【公認心理師資格試験講座】第一回資格試験過去問題 問3.医師の指示について
まずはこちらmaenoshinさんのブログを御覧ください。
ちなみに問2についての解説はこちら。
といいうわけで問3、医師の支持に関する問題に行ってみましょう!
問3 14歳の女子A、中学生。摂食障害があり、精神科に通院中である。最近、急激にやせが進み、中学校を休みがちになった。Aの母親と担任教師から相談を受けた公認心理師であるスクールカウンセラー が、Aの学校生活や心身の健康を支援するにあたり、指示を受けるべき者として、最も適切なものを1つ選べ。
- 栄養士
- 学校長
- 主治医
- 養護教諭
- 教育委員会
これは考えるまでもなく主治医なのですが、ポイントは指示を受けるべき者という一文です。
maenoshin さんのブログにあった回答と説明。
③
第42条2項
公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。公認心理師が指示を受けるものとして、明記されているのは「主治の医師」のみである。
ここも「当該支援に関わる主治の医師があるときは」に注目します。
この場合、摂食障害ですでに通院しているわけですから、精神科の医師というのが「当該支援に関わる主治の医師」となるわけです。
(念の為、Aさんが耳鼻科にかかっていても、それは当該支援に関わっていなければ指示を受ける必要はないということでもあります)
詳しくは以下に書かれています。
公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について
読んでみると、今まで意識していなかったことも結構書いてありました。
よくよく読んでおく必要があるなと。
目次
Toggle他の選択肢について
さて他の選択肢について。
1の栄養士と4の養護教諭について、できれば助言を頂きたしですし、情報の共有や、回復に向けての学校での対応を考える上での連携をしていけたらいいですよね。
そして実は少し考えなきゃならないのは2の学校長。
学校教育の観点に立つと、学校長の役割は公務を司り所属職員の監督をすることなので、Aの学校生活についてスクールカウンセラーの立場では、学校長の指示を仰がなければいけないような気がします。
5の教育委員会についても、スクールカウンセラーは所属して間接的に監督を受ける立場なのかな??
でもそもそもこの問題の趣旨は、上記の公認心理師法 第42条2項 を理解しているかどうかっていう、踏み絵みたいな問題(失礼!)なので、何も考えずに、3の主治医が正解なのでしょう。
医師の指示と指導を巡って
ちなみにこのことについては、
公認心理師法案の 主治医の指示条項についての見解 (日本臨床心理士資格認定協会)
・医師の「指示」という文言が用いられる診療補助職,業務の一部に医師の 「指示」が用いられる言語聴覚士法,医師の「指導」が用いられる精神保健 福祉士法など,他の資格法で用いられる医師の「指示」との間で大きな齟 齬を生じさせ,「指示」「指導」「連携」という文言について,資格法の法令 間で混乱をきたします。
・病院や診療所などにおいて医師の診療として心理的支援を行う以外では, 特に,いろいろな支障がでる可能性があります。
・主治医の指示自体をどのように出すことができるのか,これまでの制度との 関係でも,物理的な条件でも多くの問題があります。
・いろいろな場面で,クライエントの意思,プライバシー,援助の「選択の自 由の権利」や「自己決定の権利」(世界医師会リスボン宣言)が狭められ, 国民の人権が制限されるおそれがあります。このことは,精神障害者の自 己決定の支援(「WHO精神保健ケアに関する法:基本 10 原則」)を困難 にするとともに,いじめ,DV・虐待,犯罪被害など被害者支援,職場のメン タルヘルスから家族関係の調整まで,心理職による心理的支援の様々な ところで支障を生じる可能性があります。
・ 心理職の所属機関の方針と主治医の指示との間に矛盾や葛藤が生じる可 能性があります。
・被支援者に主治医がいるというだけで主治医の指示を受けなければなら なくなるということは,心理職がこれまでのように独立した専門職として活動 することを困難にし,職業選択の自由を狭めることになります。
こういった点で、心理職の活動を制限し、国民の人権を損なう、つまり要心理支援者にとって不利益があることなので、この条項を撤廃するか、「医師の指示」を精神保健福祉士と同じように「医師の指導」に修正するべき、という意見を出していたのですが、この部分は変えられずということでした。
自分のこととして考えてみると
僕が今まで一緒に仕事をしてきた医師たちは、いろいろ大事なことを教えてくれた先輩みたいな感じのする方や、心理的なことで困ると相談してくれて、一緒に取り組んでいける方ばかりだったので、いまいち実感がわかないところもあるのですが。
クリニックなどで働いていた仲間や後輩から話を聞くと「そんな恐ろしいことある!?」っていう身震いするようなへんてこ医師エピソードもたくさん聞きますし、不登校のことで病院にいって医師との会話でダメージを受けてカウンセリングに来る方もいらっしゃるので(そもそも病院でうまく対応してもらった方は僕のところには来ないので、そのバイアスがかかっていますが)、自分のところに相談に来た方の主治医が、ほんまにヤバイ人だった時は、僕自身も相談に来られた方もすごく困るでしょうね。
(そんな時はさりげなくセカンドオピニオンを勧めるとかしてもいいのかな??)
