理解を伝えることと助言の違い 〜臨床心理学超基礎講座#5より

はじめに
カウンセリングの現場では、相手を理解するだけでなく、その理解をどう伝えるかが大切になります。ところが「理解を伝える」と「助言をする」は似ているようで大きく異なります。この記事では、臨床心理学超基礎講座#5「理解を伝える・コンサルテーション」で扱った内容から、理解を伝えることの意味と助言の落とし穴についてまとめます。
目次
Toggle助言の落とし穴
助言は一見役立つように見えて、実際には上から目線になりやすく、相手の主体性を奪ってしまうリスクがあります。特に思春期以降は、指示されること自体を嫌がる人も多く、「こうしたらいい」と言っても受け取られず、むしろ反発を招くこともあります。
理解を伝える姿勢
理解を伝えるとは、助言に先立つプロセスです。大切なのは「無知の姿勢」を持ち続けること。「あなた自身があなたの専門家です。私は知らないので教えてください」と伝えることが、信頼関係の出発点になります。
理解を確認し合うプロセスは、傾聴で積み重ねてきたコンセンサス形成と同じです。小さな「はい、そうです」というやり取りが繰り返されることで、二人の間に共通理解が広がっていきます。この積み重ねが、介入を支える大切な基盤になります。
助言が失敗する理由
助言がうまくいかないのには理由があります。
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クライエントの生活や葛藤を十分に理解しないまま助言すると的外れになる
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「正したい反射」によって相手を訂正したくなり、結果として関係がこじれる
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自分の価値観と合わない発言に出会うと、セラピストが力んでしまい、浅い介入で終わってしまう
こうした場面でこそ、「分からないので教えてください」と踏みとどまる姿勢が問われます。
コンサルテーションと協働のあり方
問題を小さく分ける
コンサルテーションでも、問題を「小さな課題」に分けることが大切です。
例えば不登校のケースでは、「学校に行かせる」という大きなゴールではなく、親子関係のぎこちなさや勉強への抵抗感など具体的に切り分け、それぞれに合った支援を考えていきます。
コンサルテーションは相互作用
コンサルテーションは「専門家同士が助言を交換すること」です。心理の専門家である私が先生や保護者に助言をする一方で、先生は教育の専門家、保護者は子育ての専門家です。それぞれの知見を持ち寄るとき、そこに協働(コラボレーション)が生まれます。
クライエント本人もまた、自分の人生における専門家です。「教えてください」という姿勢を保つことで、本当の意味での協働が可能になります。
解決志向の5段階
解決志向アプローチを取り入れると、コンサルテーションの流れは明確になります。
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相談者を労いエンパワーメントする
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望む未来像を尋ねる
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例外や資源を観察する課題を出す
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観察をもとに小さな介入案を考える
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実行して振り返り、調整する
「裏口で戦う」視点
目の前の問題を正面から押さえ込むのではなく、日常に小さな工夫を積み重ねて内側から変化を育てること。これは合気道の「相手の力を利用する」感覚にも通じます。無理をせず、相手の流れを活かす。これが臨床での大切なポイントです。
まとめとご案内
理解を伝えることも、コンサルテーションも、どちらも「相手の専門性を尊重し、協働する」という姿勢から始まります。助言に急ぐのではなく、共通理解を丁寧に積み重ね、小さな課題に分けて一緒に歩んでいくこと。これが臨床における確かな支援の基盤になります。
この記事は、臨床心理学超基礎講座 第5回「理解を伝える・コンサルテーション」 のまとめです。記事に書ききれなかった具体的な事例や、対話のリアルなニュアンスについては、録画視聴でご覧いただけます。
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