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【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章2-3 治療者の姿勢:従来の考え方への挑戦

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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エリクソン臨床の特徴:治療者の姿勢その3 従来の考え方への挑戦

WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)ではエリクソンの強調する治療者としての姿勢として、柔軟性、従来の考え方への挑戦、治療の結果に対して責任を負うこと、を挙げています。

今回はこのうちの従来の考え方への挑戦(Assumptions to beAvoided)について解説いたします。

従来の考え方への挑戦(Assumptions to beAvoided)

 

エリクソンは、症状や問題を解決するためには、治療者にしろクライアントにしろ、その原因を知る必要があるとは信じていなかった。

(中略)

エリクソンは変化を促進する上で、洞察や気づきを重視せず、あるいはそれを排除することすらあった。この点が、彼のアプローチの中で最も急進的な部分であろう。

出典:ミルトン・エリクソン入門 第一章P27

 

当時の心理療法の中で、当たり前のように言われていたことについて、エリクソンはいくつか意義を申し立てています。

そのことについて紹介してみたいと思います。

問題を解決するために、その原因を知る必要性について

エリクソンは、病因は多様なものなので、必ずしも問題の解決に必要とは限らない、として、問題の原因を探さずにケースを解決していくということをやっていました。

解決志向という考え方につながっていくことですし、今でこそ原因結果論で心の問題を論じるのはナンセンスという考えが広がってきていますが、20世紀の半ばにすでにこの発想と実践があったというのは、本当にすごいことだと思います。

 

変化のための洞察/気づきの必要性について

洞察や気づきは心理療法の中核のような印象があるが、洞察や気づきがなくても心理療法が成立することを証明したのはエリクソンでした。

洞察や気づきが必須であるという発想は、実は心理療法の適用の範囲を狭めていたのではないかと思います。

 

統一理論や一般仮説を持つ必要性について

エリクソンは、問題に対しての一般仮説を持つことは、治療の妨げになるように感じていたようです。これはエリクソンの観察あっての臨床の姿かもしれませんが、その人のためにしつらえられた仮説から、介入を常に創造していたのではないでしょうか。

 

性格/人格の不変性について

エリクソンは人格や性格というのは時間の流れの中で絶えず変化していると想定していたようです。ただ、その常に変化する人格のある側面には、常に変化に役立つ何かが在るという確信を持っていたのかもしれません。

 

症状の機能と起源について

エリクソンは症状について、特別な意味を持たせずに、あくまでその人の持つあるパターンとして対処していました。

何か症状に起源があるわけではなく、行動が維持されることで単なるパターンになってしまっていることもあるだろうということでしょう。症状の機能と起源を探ることと解決は別である、という考え方は、この当時はことさら特別なことだったでしょう。

 

まとめ

人は常に変化しているものである、という前提は、エリクソンの考え方の中心にあるのではないかと思います。

心理療法の新しい当たり前が現れるたびに、それに対してうのみにするのではなく、常に疑いと精査の眼差しを持つことを臨床家は求められているような気がします。

 

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