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「わかるよ」って言っていいんでしょうか?──傾聴や共感の入り口でつまずかないために

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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「わかるよ」って言っていいんでしょうか?──傾聴や共感の入り口でつまずかないために

4月18日(金)の夜、「臨床心理学超基礎講座 傾聴からはじめよう」という講座を予定しています。これは、ふだんの「傾聴しているつもり」と、臨床現場でほんとうに起きていることのあいだにある、ちょっとしたズレに目を向けてみようという試みです。
ちょっと普通に使う「傾聴」という言葉からはみ出がちな話です。
これは想定上のケースについての質問ですが、現場でよくある迷いをよく表していると思うので、ご紹介します。

30代の女性クライアントが、「職場で孤立していて、上司にも同僚にも何を言っても届かない気がする」とぽつりと語ってくれました。

私は思わず、「それ、わかります。つらいですよね」と返してしまったのですが、クライアントの表情がどこか曇ったように感じました。

「わかるよ」と言うのは、共感としてはずれているんでしょうか? どうしたらうまく伝わるのでしょうか?

…この「それ、わかります問題」、じつは多くの人がつまずくところなんです。

日常会話では「わかるよ」は便利な潤滑油だけど

私たちはふだん、「わかる、わかる〜」「それ、あるある!」といった形で、軽やかに共感を示しながら会話をしています。

こういう時は、本当にわかってほしいわけではなく、「だいたい同意」のサインとしての「わかる」でしかないのです。

話の腰を折らないための相槌や、共通感覚の表明としては「わかるよ」はとても便利な言葉です。

けれど、これが臨床の現場になると、事情はちょっと変わってきます。

カウンセリングの場では、相手が語ることの多くは、その人のプライベートで大切な部分や、日常では簡単には語れない重たい話です。

そういうときに「それ、わかります」と返してしまうと──

「本当に、あなたにわかるの?」

多くの場合、話し手はそう感じるのではないでしょうか?

「わかってほしい」けれど「簡単にはわかってほしくない」

これは私自身の感覚でもあるのですが──人って、「わかってほしい」と思ってはいるのだけれど、「簡単にはわかってほしくない」んですよね。

自分が悩んで、苦しんで、ようやく言葉にしたことを、誰かに「わかるわかる」なんて軽く返されたら──それがたとえ悪気がなくても、「これって、そんな簡単な話だったのかな…?」と感じてしまう。

そして「なんだか分からないけど、こんなふうに簡単に「分かる!」って言っている時点で、この人は絶対わかっとらんし、今後もわからんよね」という気持ちがあるんだと思うのです。

深さの違いを前提にする

私はよく「井戸を掘る」というたとえを使うのですが──人は自分の悩みに向き合うほど、自分の内面に深い井戸を掘っていくようなものだと思っています。

そして、悩みの深い人の話というのは、聞き手の井戸がまだ浅いうちは、簡単には届かない。深いところの話が始まった瞬間、聞き手の理解は「カーン」と底にぶつかってしまう。すると、無意識に話を変えてしまったり、「こうしたらどうですか?」と助言をしたり、非常に浅いところからの反応をしてしまうのです。語り手が本当に語りたいことまで辿り着けないんです。

そして語り手は内心でこう思うかもしれません。

「ああ、この人には話しても無駄かもしれない」

「ああ、また的外れなことを言われた…もうやめておこう」

そうなると相談は上っ面で進んでいくことになりますし、基本的には中断に向かっていくことになるでしょう。

 

