【臨床心理学超基礎講座】なぜ「構造」の違いを知る必要があるのか?その2:料金、内的外的構造

治療構造の深層:料金、内的・外的構造、そして支援のマネジメント
前回は、相談の現場における「治療構造」の違いについて、代表的な場面を比較しながらお話ししました。今回はその続きとして、治療構造の核心とも言える「料金の意味」や「内的・外的構造」の概念、そして支援のマネジメントについて掘り下げていきたいと思います。
目次
Toggle◆ 治療構造における「料金」の意味
カウンセリングにおける料金設定は、単なる経済的な取引以上の意味を持ちます。料金は、治療構造の一部として、クライエントとセラピストの間に明確な枠組みを提供します。
料金が設定されていることで、クライエントはその時間と空間に対して責任を持ち、真剣に取り組む姿勢が促されます。一方、セラピストにとっても、適切な料金設定は自身の専門性や労力に対する正当な評価となり、持続可能な支援を提供する基盤となります。
無料や低料金のカウンセリングでは、クライエントが遠慮して本音を話しづらくなったり、セラピストが過度な負担を感じることがあります。適切な料金設定は、双方にとって健全な治療関係を築くために不可欠です。
◆ 内的構造と外的構造の違いと相互作用
治療構造は、大きく「内的構造」と「外的構造」に分けられます。
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外的構造:面接の時間、場所、頻度、料金、座る位置など、物理的・制度的な枠組み。(株)心理オフィスK
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内的構造:セラピストとクライエントの間で共有される、治療の目的、目標、進め方に関する合意や理解。
外的構造は、治療の安定性と予測可能性を提供し、クライエントが安心して自己探索に集中できる環境を整えます。一方、内的構造は、治療の方向性や深さを決定づけ、クライエントの変化や成長を支える内面的な枠組みとなります。
この二つの構造は相互に影響し合い、外的構造の安定性が内的構造の形成を促進し、内的構造の明確化が外的構造の柔軟な運用を可能にします。例えば、面接の時間や場所が一定であることで、クライエントは安心して深い話をすることができ、治療の目的や目標についての合意があることで、セラピストは柔軟に面接の進め方を調整できます。
◆ 構造の柔軟性とマネジメント
現代のカウンセリング現場では、クライエントの多様なニーズや状況に対応するため、治療構造の柔軟性が求められます。しかし、柔軟性を持たせることと、治療構造の安定性を保つことは、時に相反する課題となります。
例えば、スクールカウンセラーは、学校という組織の中で、限られた時間と空間の中で支援を行う必要があります。このような状況では、外的構造の制約が大きく、内的構造の明確化や、柔軟な対応が求められます。
また、電話やSNSを通じた相談では、匿名性や即時性が高く、外的構造が不安定になりがちです。このような場合でも、セラピストは内的構造を意識し、短時間で信頼関係を築き、効果的な支援を提供する必要があります。
このように、治療構造の柔軟性と安定性のバランスを取るためには、セラピスト自身のマネジメント能力が重要となります。セラピストは、自身の専門性や限界を理解し、クライエントとの関係性や治療の目的に応じて、適切な構造を設計・運用することが求められます。
◆ おわりに
治療構造は、カウンセリングの効果を左右する重要な要素です。料金設定や内的・外的構造の設計、柔軟なマネジメントなど、セラピストは多くの要素を考慮しながら、クライエントにとって最適な支援を提供する必要があります。
今回の内容が、皆さんのカウンセリング実践における治療構造の理解と運用に役立てば幸いです。
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