【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章2-2 治療者の姿勢:観察
ミルトン・エリクソン入門を読む
WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)という本があります。
この本は、ブリーフセラピーの源流になったと言われる天才的な精神科医ミルトン・H・エリクソンのアプローチについて、著者の目線からまとめられており、僕自身の臨床の中で一番大きな影響を受けている本の一つです。
自分の臨床を見直すという意味でも、ミルトン・エリクソンについて多くの方に知っていただくという意味でも、この本に書かれていることを紹介しつつ、自分なりにコメントを書いて行こうかと思います。
関心の在る方はお付き合いください。
前回はこちら。
エリクソン臨床の特徴:治療者の姿勢その3 観察
WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)ではエリクソンの強調する治療者としての姿勢として、柔軟性、従来の考え方への挑戦、治療の結果に対して責任を負うこと、を挙げています。
今回はこのうちの観察(Observation)について解説いたします。
観察(Observation)
エリクソンは学生に、観察の重要性をよく強調した。同時に、仮説設定の際に柔軟であることを強調したのと同じく、観察したものが何を意味しているのかについては、治療者にははっきりとわからない、ということも強調した。効果的な治療をするために、あるいは治療の進み具合を測るための手がかりを得るために、治療者は全感覚を、とりわけ視覚と聴覚を利用しなければならない。患者の言葉、声の調子の変化、筋緊張や姿勢の変容は、エリクソンが観察の上で重要としたものの一部である。
(中略)
観察せよ!それはメッセージであったーそして事実を越えてはいけない。
出典:ミルトン・エリクソン入門 第一章P25
エリクソンは高校卒業後にポリオにかかっており、眼球以外はほとんど動かせない状況でロッキングチェアに座っていた時があったようです。その時の彼の暇つぶしは、家族や家に来た人の言語や非言語的コミュニケーションを観察することで、足音を聞けばその人がどんな気持ちでいるのかをわかるようになったという話も残っています。
エリクソンの事例を読んでいると、いつその介入をするのを決めたのか、何のきっかけで介入のプランを決めたのか、と不思議に思うことがよくあります。
エリクソンの一見荒唐無稽にも見える臨床は、やはり微細な観察の積み重ねに支えられているのでしょう。
まとめ
何を観察するのか、というのも大切な問題かもしれません。
エリクソンはただ単に視覚情報や聴覚情報だけでなく、体の中に生じた些細な違和感や筋緊張にも敏感だったのではないでしょうか。
相手の体の中に生じた些細な違和感や緊張を、自分の体に映して感じ取っていたのではないかなあ、というイメージが湧いてきます。
それは日本古来の芸能や武術で観の目と呼ばれる、状態に近いのではないのかなと思います。
エリクソンと同等な観察力を身につけるのは、到底不可能なことだなと、事例やエリクソンに関する書籍を読むたびに思うのですが、ひょっとしたら観察力を磨いていくことは僕らにも出来るのかもしれません。
絵画、デッサンの修業では、書いている時間よりも見ている時間のほうが長いという話を聞いたことがあります。
主観にとらわれずに、そのものの形を捉えるためには、長い時間の観察の積み上げが必要とのことでした。
そして観察力自体が上がってくると、そのものの形を捉える力が上がってくるので観察の時間も短くなってくるということです。
ミルトン・エリクソンのようには行かないけど、意識して観察を繰り返すことで、主観にとらわれずにそのものの姿を正確に捉える、という意味での観察上手にはなれるかもしれません。
そういった技術は無意識下に置かれるので、いつのまにか臨床に取り込まれているもののではないかなと思います。
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