「わかる」の代わりに、どんな言葉をかけたらいいのか

では、「わかります」を避けるとして、じゃあ何と言えばいいのか。共感を示すにはどうしたらいいのか。

ひとつの手がかりになるのは、「理解の精度を上げる」ための問いかけです。

たとえば先ほどの架空事例の「職場で孤立していて、上司にも同僚にも何を言っても届かない気がする」という言葉に対して──

「職場で孤立するのはかなりしんどいですよね」

と気持ちを想像しつつ、この話は大事そうに思えるけど、重要なところを掴めていないな、と感じている場合は

「今の話、とても大事な話をされたと思うんですが、もう少し詳しく教えていてただいてもいいですか?」

と、その話の続きや周辺状況や、感じたことを少し詳しく教えてもらえるよう、恐る恐るでもいいからお願いしてみるのがいいと思います。分からないなりに、なんとか理解しようという姿勢が、その後の関係にも影響を及ぼします。

もちろん、少し主観から離れた状況や例外を把握するために

「この人だけはなんか届くなー」って同僚や、「今日はなんか大丈夫、届いてる感じがする」なんてタイミングなんかもあったりします?

というのも全然悪くないし、むしろ「それ」が話せる状況や関係ならこう聞くことが多いくらいですが、あくまで基礎の話でしたのでお気になさらず。

もし関係が十分にできていて、一緒に探索していく、という協働関係ができているならば

「何を言っても届かない感じって、伝わらないんじゃなくって届かないってことなんですかね??」

「今の僕の理解で言うと、情報としては伝わっているのに、自分の気持ちやこの居場所の無さみたいな感じが、なんか理解されていない、なかったようにされている、自分なんかいてもいなくても同じなんじゃないか、というようなことかなと思ったんですが…どうでしょう?」

と理解を伝えつつ、その答えを相手がどのように感じたか、受け止めたかをまたクライエントにお聞きする、小さくコンセンサスを取りながら、進めていく、というところまで行けたら一番良いかと思います。(もちろんそれは相手が「違う」と言える関係になることと、そう言われた時に「もう少しその辺教えていただいてもいいですか?」と、一つ戻ってまた一緒に考えていく姿勢が必須と思います。)

 

こんなふうに、相手の話の輪郭を、そっとなぞってみるような問いを返してみるんです。相手の語ったことの“周辺”や少しだけ手前や先に光をあてるような言葉を置いてみる。すると、相手も「もうちょっと話してみようかな」と思えるかもしれないですよね。

あるいは、「それって行くの嫌になっちゃいませんか?」というふうに、状況に即して具体的に寄り添う表現ももちろんあります。

重要なのは、「わかる」と言うことよりも、こちらの「わかっていない」という前提が伝わること。そのほうが、語り手はずっと話しやすくなると思います。

井戸の深いところから出てくる言葉について、その出所は自分の位置からは底が見えない、つまりどのくらい理解が足りていないかもわからないものです。
「まだ自分の理解は足りていないかもしれない」という前提でいなければならない。

カウンセラーに必要な「謙虚さ」というのは、そういうことだと思うのです。

井戸を一緒に掘るように

日々相談を聞いているカウンセラーだって、日々、自分の心の井戸を掘っている最中の存在です。ときにクライアントさんの話が、自分の理解の深さを超えてくることもあります。でも、それを受け止められるようになるには、自分の井戸も、もっと深く掘っていくしかない。

だから私は、こう考えるようにしています。

「この話、僕の今の理解では足りていないかもしれない。でも、もう少し教えてもらえたら、もっとわかるかもしれない」

そして、わからないままでも、頭の片隅に持ち帰って考えてみる。文献を読んだり、スーパーバイザーに相談したりして、自分なりに仮説を立ててみる。次に会ったときに──

「前回の話、あとで考えてみて、もしかしてこういうことかなと思ったんですけど…」

と、投げかけてみる。そうすると。

「いや私もそのこと考えてて、ちょっと今なら言い方違うけどもう少し話せるかも」

と、少し違った角度からの話が聞けたり。

時には

あ、その話もう大丈夫です

とスルーされることももちろんありますが、多くの場合は「なんか引っかかる話」というのはお互い引っかかっていて、後で一緒に眺めてみると「ああ、そういうことだったのか!」と他の出来事とリンクして、中核的なその人らしさを浮き立たせることになったりもします。

