【臨床心理学超基礎講座 #4】共感と理解 ― 「共感の解像度を上げる」とは?

共感と理解 ― 「共感の解像度を上げる」とは?
今回の講座のサブタイトルが、ようやく決まりました。
それは――「共感の解像度を上げる」です。
「共感」といえばロジャース、そして「共感的理解」という言葉が真っ先に浮かぶ方も多いでしょう。けれど、今回の講座で扱いたいのは、それよりももう一歩手前。学校や他の研修でもあまり触れられてこなかった、「行間」のような領域です。
臨床現場で本当に求められるのは、教科書的な共感ではなく、目の前の人に実際にフィットするやりとりです。そしてそれを可能にするには、「共感」の“解像度”を上げていく必要があります。
目次
Toggle「なんとなく聞けている」を越えて
第1回の傾聴の講座でも触れたとおり、ただ「聞く」だけでは不十分です。
「どう聞くか」「何を仮説とするか」「どう検証するか」といったプロセスを意識することで、聞き方そのものが大きく変わっていきます。
そしてこれは、見立てにおいても同じ。
実はこの「共感の解像度」という観点は、第1回の傾聴、第2回の治療構造、第3回の見立てともすべてつながっているのです。
共感が高精度になると何が変わる?
「共感の解像度」が高くなると、クライエントの側ではどう感じられるのか?
それは、「この人、ちゃんとわかってくれてる気がする」「この人、外さないな」といった安心感として現れてきます。
「感動しました!」というような派手な反応ではなくても、地に足のついた信頼感がじわじわと育っていくのです。
逆に解像度が低いままだと、「わかってるつもり」になったままズレたやりとりを繰り返してしまいます。
その背景には、自分の価値観や先入観が無意識に入り込んでしまっていることも多いのです。
「感じる」と「理解する」の2本柱
共感には、「感じること」と「理解すること」の両方が必要です。
-
感じる:相手の感情や空気を直感的にキャッチする力
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理解する:語られた言葉や状況を文脈の中で整理する力
このうち「感じる」力は、もともとの発達的特性や生活経験に影響される面も大きく、伸ばすのが難しい場合もあります。
でもだからこそ、「理解する」力を丁寧に磨いていくことが大切です。
感情の流れ、言葉のニュアンス、背後の構造に目を向けながら、相手の語りの文脈を精密に読み解いていく技術。それが、専門職にとって必要な“テクニカルな共感”です。
「この人、わかってくれるかも」の積み重ね
僕が大事にしたいのは、小さな「なるほど」を積み重ねていくことです。
「あ、それ聞こうかな」
「そうでしたか」
「ってことは、こういうこともありますか?」
このような小さな順接、小さなコンセンサスのやりとりが何十回と重なることで、「この人、ちゃんとわかってくれてる」と感じられるようになります。
そして、その積み重ねの先に「実は……」という大事な語りが生まれてくる。
これはまるで、合気道における「崩し」と同じです。相手の動きを見極め、小さな当てや誘導を繰り返すことで、ようやく技が決まる。その構造にとても似ています。
奇跡のような共感ではなく、技術としての共感へ
今回の講座では、「奇跡のような共感」や「一発で感動させる共感」ではなく、
日常的で、繰り返し使える実践的な共感の技術に注目します。
「この人、外さないな」と思われる精度。
小さな「わかってくれるかも」の積み重ね。
そのために、僕たちはどんな視点を持ち、どんなやりとりを心がければよいのか。
一緒に、じっくり解像度を上げていきましょう。
📢 講座のご案内
臨床心理学超基礎講座・シリーズ第4回は
「共感の解像度を上げる」をテーマに開催します。
- 日時:2025年7月18日(金)21:00〜23:00
- 形式:オンライン開催(Zoom)
- 終了後には自由参加のアフターミーティングあり
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