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【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章1-2 間接的及び指示的志向

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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ミルトン・エリクソン入門を読む

WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)という本があります。

この本は、ブリーフセラピーの源流になったと言われる天才的な精神科医ミルトン・H・エリクソンのアプローチについて、著者の目線からまとめられており、僕自身の臨床の中で一番大きな影響を受けている本の一つです。

自分の臨床を見直すという意味でも、ミルトン・エリクソンについて多くの方に知っていただくという意味でも、この本に書かれていることを紹介しつつ、自分なりにコメントを書いて行こうかと思います。

前回はこちら。

【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章1-1 自然的志向

関心の在る方はお付き合いください。

エリクソン臨床の特徴:基本原理その2 間接的及び指示的志向

WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)ではエリクソンのアプローチの基本原理として次の5つが挙げられています。

自然的、間接的及び指示的、反応性、ユーティライゼーション(利用)、現在及び未来志向

今回はこのうちの(間接的及び指示的志向)について解説いたします。

間接的及び指示的志向(Indirect and Directive  Orientations)

カウンセリングのトレーニングを受けた方は、指示より支持!相談に来た方に指示や助言なんてもってのほか!と思っている方も沢山いらっしゃると思います。

長らくロジャーズの非指示的、という言葉が(ひょっとしたら非指示という言葉の含む意味が吟味されないまま)信奉されてきましたし、僕自身も基本的には傾聴をベースにできるだけ指示や助言は行わないというカウンセリング的な方法をとっています。

エリクソンはといいますと、これは指示的であったとも言われますし、間接的な指示を行ったり、暗示を用いたとも言われています。

この本では以下のような逸話が紹介されていますので要約して記載したいと思います。

エリクソンが高校生の時、帰宅中に一頭の馬が手綱をつけたままで逃げ出してきたのに出くわしました。エリクソンはその馬に乗って、どうどうと手綱を握るわけですか、どちらに行けばいいのかエリクソンにはわかりません。彼は「どちらに向かえばいいかは馬が知っているだろう」と思い馬の思うままに道を走らせましたが、時々馬は道を走っているのを忘れて畑に入ってしまいそうになるので、そんな時は手綱を引っ張って馬を道に戻してあげる。そんなことを4マイル(6.5km)ほど繰り返している間に馬はある農家に入っていきました。

「なぜここがわかったんだい?」と訪ねた農夫に対して「僕は知りませんでした。馬が知っていたんです。僕は道の上を走らせていただけです」とエリクソンは答えました。

エリクソンはあるセミナーでこの逸話を紹介し、これが心理療法のやり方であると話したそうです。

相談に来た方を馬に例えるなんて失礼だ!なんて怒る人もいるかも知れませんね。

ここで言っているのは、その人がどうしたいか、どうなりたいか、どう生きたいかなんてのは心理療法家にはわかるはずもないし、それはその人自身しか(あるいはその人自身も)知らないわけで、心理療法でやるのは、その人の行きたい方向からずれたときにちょこっとだけ指示をするだけ、ということかと思います。

DirectiveとNon-Direct

 

人に何かをさせたり、症状を維持している古いパターンを壊すという意味では、たしかにエリクソンは非常に指示的であった。しかし、一般的に人がどう生きるべきか、人生をどう処理すべきか、という話をしたがるなどということはけしてなかった。

(中略)

エリクソンは症状を扱う際には非常に指示的であり、症状が取れたあとの生活の仕方について、あるいはとりわけ、症状を取る方法に関してさえも、非常に間接的であった。

出典:ミルトン・エリクソン入門 第一章 P19

 

つまり、エリクソンは指示的に行うところと、そうでないところを明確に分けているということですよね。

人は本来はその人が行きたい方向に生きたいように生きているのですが、同時に人は、その人が悪いわけではなくても、なんらかのやんごとなき理由で、思った方向に進めなくなってしまったり、どこに向かえばいいのかわからなくなってしまったり、生き方の袋小路にはまってしまうこともあるわけです。

それが症状であったり、なんらかの古い(アップデートしなければ現状に合わない、例えば子供の頃の信条で「決して嘘をついてはいけない!」というのを大人なっても貫いているみたいな)その人の行動パターンであれば、そこに向かう道筋を変えるために指示的にある必要はありますよね。

(その指示がその人に入るか入らないかは置いといて)

でもその人の生きざまについては、その人そのものを尊重する姿勢は絶対に崩さないのがエリクソンなのではないかと思います。

まとめ

さて、この話を現代の臨床に活かすにはどんなことを考えたら良いでしょうか。

ややこしく思う方もいらっしゃると思いますが、これはDirectiveとNon-Directiveの話でもあるし、DirectiveとIndirectの話でもあるということです。

「指示的」という言葉が強いので、誤解をされる方がいらっしゃるかと思いますが、これは「あーしろこーしろ」と命令するということではなく、「直接的に示す」ということでいいかと思います。

公認心理師の業務として要心理援助者やその関係者に対して、助言や指導を行うことと明確に記載がされています。

「保健医療,福祉,教育その他の分野において,専門的知識及び技術をもって,

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析すること。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し,その心理に関する相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うこと。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し,その相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。」

出典:一般社団法人日本心理研修センター

この本で言う「指示」というのは、この助言や指導という意味でのDirectveということで良いのではないかなと思います。

Non-Directiveで傾聴をするのと合わせて、必要に応じてDirective、もしくはIndirectな助言指導を行うというイメージでしょうか。

スターティングクエスチョンは間接的なインフォームドコンセント?

心理療法を開始するとき、または各回のはじめに「この時間をどんなふうに役立てたいですか?」「この時間を使って何が出来たらいいですか?」「カウンセリングにどんな期待を持っていますか」というようなスターティングクエスチョンを行うようにしています。

ここにはいろいろな意味合いが込められていて、例えば「あなた自身が目標に向かうのをあくまでカウンセラーがお手伝いする場であること」と間接的に示していたり「主体性を発揮していい場」であることを伝えていたり、まさにIndirectな意味合いを含めた問いであるわけです。

問いと同時に、枠組みを間接的に提示しているということです。

なぜ間接的に提示するかといえばなんですが、例えば「ここはあなたが主体性を発揮して考える場なので、あなたが考えることを実現するお手伝いをしますよ」とまで言ってしまえば、ちょっと暑苦しくて押し付けがましいような気がしませんかね。

つまり「あなたが主体性を発揮しなければなりません」というDirectな伝え方は、「主体性を発揮しろ」という指示なので言っていることがあべこべになってしまうということです。

ややこしいですね。

このややこしさが間接的、Indirectな介入について考える面白さ、なんであんな介入がうまくいくの??というエリクソン臨床の秘密について考える一番の秘密につながっていきます。

続きはこちら。

【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章1-3 反応性

 

 

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