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【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第2章その4 患者の行動を利用すること Utilizing the Patient’s Behavior

 
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カケイ カズノリ
臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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ミルトン・エリクソン入門を読む

WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)という本があります。

この本は、ブリーフセラピーの源流になったと言われる天才的な精神科医ミルトン・H・エリクソンのアプローチについて、著者の目線からまとめられており、僕自身の臨床の中で一番大きな影響を受けている本の一つです。

自分の臨床を見直すという意味でも、ミルトン・エリクソンについて多くの方に知っていただくという意味でも、この本に書かれていることを紹介しつつ、自分なりにコメントを書いて行こうかと思います。

関心の在る方はお付き合いください。

患者の行動を利用すること Utilizing the Patient’s Behavior

事例1

ある男性は、不安が強くてじっと座っていることも横になっていることもできず、医師の診療で自分のことを話そうにも、落ち着いて話すことが出来ませんでした。

しかも悪いことに、彼にとっては精神科の診察室は、一層不安が強くなるところのようで、結局、何人もの精神科医から非協力的で処置不能として治療を断られていました。

エリクソンは「そのまま部屋をうろうろしていてくださいますか?」と尋ねると、その男としては「うろうろしているのがこの部屋にいられる唯一の方法だから」ということで「もちろんそうします」と。

エリクソンはさらに、彼の歩き方に指示を与えても構わないか、と彼の同意を取り、彼に歩き方の指示与えていました。

右に行ったり左に行ったり、ひょっとしたらちょっと駆け足になったりジャンプをするなんて指示もしたかもしれません。

エリクソンは徐々にしゃべる速さをゆっくりにしていくと、彼の歩調もゆっくりになり、そのうちエリクソンの次の指示が出るのをそこで立ったまま待つようになりました。

45分ほど経つと、彼はエリクソンの指示に従って椅子に掛けて、エリクソンのトランスへの暗示に直接反応するようになりました。

これまたペーシングとリーディングの話かと思います。

普通だったら彼を座らせようとして、まず落ち着きなさいと声を掛けたり、なんとか落ち着かせようとリラクゼーションを導入しようとするのかもしれません。

まずエリクソンは彼がここに居るために必要とすることを取り上げようとしなかったことに注目してもいいかもしれません。

そしてエリクソンは指示しているようでいて、実際は彼のやりたいこと、やらずにはおれないことを指示している。

つまり指示してもしなくても彼は歩き回るわけですから、その指示には承認という意味が入っているので、実際には指示でありながら歩き回ることへの支持であったりすると思うんです。

ややこしいですね。

コミュニケーションの形として、エリクソンの指示を彼が聞いて行動する、という形を作ったのでは?と考えるのは少し強引でしょうか。

考えたこと

余計なことかもしれませんが、ここでちょっとだけ彼の心の中のことを考えてみましょう。

彼は不安でしょうがないから歩き回るわけですよね。

そんな彼にエリクソンは、彼のやりたいことが出来るように、彼のタイミングや動きや意図を察知しながら、絶妙なタイミングで指示を入れていったのではないかと想像します。

自分のやりたいことをやりたいタイミングで、自分の感覚に合わせて指示してくれるというのは、これはすごく彼にとって安心する体験なのではないかと思うんです。

彼の場合の不安というのは、羅針盤が無いような、つまりどこにいても正しくない、何をすればいいのかわからない、何を考えていいのかもわからない、どこにも居場所がない、というような不安の感覚だったのではないかと。

ある意味自分でいる場所も行動も選択しようとも選択できなくなっているといえるかもしれません。

そこにエリクソンの指示に身を委ねることは、「その通りに動けばいい」ということは、彼にとってとても安心のできる体験だったのかなと思いました。

自分の行動を「エリクソンに委ねる」ということは彼にとってもとても価値のあることだったからこそ、指示を立ったまま待っていたのだろうと。

ちょっと本筋とは違うのですが、そんなことを考えてしまいました。

まとめ

この話、別に相談に来た方が歩いていたって座っていたって、学校の先生へのコンサルテーションだって、基本的にはやることは同じなのではないかと思いました。

まずは合わせる、その人の困っていることを否定せず、その人の文脈を大事にする。

理解を伝えつつ関係を作る。(この事例では、言語化したわけではないですが、彼はエリクソンに理解され受け止められているように感じたのではないかと思います)

その人が望む形になるように違いをもたらす、と。

この順番が違うと、例えば先に違いをもたらそうとすると「非協力」みたいなことになってしまう、先に座らそうとすると居られなくなるという事です。

相談に来た方が今どんな体験をしているか、そこにちゃんとセンサーを向けていれば、間違いは起こりにくいと思うのですがどうでしょうか。

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