まあ、その医師と一緒に働いていなければ、いくらでも知恵と工夫でやりようはあると思いますが、同じ職場で上司や経営者がヤバイ医師だと、本当にどうしようもなく苦しむことになりますよね。
そうなったときに、公認心理師法の考え方では、どうしようもない、というわけですが、う〜ん。
医師の指示とコメディカルの自立について
ちょっと話はそれますが、医師の指示についての、地域医療をやっている医師の、こんな文章を発見しました。
「医師の指示」について ―医師給与と医師の世間的地位について―
その昔、医療はほとんどが一人の医師によって行い得た。自分で検査もし、レントゲンもとり、注射でもなんでもした。マンパワーとしては医師が圧倒的であり、あとは素人に毛が生えた程度の看護職がいれば医療は成り立ったのである。
医療界においては医師のみが高い教育を受け、また高い技術を持っていた。そのためにこそ、医師給与は高かったのである。
おそらく昭和30年代あたりまではこうした状況だったのではないのだろうか。こうした時代では医師の指示は唯一絶対であった。医師の指示がなければ本当にどうしようもなかったのである。他のスタッフは医師の指示に唯々諾々と従わざるを得なかったのである。
しかし現在はまったく異なった状況となっている。医療の複雑化、専門化に伴ってコメディカルと呼ばれる職種が増え、その人数も増え、彼らの力なしには医療が行い得なくなった。コメディカルの仕事も専門化が進み、彼らは医師に負けないくらいに勉強するようになった。かつては万能であった医師もコメディカルのそれぞれの専門分野ではもはやたちうちできないようになっているのである。
現在はさまざまな職種がお互いの専門知識を出し合ってチームで医療を行う時代なのである。当然コメディカルのそれぞれの専門家は医師の指示などにとらわれず、もっと自立して仕事をしたいと思うであろう。レントゲン技師は自らの判断でレントゲンを撮り、診断をしたいだろう。
看護師は医師がいない状況であるならば自分達の判断で救急患者を救いたいと思うだろう。そのための勉強は普段からしている。
要するに現在の医療においては医師の能力は相対的に低くなっているのである。
医師中心でなければ成り立たなかった過去の医療と、高度な専門技術を持っているコメディカルスタッフありきの現在の医療とでは、そもそも状況が全く違うのであると述べている。
いろんな制度が、過去の医療の状況で作られているから現状でいろいろな齟齬が起こっているってことでしょうかね。
またコメディカルの自立と責任について。
現代ではコメディカルがそれぞれの分野で自立して必要不可欠の働きをするようになり、医師の仕事の範囲が狭くなってきている。もはや医師の指示が絶対的権威を持っていた時代は終わったのだ。昔の医療は医師を頂上とする富士山型であったが、現代の医療は各スタッフが並列する八ヶ岳型なのである。現代における医療は医師であるとないとを問わず、それぞれの得意分野を持ち寄ってみんなで文殊の智恵をしぼる時代なのである。
これまで医師のみが持っていたさまざまな医療行為上の権限はどんどんコメディカルに移譲していくべきである。
その代わりにこれまで医師のみが負っていた責任もまたコメディカルが負わなければならない。
権限なきところに責任なし、でこれまでやってきたコメディカルは自らが医療により積極的に関わろうとすれば当然より大きな責任が伴ってくる。
イギリスのプラクティショナルナースなど、医師がいなくても運営している診療所などの話を交えて語られています。
アメリカでは州によってはソーシャルワーカーが薬を処方したり、医療のチームリーダーをしたり、なんて話を聞いて「日本とはだいぶ違うなあ」なんて思っていたのですが、なるほどねえ。
もう少し、日本以外の状況も知っておいたほうがいいですよね。
「これが当たり前」
みたいについついさせられているなあと実感。
ちなみにこの方のコラムとか、いろいろ無茶だなあと思いつつも、Windowsのペイントで描いたという似顔絵は異様に上手く、トランプさんとか笑いました。
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