見立てとは仮説と検証のループである ──臨床心理の基本動作を鍛えるために

臨床心理の実践の中で、「見立ての上手い人」と「見立てが苦手な人」がいるというのは、実感として多くの方がうなずける話ではないでしょうか。
上手い人というのは、そこそこ素早く仮説を立て、それがそれなりに的を射ていて、外さない。その「見立ての力」の差はどこから来るのか。
私はそれが「仮説と検証のループ」の回転速度と回転数の違い、そしてその蓄積量にあるのではないかと考えています。
目次
Toggle■ どんな流派でも、見立ては「仮説」からはじまる
精神分析でも、認知行動療法でも、家族療法でも、見立ては「専門的な視点から、いまここで起きていることを理解する営み」です。そしてその理解に基づいて介入を行う。それがカウンセリングの基本です。
つまり、どの理論に立っていようとも、私たちは「ある仮説」を持ちながら相手の話を聴いているのです。
そして、その仮説が適切かどうかを、相手の反応を通じて検証していく。
この仮説→検証→再構築というループを、どれだけ回せるかが見立ての精度に直結します。
そこにコンセンサスを取る、という意識があるとプロセスが協働的になっていきます。
https://yurayura.org/2025/04/08/4864/
■ 一回の面接の中で、何回ループを回しているか
「3回面接したけど、なんとなくこんな感じかなぁ」で仮説を立てて、それをそのまま使い続けてしまう――こうしたやり方では、見立ての力はなかなか向上しません。
逆に、1回の面接の中で、たとえばアセスメントシートや初回の印象、主訴の話などから何度も仮説を立てては確かめていく――という回転を速くたくさん行っていると、自然と見立ての筋力がついていきます。
この繰り返しの中で、「仮説が外れた」という情報そのものが、また新しい仮説の種になるのです。だから、仮説が違っていても全然OKなんですよ。
見立てを鍛えるには?──答え合わせをする勇気と姿勢
■ 答え合わせは情報の宝庫
「仮説が違っていた」とわかる瞬間。それは相手がイラッとしたり、困惑したり、時にはホッとしたりという反応として現れます。
この反応が、私たちにとって最高の「生きた情報」です。
紙の記録や文字情報よりも、何倍も豊かな含意を持っていると思います。
つまり、違っていたとしても、「違っていた」という情報が手に入ること自体が大きな収穫なんですね。
そこからまた次の仮説を立てて確認する。この流れを何度もぐるぐる回していくうちに、相手の理解がどんどん深まっていく。
■ 知識・理論は必要だが、実践が命
もちろん、見立てには知識や経験が必要です。心理検査や精神病理の基礎知識、発達理論なども役に立ちます。
でも、それらの知識を「目の前の人と一緒に」確認しながら使えているかが重要なんです。
「障害があるから〜すべき」「発達特性があるからこう理解しよう」というのを、自分の中で前提として思考停止してしまうのではなく、それをいったん“仮説”として棚上げしながら、クライエントと一緒に検証していく。
この「自分の仮説を疑うこと」「柔軟であること」がなければ、的外れな支援にもつながってしまいます。
■ 見立ては共同作業
見立てとは、決して「専門家が一方的に下す判断」ではありません。
むしろ、目の前のクライエントと一緒に、「この理解で合ってますかね?」「違いますか?」とやりとりしながら確認していく共同作業なのです。
だから、見立てが上手くなる人は、専門知識がある人というより、「仮説を柔らかく扱える人」「相手と一緒に歩める人」なんですね。
そして、地味でもその仮説検証を繰り返し、少しずつ正確な理解に近づいていける人が、結局は一番信頼され、臨床もうまくなる。
見立てについてもっと深めたい方へ
今回の「臨床心理学超基礎講座」第3回では、この「見立ての力」をテーマに、実際の面接やカンファレンスの中でどんな工夫ができるのか、どんな知識と姿勢が求められるのかをじっくりお話しする予定です。
カウンセリング初心者の方、学生さん、現場でモヤモヤしている支援者の方も、ぜひご参加ください。
◆ 研修のご案内
治療構造についてさらに深く学びたい方は、以下の研修にご参加ください。
臨床心理学超基礎講座#1:「傾聴からはじめよう」
臨床心理学超基礎講座#2:「治療構造と転移」
(いずれもアーカイブ視聴が可能です)
次回#3「見立て」2025年6月20日21:00~23:00(その後に自由参加のアフターミーティングあり)に行われます。
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