共感が失敗するとき その1 わかったつもり

カウンセリングの現場でも、日常の会話でも、「共感」って実はなかなか難しいものです。
とくに初心者の方や支援に関心をもって学び始めた方にとって、「共感」はとても大切にされるスキル。でも、その「共感」が、時に相手を遠ざけてしまうこともあるのです。
今回から数回にわたって、そんな「共感の失敗」について書いてみようと思います。
目次
Toggle「わかったつもり」で共感がずれる
こんなやりとり、聞いたことありませんか?
「……ほんとに職場の人間関係がしんどくて、もう限界なんです」
「あー、そういうことありますよね。私もわかります! 昔、似たような状況があって……」
この返し、日常会話としては問題ないかもしれません。
でも、もしこれが相談の場だったら、あるいは支援的な関係性の中だったら…… 相手は心の中で、こんなふうに思うかもしれません。
「……なんかちょっと違うんだよな」
「いや、そういう話じゃないんだけどな……」
似てるけど、同じじゃない
共感がずれるとき、多くは「自分の経験に引き寄せすぎてしまう」ことで起こります。
「わかります!」という気持ちは嘘ではない。 でも、その「わかる」は、自分の過去の経験であって、目の前の人が今感じている「わかってほしいこと」とは、ちょっと違っていたりする。
つまり、似ているようで違う話にすり替わってしまっているわけです。
このすり替えが起こると、相手の「話したい気持ち」はスッと引いていってしまいます。 「せっかく話し始めたのに、もうちょっと聞いてほしかったのに」という思いが、見えないところで萎んでいってしまうのです。
簡単に「わかってもらいたくない」気持ちもある
支援の現場では、ときにこんな複雑な気持ちに出会います。
- 「わかってほしい」
- 「でも、そんな簡単にわからないでほしい」
この矛盾したような願いのあいだを、私たちはていねいに歩く必要があります。 だからこそ、共感とは「相手の世界にとどまること」なんだと思うのです。
確認しながら、探索しながら共感する
「わかったつもり」の共感を避けるために、ひとつのコツがあります。
「似ているように思えたけど、○○さんにとってはどうですか?」
「ここまではこう理解できたのですが、この先は……?」
こんなふうに、自分の理解を“確認しながら”“探索しながら”言葉にすることです。
共感とは、相手の話の中に「こういう気持ちでしょう?」と勝手に踏み込むことではなく、 「こう受け取りましたが、違っていたら教えてください」と、扉の前でノックをするようなこと。
少しずつ、ていねいに、相手の語りのリズムに合わせながら言葉を重ねていく。 それが、伝わる共感につながっていくのだと思います。
次回は、「感情の反映がうまくいかないとき」について書いてみようと思います。
🔸 #4 共感と理解(講座のご案内)
臨床心理学超基礎講座・シリーズ第4回は
「共感と理解」をテーマに開催します。
- 日時:2025年7月18日(金)21:00〜23:00
- 形式:オンライン開催(Zoom)
- 終了後には自由参加のアフターミーティングあり
オンラインスーパービジョン無料体験
カウンセリングが上手くなりたい!
ケースの見通しをちゃんと立てたい!
手詰まりを感じている!
まだまだ上達していきたいカウンセラーの皆さんに、オンラインスーパービジョン無料体験のお知らせです。
毎月3名限定でオンラインスーパービジョンの無料体験をZoomにて行っております。
気になる方は下記のスイッチをクリック!