もちろん、クライアントさんの悩みは千差万別。簡単にわかるようなものではありません。

クライエントさん自身もなんだか分からないから困っている!なんてこともあるので、やっぱり一緒に掘っていくという「関係」そのものが治療的ということだと思います。

そしてそれはクライエントさんにとって大事なだけでなく、そうやって食らいついていくことが臨床家の成長の糧になるのだと思います。

それは、ただ共感を示すつもりで「分かる」と言っていては、ちょっと辿り着けない成長の仕方です。

それが、私の考える「傾聴」の裏側にある臨床家のあり方ですし、ただ聞くだけじゃないという「傾聴」の側面かと思います。

傾聴の相槌についての質問から、「問い」や「共感」「理解」の話にもつながってしまいましたが、実際はここら辺は自実務上は不可分なので、そのまま傾聴の話として書かせていただきました。

4月18日(金)の夜、「臨床心理学超基礎講座 傾聴からはじめよう」では、こうした「聴く」ことの難しさや面白さを、できるだけ解像度を上げて、関係ありそうな無さそうな周辺領域に飛び火しながらお話ししたいと思っています。

今回ご紹介した「わかります問題」も、その中のひとつです。

日常の「わかる」と、臨床での「わかる」の違い。語られたことと語られなかったこと。わからなさをどう扱うか──そんな話がもできたらと思います。

ご関心ある方は、ぜひご参加ください。

「わかる」ふり、ではなく「もう少し教えてください」と素直に言える私たちでありますように。

傾聴に関する研修のご案内

研修日時:2025年4月18日 21:00~23:00(オンラインでの事後視聴も可能です)

場所:Zoomにて
テーマ:「傾聴からはじめよう」

詳細・お申し込みはこちらから:
研修詳細・申し込みフォーム

自分の臨床の中で「基礎のさらに手前のところ、発想や視点の切り替えについてもう少し成長したいな」と感じている方には、ぜひ『臨床超基礎講座』にご参加いただけたらと思います。

学校や通常の研修では、どうしても“その先”の内容にフォーカスされがちです。でも、この講座は、その“手前”の部分——基礎の基礎を、丁寧に扱う研修です。とはいえ、受けてみて「全然手前じゃないじゃん!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが……(そのときは、そっと苦情ください)。

講座は4月から始まります。現在の予定では、毎月第3金曜日の21時〜23時に開催予定です。

  • 第1回(4月18日):傾聴からはじめよう
     → 傾聴は知っているだけではなく、「できる」こととの間に大きな距離があります。解像度を一緒に上げていきましょう。

  • 第2回(5月16日):治療構造と転移
     → “治療の枠”をどう考えるかについて深掘りします。

  • 第3回(6月20日):見立て
     → 「そんな見立てもアリなの?」と思ってもらえるような、面白い内容になると思います。

  • 第4回(7月18日):共感
     → 共感は奥が深くて、踏み込んでいくととても面白いテーマです。

  • 第5回(8月15日・お盆):理解を伝える(予定)
     → 言い方ひとつでクライアントの反応が大きく変わります。ここでは“抵抗処理”の技法にも触れられたらと思っています。

  • 第6回(9月19日):まとめと質疑応答
     → 全体の振り返りと、皆さんの疑問にじっくりお答えします。

そして、後半は10月17日から始まる『解決志向・超基礎講座』。どの理論的背景を持つ人にも役立つ内容を予定しています。

いずれの講座も、参加者の皆さんや、参加されない方の声も取り入れながら、今まさに作っているところです。「こういうところに困っている」といった声に応じて、内容を調整していきたいと考えています。

▼ 詳細・お申し込みはこちらから: https://pro.form-mailer.jp/lp/735d131a326854

また、講座準備の一環として、「カウンセリングに関する基礎的な困りごと(傾聴・関係づくり・治療構造など)」に関する情報を集めています。

実際の現場で感じていること、疑問に思っていることを、以下のアンケートフォームからお寄せください。

皆さまのお声をもとに、より実践的で役に立つ講座にしていきたいと考えています。

▼ アンケートご協力のお願い: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc8RJ60vZgjrulKrvRrRF5VqnCZnZlFzgf6wBByqvrrBVj1gA/viewform?usp=sharing

