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感情の扱い方について

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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〜「悲しい」だけでは語りきれない気持ちをめぐって〜

臨床の現場では、私たちは日々、さまざまな感情と出会います。

悲しみ、怒り、不安、安堵、そして、どこにも名前がつけられない、宙ぶらりんな感情たち。

「身近な人が亡くなって悲しいです」

「友だちにひどいことを言われて、腹が立ちました」

そんなふうに語られる感情に対して、「そうですよね」と寄り添うことは、臨床の基本とも言えるでしょう。けれども、そうした共感の言葉が、時に相手に届かないことがあるのです。

「感情」はもっと複雑で、もっと個人的なもの

たとえば、ずっと反発していた親が亡くなったという相談があったとします。

周囲の人からは「それは悲しいことだよね」と言われるかもしれない。けれども、その人の中にある感情は、そんな単純な「悲しみ」だけでは語れないこともあります。

「確かに、ずっと喧嘩ばかりだった。でも、その人が死んだとき、自分の背骨が抜けたような気がして……」

怒っていた相手、関係がこじれていた相手、言葉にできなかった想い。そのすべてを抱えたままの「喪失」は、決して一言では整理できないのです。

感情に対する「解像度」が問われるとき

こういうとき、支援者の側に問われるのは、「感情に対する解像度」です。

私たちが「悲しいですよね」と応答したとき、その言葉が適切であれば相手の心にすっと染み込んでいくこともある。けれど、もしその感情がもっと複雑なものであったとき、「あ、この人、わかってくれてないな」と感じさせてしまう危険もあるのです。

そして恐ろしいのは、そう思ったことを、クライアントは言葉にしてはくれないということです。

「この人とはもう、深い話はしなくていいかも」

そんなふうに、静かに、関係が閉じていく。

だからこそ、私たち支援者は、相手の言葉や表情の“ズレ”に敏感でありたいのです。

違和感を拾えるかどうか

たとえば、悲しい出来事について話しているのに、どこか表情がしっくりこない。

その“ちぐはぐさ”に、こちらが気づけるかどうか。そして、それをどう扱うか。

「悲しいんですよね」と返すのではなく、

「今、悲しい気持ちを抱えているのかなと思ったんですが、でもそれだけじゃないような表情にも感じました。よかったら、あなたの中の“悲しみ”ってどんなものなのか、少し教えていただけませんか?」

こんなふうに、感情の奥にある風景に向けて、そっと光を当ててみる。

それは、決して「問い詰める」でも「当てに行く」でもありません。ただ、「一緒に見てみよう」と誘う行為です。

違和感をその場で言えなくてもいい

もちろん、いつもその場で言語化できるとは限りません。

でも、「あれ?」という違和感を心の中に保留しておくことはできます。

その違和感が、次の面接でふいにつながったり、これまでの語りのピースと重なったりすることもある。感情は、それだけ流動的で、生きているものだからです。

そのためにも、支援者は「感情とは何か」「怒りとは?」「悲しみとは?」という問いについて、自分なりの仮説を持っている必要があります。

怒りの奥には「期待」がある

たとえば私は、怒りという感情の奥には「期待」があると思っています。

「こうであってほしい」「仲良くしたかった」「信じたかった」――

そうした気持ちが裏切られたとき、人は腹が立つのです。

つまり、怒りとは、ただの攻撃性ではありません。むしろ、つながりたいという願いがあるからこそ生まれる感情だと考えることもできます。

そうやって、「この感情には、何が含まれているんだろう?」と丁寧に見ていくこと。それが、感情を扱ううえでの第一歩です。

感情は、状況に左右される“個人的なもの”

ただし、こうした仮説を持ちながらも、常に忘れてはならないのが、感情は“個人的”なものであり、そのときの状況や文脈に大きく左右されるという点です。

同じ出来事でも、ある人にとっては「安心」であり、別の人にとっては「屈辱」かもしれない。

同じ言葉を聞いても、「うれしい」と感じる人と「責められている」と感じる人がいる。

だから、支援者が「これはこういう感情だろう」と決めつけることは、とても危ういことなのです。

「寄り添い損なわない」ために

もうひとつ大切なのは、「親習的になりすぎない」こと。

つまり、「わかります」「私も同じような経験があります」と安易に寄り添いすぎないこと。

それを言うことでクライアントが安心する場合もありますが、カウンセリングの場面では、多くの場合に「わかってもらえなかった」「あなたの体験や感じ方と私の体験は別物ですよね?」と感じさせてしまうリスクも含んでいます。

感情に寄り添いながらも、開かれたままでいること。決めつけず、問いをもって共にいること。

これは、技術というよりも姿勢の問題なのかもしれません。

感情を見つめる

こうした感情の複雑さについて、先日の実習では「これは何という感情だろう?」「こういうとき、人は何を感じるんだろう?」という問いをもとにワークを行いました。

怒り、悲しみ、がっかり、さびしさ、苛立ち、困惑――

普段あまり言語化しない、けれど確かにそこにある感情たちを、丁寧に取り扱う時間。

こうしたトレーニングは、日常生活の中では意外と難しいものです。

けれども、だからこそ、こうした実習の時間がとても貴重なのだと感じました。

感情を理解することは、「その人のあり方を理解する」ことにつながる

感情を言葉にすること。

それは、自分や他者の内面を理解しようとする行為です。

そして、その感情にそっと寄り添うこと。

それは、目の前の相手に対して、「あなたのことを大切に思っていますよ」という無言のメッセージでもあります。

感情は、決して整理整頓された状態でやってくるわけではありません。

でも、その複雑さを、クライエントさんと一緒に、慎重に紐解いていくことは、カウンセリングという仕事が成り立つためには欠かせないことかと思いますし、それ自体が、クライエントさんにとって、変化や癒しのプロセスそのものになることもあるのです。

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