがどうしても出てしまいうので、無意識にその予備動作を防御側が読み取ってしまうので防御に成功するのではないかと。
逆に、既に出来たイメージに合わせる感じは、その完成図に対して、体の部分部分が、それぞれ別々に加速して、完成形を作るような、そんな感覚がありました。
先に完成形をイメージして、そこに必要な動きを体の部分部分が同時に完成に向けて一斉に動き出す。
これが予備動作がなく、無駄の少なく、更に速さのある動きの理屈ではないかと考えています(今度会ったとき曽根さんに聞いてみよう)。
そして、これは心理療法の解決志向の考え方と同じなんですよね。
「すでに解決した姿」その状態についてイメージし、そこから逆算して、今そこに近づくことに必要なことを一つ一つ、あるときには幾人もの人の協力を合わせて同時に進めていく、そんな共通点を感じました。
リズムと間の違い
西洋音楽はリズムを刻みますが、日本の音楽、芸能や武道は、拍子で動きます。
このリズムと拍子はちょっと意味が違って、リズムはすでにある時間の単位の平等で均一な区切り、絶対軸があるのものですが、拍子というのは、その場の関係性、空気感、感覚の共有といった、相対性、関係性が含まれてのもの何じゃないかと思っていて。
それはやはり、連動的ではなく、分割同時多発的な動きなのではないかと思います。
鷹の爪ならぬ鷹取りの手
前回はリラックスの仕方、呼吸法について取り上げてみました。
甲野先生は、ここでも手の組み方で、恐怖感や緊張を減らすことができるとお話しています。
ここで私の「鷹取の手」本来のやり方を説明すると、親指、人さし指、小指の尖端をつけ、掌の中央にある「鎮心の急所」(鍼灸で労宮と呼ばれるところ)を窪ませるようにし、左右の手をこの形にして、両手の薬指同士をひっかけて互い違いになるように押し付けあう。
— 甲野善紀 (@shouseikan) July 8, 2015
あがり症の人は、横隔膜が上がってしまうために怖くなったり不安になったりしてしまうので、鷹取の手の形で薬指同士を組むことで、横隔膜が上がるのをブロック、つまり条件を一つ外すことで、恐怖や緊張を起きづらくするとのことでした。
ちなみに僕は、買い物袋やカバンを持つときに、無意識に虎拉ぎの手になっています。
お試しあれ。
身体革命の曽根さんとの対談を投げ銭で録画視聴可能です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
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