それでは、またお会いできるのを楽しみにしています。

「傾聴している時って相槌を打ちますよね。その時に「『わかります』って言っていいんでしょうか?」

30代の女性クライアントが、「職場で孤立していて、上司にも同僚にも何を言っても届かない気がする」とぽつりと語ってくれました。

私は思わず、「それ、わかります。つらいですよね」と返してしまったのですが、クライアントの表情がどこか曇ったように感じました。

「わかるよ」と言うのは、共感としてはずれているんでしょうか? どうしたらうまく伝わるのでしょうか?

…この「それ、わかります問題」、じつは多くの人がつまずくところなんです。

日常会話では「わかるよ」は便利な潤滑油だけど

私たちはふだん、「わかる、わかる〜」「それ、あるある!」といった形で、軽やかに共感を示しながら会話をしています。

こういう時は、本当にわかってほしいわけではなく、「だいたい同意」のサインとしての「わかる」でしかないのです。

話の腰を折らないための相槌や、共通感覚の表明としては「わかるよ」はとても便利な言葉です。

けれど、これが臨床の現場になると、事情はちょっと変わってきます。

カウンセリングの場では、相手が語ることの多くは、その人のプライベートで大切な部分や、日常では簡単には語れない重たい話です。

そういうときに「それ、わかります」と返してしまうと──

「本当に、あなたにわかるの?」

多くの場合、話し手はそう感じるのではないでしょうか?

「わかってほしい」けれど「簡単にはわかってほしくない」

これは私自身の感覚でもあるのですが──人って、「わかってほしい」と思ってはいるのだけれど、「簡単にはわかってほしくない」んですよね。

自分が悩んで、苦しんで、ようやく言葉にしたことを、誰かに「わかるわかる」なんて軽く返されたら──それがたとえ悪気がなくても、「これって、そんな簡単な話だったのかな…?」と感じてしまう。

そして「なんだか分からないけど、こんなふうに簡単に「分かる!」って言っている時点で、この人は絶対わかっとらんし、今後もわからんよね」という気持ちがあるんだと思うのです。

深さの違いを前提にする

私はよく「井戸を掘る」というたとえを使うのですが──人は自分の悩みに向き合うほど、自分の内面に深い井戸を掘っていくようなものだと思っています。

そして、悩みの深い人の話というのは、聞き手の井戸がまだ浅いうちは、簡単には届かない。深いところの話が始まった瞬間、聞き手の理解は「カーン」と底にぶつかってしまう。すると、無意識に話を変えてしまったり、「こうしたらどうですか?」と助言をしたり、非常に浅いところからの反応をしてしまうのです。語り手が本当に語りたいことまで辿り着けないんです。

そして語り手は内心でこう思うかもしれません。

「ああ、この人には話しても無駄かもしれない」

「ああ、また的外れなことを言われた…もうやめておこう」

そうなると相談は上っ面で進んでいくことになりますし、基本的には中断に向かっていくことになるでしょう。

 

「わかる」の代わりに、どんな言葉をかけたらいいのか

では、「わかります」を避けるとして、じゃあ何と言えばいいのか。共感を示すにはどうしたらいいのか。

ひとつの手がかりになるのは、「理解の精度を上げる」ための問いかけです。

たとえば先ほどの架空事例の「職場で孤立していて、上司にも同僚にも何を言っても届かない気がする」という言葉に対して──

「職場で孤立するのはかなりしんどいですよね」

と気持ちを想像しつつ、この話は大事そうに思えるけど、重要なところを掴めていないな、と感じている場合は

「今の話、とても大事な話をされたと思うんですが、もう少し詳しく教えていてただいてもいいですか?」

と、その話の続きや周辺状況や、感じたことを少し詳しく教えてもらえるよう、恐る恐るでもいいからお願いしてみるのがいいと思います。分からないなりに、なんとか理解しようという姿勢が、その後の関係にも影響を及ぼします。

もちろん、少し主観から離れた状況や例外を把握するために

「この人だけはなんか届くなー」って同僚や、「今日はなんか大丈夫、届いてる感じがする」なんてタイミングなんかもあったりします?

