見立てとは何か?その2 〜見立てとは何か?クライアントと共に理解を深めるプロセス〜
見立ては「決めつけること」ではない
カウンセリングの現場では「見立て」という言葉をよく使います。この見立てとは、単なる診断やレッテル貼りではなく、クライアントの状況を整理し、理解を深めるプロセスです。
例えば、その人が現在抱えている悩みや困りごとが、どんな背景から生じているのかを考えます。生育歴、家族関係、現在の生活環境、習慣、最近の出来事……さまざまな要素が絡み合う中で、どの情報が今の問題と深く関わっているのかを見極めるのが見立ての役割です。
クライアントと共に仮説を立て、更新する
カウンセラーが一方的に「あなたはこういう人ですね」と決めつけるのではなく、クライアントと対話をしながら仮説を組み立てていくことが大切です。
例えば、こんなふうに尋ねることがあります。
「お話を伺っていて、もしかすると〇〇な部分があるのかなと感じたのですが、どう思いますか?」
すると、クライアントは「そうですね、確かにそんなところがあります」と同意することもあれば、「いや、それはちょっと違います」と否定することもあります。このやり取り自体が、新しい気づきにつながるのです。
さらに、「そういえば、過去にこんなことがありました」と新たな情報が出てくることも。こうして仮説は常に更新され、見立てがより深まっていきます。
視点が変わることで、選択肢が増えていく
俯瞰することで「自由」が生まれる
見立てが進むことで、クライアント自身の視点が変わることがあります。それまで「仕方ない」「こうするしかない」と思い込んでいたことが、別の見方ができるようになるのです。
例えば、こんな変化が起こります。
- 仕事で頼まれたことを即答で引き受けていた人が、「断るという選択肢もある」と気づく
- 「あのとき言われたことに傷ついた」と思っていた人が、「今の自分にはもう関係ないことだ」と整理できるようになる
視点が変わると、行動も変わります。本来その人が持っている柔軟性や選択肢を取り戻すことにつながるのです。
「こうすべき」に囚われない見立てを
しかし、見立てをする際には注意が必要です。たとえば、不登校の子どもを前にして「親の育て方が悪いのでは?」といった根拠のない決めつけは最悪です。
見立ては、その人が語ることに寄り添いながら行うべきもの。カウンセラーが持つ知識や理論も活用しつつ、一方的な価値観を押し付けないことが大切です。
「普通の会話」と「カウンセリングの会話」の違い
つい言いたくなる「もっと頑張ったら?」
普通の会話では、「あなたがもうちょっと頑張ればいいんじゃない?」といった言葉が何気なく出てしまうことがあります。でも、カウンセリングの場面ではこれはNGです。
困っている人に対して、「あなたの中に問題があるからじゃない?」という視点に立つと、結果的に傷つけてしまうことが多いからです。カウンセリングでは、まず相手の話を丁寧に聞き、文脈を整理することが求められます。
価値観を脇に置き、文脈を追う
「この人は本当のことを言っているのか?」と疑ったり、「多角的に見るために他の情報も集めなければ」と焦ったりすることもあるでしょう。確かに、それらは大切な視点ですが、まずはクライアントの語る文脈に沿って話を聞くことが重要です。
クライアントにとって、自分の話を聞いてもらえないと感じる相手に心を開くことはありません。だからこそ、まずは語りを大切にし、仮説を立てながら共に整理していくことが重要なのです。
見立ての基本は「その人の基本方針を知ること」
人にはそれぞれの「選択の癖」がある
見立てをするうえで大切なのが、その人がどんな状況でどんな選択をしがちなのか、いわば「基本方針」を知ることです。
例えば、こんな違いがあります。
- 誰かに何か指摘されると「自分が悪い」と思うタイプ
- 逆に「なんでそんなこと言うんだ!」と怒りが湧くタイプ
こうした選択の癖は、日常の中で自然に積み重なっているもの。これを知ることで、クライアントの行動パターンが見えてきます。
基本方針をもとに、仮説を立てる
基本方針がわかると、その人の反応や行動が予測しやすくなります。例えば、こんなやりとりが生まれるかもしれません。
「こういう場面では、あなたはこういう反応をしやすいですよね?」 「ああ、そうですね!確かにそうです」
または、
「いや、それはちょっと違います。私の場合は……」
こうして話し合いながら、仮説を検証し、見立てを更新していく。このプロセスを繰り返すことで、クライアント自身が自分の行動パターンに気づき、調整していくことができるのです。
まとめ:見立てとは「共に考える」こと
見立てとは、一方的に決めつけるものではなく、クライアントと共に考え、更新していくものです。
- まずはクライアントの話をしっかり聞く
- 一緒に仮説を立て、検証しながら整理する
- 価値観の押し付けではなく、その人の文脈に沿って考える
- 基本方針を探りながら、選択の傾向を見極める
- こうしたプロセスを繰り返すことで、視点が広がり、自由な選択ができるようになる
カウンセラーが見立てをすることで、クライアントは新しい視点を得ることができます。そして、その視点が変わることで、選択肢が増え、行動の幅が広がるのです。
最も大切なのは、「この人はこういう人だ」と決めつけることではなく、その人と一緒に見立てを作り上げていくこと。そのプロセスこそが、カウンセリングの本質なのかもしれません。
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「どうなったらよいか」を丁寧に聴く - リソースに注目する
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“スーパースモールステップ”で実行可能な課題を設定 - フィードバックと振り返り
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