【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章1-5 現在及び未来志向
エリクソン臨床の特徴:基本原理その5 現在及び未来志向
WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)ではエリクソンのアプローチの基本原理として次の5つが挙げられています。
自然的、間接的及び指示的、反応性、ユーティライゼーション(利用)、現在及び未来志向
今回はこのうちの現在及び未来志向(Present and Future Orientation)について解説いたします。
前回の内容は以下のページで。
目次
Toggle現在及び未来志向(Present and Future Orientation)
精神分析あるいは精神力動的な発想の歴史的な流れに逆らい、心理療法に”今、ここで”という現在志向を持ち込んだという意味では、エリクソンはその最初の人物というわけではないであろう。しかし、心理療法に未来志向を持ち込んだのは、ほぼ間違いなく彼が最初であったであろう。
出典:ミルトン・エリクソン入門 第一章 P22
多くの心理療法が、過去の体験とその人の症状とのリンクをはろうとするのに対して、エリクソンは未来と現在のその人の生活をつなげようとしていたのではないでしょうか。
過去は書き換えることは出来ませんが、過去の体験の意味や捉え方を変えることは出来ます。
ただ、多くの人にとっては、今日から続く未来をどう良くしていくか、ということの方が大事なのかもしれません。
過去に焦点化することで、より今と過去がつながっていってしまうことがあります。
どうせなら、その人が価値あると考える未来について考えたり、話し合うこと、未来のあり方から逆算して、今何をすべきか考えることのほうが、より実際的であるかもしれません。
こういう考え方をバックキャスティングといいます。
バックキャスティング
環境問題の分野ではだいぶ昔から使われてきた手法ですが、現在ではビジネスの分野でも多く使われています。
例えば下記のページでの例では2030年の海洋プラスチックゴミをゼロにする、という未来のビジョンをまず作り上げ、そこにたどり着くための具体的な方策として次の2点を挙げています。
・全てのプラスチック製品の製造をやめ、持続可能な素材に変える
・海のプラスチックゴミを素早く取集し、安全な方法で処分する
このように具体的な方策を作り上げていくときにバックキャスティングという考え方は、とても有用かと思われます。
解決志向ブリーフセラピーでも同じように、未来の視点に立つための技法(タイムマシンクエスヨンなど)が存在しています。
解決志向
ある意味で、エリクソンは問題志向というよりも解決志向であったと言えよう。彼は、過去を振り返り、その人の問題の起源とか学習された制限を見つめることを好まなかった。その人の中に今あるもの、もしかすると将来的に伸びてきて使えるもの、そうした解決法や力に、彼の目は向けられていたのである。
多くの心理療法は問題の原因を探すことで、その原因にアプローチをするという方法をとりがちです。
問題や問題の周辺の困った事象について多くを語るうちに、その人の語りは問題まみれのものになってしまう、聞いていてなんだかカウンセラーもぐったりしてしまうなんてこともありますよね。
問題を扱うよりも、解決や、今すでにある(まだ見えていないだけの)解決の兆しを扱うことの方が、相談者をエンパワメントできる場合があります。
まとめ
エリクソンの未来志向のアプローチは現在はSFA(Solution Focused Approach)解決志向アプローチとして今なお発展を続けています。
問題が「扱えない」のでは困りますが、相談に来た方が問題を語っているのに共感しつつも、どこかに解決の糸口や例外を探すのがクライエントの利益にかなう実際的な方法でなはいのかな、と僕個人としては思っています。
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