というのも全然悪くないし、むしろ「それ」が話せる状況や関係ならこう聞くことが多いくらいですが、あくまで基礎の話でしたのでお気になさらず。

もし関係が十分にできていて、一緒に探索していく、という協働関係ができているならば

「何を言っても届かない感じって、伝わらないんじゃなくって届かないってことなんですかね??」

「今の僕の理解で言うと、情報としては伝わっているのに、自分の気持ちやこの居場所の無さみたいな感じが、なんか理解されていない、なかったようにされている、自分なんかいてもいなくても同じなんじゃないか、というようなことかなと思ったんですが…どうでしょう?」

と理解を伝えつつ、その答えを相手がどのように感じたか、受け止めたかをまたクライエントにお聞きする、小さくコンセンサスを取りながら、進めていく、というところまで行けたら一番良いかと思います。(もちろんそれは相手が「違う」と言える関係になることと、そう言われた時に「もう少しその辺教えていただいてもいいですか?」と、一つ戻ってまた一緒に考えていく姿勢が必須と思います。)

 

こんなふうに、相手の話の輪郭を、そっとなぞってみるような問いを返してみるんです。相手の語ったことの“周辺”や少しだけ手前や先に光をあてるような言葉を置いてみる。すると、相手も「もうちょっと話してみようかな」と思えるかもしれないですよね。

あるいは、「それって行くの嫌になっちゃいませんか?」というふうに、状況に即して具体的に寄り添う表現ももちろんあります。

重要なのは、「わかる」と言うことよりも、こちらの「わかっていない」という前提が伝わること。そのほうが、語り手はずっと話しやすくなると思います。

井戸の深いところから出てくる言葉について、その出所は自分の位置からは底が見えない、つまりどのくらい理解が足りていないかもわからないものです。
「まだ自分の理解は足りていないかもしれない」という前提でいなければならない。

カウンセラーに必要な「謙虚さ」というのは、そういうことだと思うのです。

井戸を一緒に掘るように

日々相談を聞いているカウンセラーだって、日々、自分の心の井戸を掘っている最中の存在です。ときにクライアントさんの話が、自分の理解の深さを超えてくることもあります。でも、それを受け止められるようになるには、自分の井戸も、もっと深く掘っていくしかない。

だから私は、こう考えるようにしています。

「この話、僕の今の理解では足りていないかもしれない。でも、もう少し教えてもらえたら、もっとわかるかもしれない」

そして、わからないままでも、頭の片隅に持ち帰って考えてみる。文献を読んだり、スーパーバイザーに相談したりして、自分なりに仮説を立ててみる。次に会ったときに──

「前回の話、あとで考えてみて、もしかしてこういうことかなと思ったんですけど…」

と、投げかけてみる。そうすると。

「いや私もそのこと考えてて、ちょっと今なら言い方違うけどもう少し話せるかも」

と、少し違った角度からの話が聞けたり。

時には

あ、その話もう大丈夫です

とスルーされることももちろんありますが、多くの場合は「なんか引っかかる話」というのはお互い引っかかっていて、後で一緒に眺めてみると「ああ、そういうことだったのか!」と他の出来事とリンクして、中核的なその人らしさを浮き立たせることになったりもします。

