10/17 解決志向超基礎講座 第1回「解決志向の基本とジョイニング」

ブリーフセラピーの核心にある「利用性」という哲学
解決志向、そしてブリーフセラピーにおいて私が最も大切にしている哲学があります。それは「利用性(Utilization)」です。
クライアントさんの内側にあるものはもちろん、周りにある環境や状況、対人関係、さらには嫌いなもの、苦手なもの、一見その人に害をなしていると思われるもの、頑なな信念や価値観さえも、すべて治療のために利用するという考え方です。
これは、すごく柔軟な発想と広い視野が必要とされます。問題思考でやっていると、これがなかなか難しいのです。
傾聴にも共通するセラピストのマインド
臨床心理学超基礎講座で扱っている傾聴の部分、その前提にあるセラピストのマインドとして重要なのは:
- すべての人は今ある精一杯をやって、今ここにいるという前提
- その人の中に必ず、自分自身を正しい方向に決断できる力、自分自身を助けることができるリソースがあるという視点
こうした視点は、利用性の考え方ととても深く関係しています。
傾聴というのは、相手にリソースがある、解決する力があるという前提がなければ意味がありません。「この人は何もできない」と思って傾聴していても仕方ないわけです。
「問題」をどう捉えるか
リソースを見るということ。問題に引っかかって問題の周囲しか見られないというのは、それ自体が問題なのです。
もちろん、その人の環境とその人らしさの折り合いをつけるところに、その人の苦しさや問題として表れているものがあります。
ここで大事な言い方があります。「問題がある」のではなくて、「問題として今目の前に浮かび上がってきている」ということです。「問題らしきもの」くらいの捉え方をする。これがまず一つの課題ではないかと思います。
「これが問題なんです」「ああ、それは問題ですね」という応答は、相手の言葉をそのまま受け取っているように見えて、ある意味何も考えていないとも言えます。
もちろん相手の言うことをその通り受け取らなければいけないところもあるのですが、そうは言っても、「この人は今このことを問題として捉えている」という認識が重要です。
「これが問題」なのではなく、「この人は問題として捉えている」のです。つまり、何か変われば、この人はこのことを問題として捉えなくなるかもしれない。でも、そのためにセラピスト側が本気でそれを問題だと思う必要はないわけです。
問題として扱っているという、そのフレーム・文脈を見つけた上で、こちらがちゃんと認識した上で、そうでない文脈がこの状況で起こり得るのかどうかを試験的に考えていく。それをクライアントさんと共同にやっていくのです。
困難な状況にこそ必要な視点
ブリーフセラピー、解決志向、ソリューションフォーカスアプローチは、もともとアメリカで生活保護を受けている人や依存症の人たちを効果的に治療するために研究されてきました。
ただ、困難な人ほど、逆に言えば「この人は問題な人だ」というふうに扱われ、劣悪な環境にいるから「なんとかそこから救い出さなければ」ということになって、それが逆にうまくいかないということがあったと思うのです。
だって、その人の否定から始まっているわけですよね。
だからこそ、そうじゃないものの見方を、ブリーフセラピー、ソリューションフォーカスアプローチ、解決志向は私たちに提供してくれると思うのです。
- 一旦問題と本気でみなさない
- クライアントのみならず、その周りもリソースでいっぱい
- 環境でも関係でも相談者の役に立ちそうなことは利用する
この観点こそが、臨床における解決志向の臨床に柔軟さを与え、セラピストには視野の広さを与えてくれるわけです。
例外を見る、解決を構築する
それは、例外を見るということであったり、解決についてその場でクライアントさんと一緒に、相談者と一緒に構築していくということです。
違うものを見に行く。問題とは違うものを。問題の周囲にあるものも全部まるっと見る。
そういう、利用性に満ちたものの見方を、どうやったら身につけられるんだろう。
スクールカウンセリングへの応用
それができるようになると、例えばスクールカウンセリングなどでも、その個人ではなく、状況そのものに働きかけるという発想が出てくるわけです。
そのためには:
- ネガティブに見えるものの中にあるリソースを見る視点
- 相互作用の「パターン」を捉える
- 環境そのものではなく、「環境との関わり自体」をコントロールするという、より精緻な表現に
- 保護者や教職員の、まだ出ていない、眠っている、その子供に対するリソースとして活用できるところを発見する
こういったことを協働的に行っていく可能性が生まれてくるわけです。
セラピスト自身が問題に取り込まれないために
問題志向で、相談者だけに、相談者の問題を中心にフォーカスしていると、どんどん頭が硬くなってしまう。柔軟な見方が難しくなってしまう。
つまり、問題にセラピスト自身が取り込まれてしまうということになります。
自分自身も、解決志向に出会う前はそうなっていたなと思いました。
もちろん、問題だけを見て解決していくやり方でうまく回っていくこともあるわけですが、そうではないコンサルテーションが求められたり、保護者への助言(これもコンサルテーションですが)が求められたり、環境全体のコーディネートをしたい、いじめや不登校の未然防止活動みたいなことをするためには、やはりマネジメントの力が必要なんですよね。
マネジメントの力を養う解決志向
この解決志向的な視点が、として、特にすルールカウンセラーとしてのマネジメントの力を非常に養ってくれるのです。これがないとなかなか難しいのではないかと思っています。
解決志向超基礎講座 第一回では、こうした解決志向の根本的な考え方、特に「利用性」という哲学と「ジョイニング」に代表される関係づくりについて、じっくりと学んでいきます。
臨床の柔軟さ、視野の広さを身につけたい方、問題に取り込まれずにクライアントさんと協働的に解決を構築していきたい方、ぜひご参加ください。
■ 解決志向超基礎講座のご案内
また、スクールカウンセラーや対人支援職の方を対象に、
**「解決志向超基礎講座」**を2025年10月より半年間にわたり開催します。
各回には講義と実習(ワーク)を組み合わせ、
実際の場面で“使える発想”として解決志向を体感的に学べる構成になっています。
各回は録画視聴も可能ですので、どのタイミングからでもご参加いただけます。
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告知動画
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