もちろん、クライアントさんの悩みは千差万別。簡単にわかるようなものではありません。

クライエントさん自身もなんだか分からないから困っている!なんてこともあるので、やっぱり一緒に掘っていくという「関係」そのものが治療的ということだと思います。

そしてそれはクライエントさんにとって大事なだけでなく、そうやって食らいついていくことが臨床家の成長の糧になるのだと思います。

それは、ただ共感を示すつもりで「分かる」と言っていては、ちょっと辿り着けない成長の仕方です。

それが、私の考える「傾聴」の裏側にある臨床家のあり方ですし、ただ聞くだけじゃないという「傾聴」の側面かと思います。

傾聴の相槌についての質問から、「問い」や「共感」「理解」の話にもつながってしまいましたが、実際はここら辺は自実務上は不可分なので、そのまま傾聴の話として書かせていただきました。

4月18日(金)の夜、「臨床心理学超基礎講座 傾聴からはじめよう」では、こうした「聴く」ことの難しさや面白さを、できるだけ解像度を上げて、関係ありそうな無さそうな周辺領域に飛び火しながらお話ししたいと思っています。

今回ご紹介した「わかります問題」も、その中のひとつです。

日常の「わかる」と、臨床での「わかる」の違い。語られたことと語られなかったこと。わからなさをどう扱うか──そんな話がもできたらと思います。

ご関心ある方は、ぜひご参加ください。

「わかる」ふり、ではなく「もう少し教えてください」と素直に言える私たちでありますように。

傾聴に関する研修のご案内

研修日時:2025年4月18日 21:00~23:00(オンラインでの事後視聴も可能です)

場所:Zoomにて
テーマ:「傾聴からはじめよう」

詳細・お申し込みはこちらから:
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自分の臨床の中で「基礎のさらに手前のところ、発想や視点の切り替えについてもう少し成長したいな」と感じている方には、ぜひ『臨床超基礎講座』にご参加いただけたらと思います。

学校や通常の研修では、どうしても“その先”の内容にフォーカスされがちです。でも、この講座は、その“手前”の部分——基礎の基礎を、丁寧に扱う研修です。とはいえ、受けてみて「全然手前じゃないじゃん!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが……(そのときは、そっと苦情ください)。

講座は4月から始まります。現在の予定では、毎月第3金曜日の21時〜23時に開催予定です。

  • 第1回(4月18日):傾聴からはじめよう
     → 傾聴は知っているだけではなく、「できる」こととの間に大きな距離があります。解像度を一緒に上げていきましょう。

  • 第2回(5月16日):治療構造と転移
     → “治療の枠”をどう考えるかについて深掘りします。

  • 第3回(6月20日):見立て
     → 「そんな見立てもアリなの?」と思ってもらえるような、面白い内容になると思います。

  • 第4回(7月18日):共感
     → 共感は奥が深くて、踏み込んでいくととても面白いテーマです。

  • 第5回(8月15日・お盆):理解を伝える(予定)
     → 言い方ひとつでクライアントの反応が大きく変わります。ここでは“抵抗処理”の技法にも触れられたらと思っています。

  • 第6回(9月19日):まとめと質疑応答
     → 全体の振り返りと、皆さんの疑問にじっくりお答えします。

そして、後半は10月17日から始まる『解決志向・超基礎講座』。どの理論的背景を持つ人にも役立つ内容を予定しています。

いずれの講座も、参加者の皆さんや、参加されない方の声も取り入れながら、今まさに作っているところです。「こういうところに困っている」といった声に応じて、内容を調整していきたいと考えています。

▼ 詳細・お申し込みはこちらから: https://pro.form-mailer.jp/lp/735d131a326854

また、講座準備の一環として、「カウンセリングに関する基礎的な困りごと(傾聴・関係づくり・治療構造など)」に関する情報を集めています。

実際の現場で感じていること、疑問に思っていることを、以下のアンケートフォームからお寄せください。

皆さまのお声をもとに、より実践的で役に立つ講座にしていきたいと考えています。

▼ アンケートご協力のお願い: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc8RJ60vZgjrulKrvRrRF5VqnCZnZlFzgf6wBByqvrrBVj1gA/viewform?usp=sharing

それでは、またお会いできるのを楽しみにしています。

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