かけい臨床心理相談室

【不登校についてのの論文を読む】不登校児童生徒が期待する援助行動 笠井孝久 千葉大学教育学部研究紀要 その1

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臨床心理士  カウンセラーっぽくないカウンセラーと言われることが多い チェブラーシカに似ていると言われることがある 似ていないと言われることもある 時間空間的なおっちょこちょいである
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インターネット上にはたくさんの論文があり、自由に閲覧することが出来ます。

不登校やカウンセリングに関する論文を少しずつ読み進めていこうと思っています。

今回はCiNiiで見つけたこの論文についてのその1です。

不 登 校 児 童 生 徒 が 期 待 す る援 助 行 動 What Kind of Supportive ActivitiesDo School Refusers Expect ? 笠 井 孝 久 * Takahisa KASAI

概要

不登校の児童生徒の状態やきっかけが様々であり、乗り越えるべき課題も異なるので、支援には個別的アプローチが必要です。

きっかけや原因には、その直訴の時期に必要な発達課題を乗り越えることの困難さや失敗、あるいはもっと前の時期で獲得されていなければならない課題の未達成が、今になって問題になっていることもあります。

 

さらに不登校になったことで、さらに体験や人間関係が制限されてしまうので、不登校によってそのように阻害された経験がさらなる学校復帰の妨げになってしまうということもあるでしょう。

不登校の児童生徒への援助的関りとしてグループ体験や野外体験活動が多く行われています。

そういった活動は、集団で活動する楽しさや自己信頼感を取り戻すという機能だけではなく、不登校をしていたために得られなかった経験や対人関係を補う機能を持っています。

 

そのようなかかわりを行うのには、まず児童生徒が不登校という経験からどんな影響を受けているのか明らかにする必要があります。

この研究では、「不登校をしているからこそ阻害された経験」と、「不登校だからこそできるほかの児童生徒が経験することが出来ない経験」について検討して、不登校児に対する適切な援助の仕方について考えています。

 

方法

(1)調査対象

千葉県の適応指導教室へ通っている児童生徒:194名、不登校児を対象としたキャンプに参加している児童:76名

つまり、適応指導教室に通経ていてキャンプに参加できている、比較的活動性の高い状態にある児童生徒に対する調査ということなので、すべての不登校の児童生徒に当てはまることではないということです。

(2)調査内容

1)担任への期待

不登校児童生徒が担任の教師の働きかけについて「家庭訪問」「電話連絡」「配布物を届ける」の3点について担任にしてほしいと思う程度を「そう思う」「少しそう思う」「そう思わない」の3段階で評価してもらう。

2)友だちへの期待

不登校児童生徒が担任の友だちの働きかけについて「家庭訪問」「電話連絡」「配布物を届ける」の3点について担任にしてほしいと思う程度を「そう思う」「少しそう思う」「そう思わない」の3段階で評価してもらう。

3)不登校になったきっかけ

「クラス」「先生」「友だち」「勉強」「いじめ」「恥ずかしい体験」「身体」の7項目を提示して、きっかけとして当てはまるものをすべて選択してもらう。

(3)調査方法

千葉県教育委員会生徒指導部生徒指導室によって実施された。

①千葉県内の適応指導教室に対して実施を依頼し、実施方法はそれぞれの適応指導教室に任された。

②教育委員会主催の不登校児を対象としたキャンプに参加している児童生徒に直接、調査用紙等を郵送し、回答をお願いした。

個々の児童生徒の状況に配慮したが、回答する状況にそれぞればらつきがありますよということです。

 

(4)調査時期

平成10年10月~12月

時期も大事ですよね、二学期始まって、なかなかやっぱり行けないどうしよう、みたいな時期という感じでしょうか。

 

2結果と考察

(1)回収率

①適応指導教室に通う児童生徒:194名から回答で、在籍児童生徒の66%。

②不登校児キャンプに参加している児童生徒:67名で、44パーセントの回収率。

(2)被験者の属性

中学生が全体の80%以上で、不登校になり始めた時期は中学1年生(33.8%)が最も多く、中学生になってから不登校になった割合が59.6%。

不登校3年未満の児童生徒が全体の80%を占めるが、5,6年と長い経過をたどっている児童生徒も少なからず存在する。

(3)学年と初発時期に基づいた分類

被験者の人数の偏りを考慮して「小学生」「小学初発」「中学初発」の3群に便宜的にグループ分けをした。

(4)担任への期待

関りの内容 そう思う 少しそう思う そう思わない
もっと家庭訪問してほしい 10(4.3%) 43(18.5%) 179(77.2%)
もっと電話連絡してほしい 20(8.6%) 66(28.4%) 146(62.9%)
プリントなどの配布物を届けてほしい 73(31.6%) 79(34.2%) 79(34.2%)

効果があるかどうかは置いておいて、少なくとも不登校の児童生徒が家庭訪問や電話連絡について、ほとんど求めていないことを示していますね。

 

さて、家庭訪問や電話連絡については、期待の少なさ、というよりも強い拒否感があるのではないか?ということでしたが。

プリントなどの配布物を届けるといったかかわりをしてほしいと思っている児童生徒は、「そう思う」「少しそう思う」を合わせると、65%を超えているといった結果も出ています。

 

【不登校】「不登校お手紙問題」について withnews記事より

 

この結果をどう読み取るか、ですが、学校に行けていない状態の児童生徒にとっては、「学校」というのは強烈な葛藤を高める刺激となりえます。

先生が家にやってくる、電話がかかってくる、というのは直接「安全な場所が侵食される」という体験になりやすいんです。

そうはいっても学校とのつながりは少しはもっていたい(いつか戻らなければと思っている場合)ので、脅威を感じる直接的なものではなく、間接的なつながりを持てる機会として、「プリントや配布物」は機能しているのかもしれません。

 

ここまでの掛井の私見

そしてこの結果は、対象の属性を考えてみても「実際にされてみて、どうだったか?」という体験に基づくものでもあると思うんです。

つまりそれだけ家庭訪問や電話連絡で「嫌だった」という体験をした児童生徒が多かったということ、さらに言えば、これはすでに適応指導教室やキャンプに参加できている、つまり特定の条件さえそろえば、家から出て集団活動がる出来るところまでエネルギーも回復してきている子たちのわけですから、さらにその手前にいる児童生徒にとっては、もっともっとしんどいこと、という想像ができます。

教師やスクールカウンセラーは家庭訪問や電話連絡は「基本的に児童生徒にとって苦痛なものである」という前提の上で「児童生徒の利益のために、何を目標にして、どうやって行うのか?」と考えることが必要ですよね。

漫然とやるのは害になるんです。

担任が家に来るというプレッシャーだけでエネルギーが削り取られ、我慢の時間を過ごすことは、意欲も自尊心も奪われることにつながるんです。

そして多くの場合保護者にとっても同じことなんです。

そして家庭訪問に費やす時間は、担任にとってもとても貴重な、ほかのやりたいこと、やるべきことの隙間を縫ってようやっと作り上げた時間なはずです。

そもそも定時に帰れる先生なんてほとんどいないわけで、毎日の業務に追われて心が削れている状況の中で、捻出した時間のはずです。

児童生徒や保護者にプラスのある関りが出来なかったら、その時間と労力にまったく意味がないはずです。

しかし逆に考えれば、「担任が来てくれてうれしい」「電話が楽しみ」「先生が家に来た後子どもはなんだか元気」という家庭訪問や電話連絡が出来たら、それだけで超レアなことです。

そして、不登校の児童生徒が不登校になっていることで、「他人と関わる体験が不足」し、「自尊感情が低下」しているなら、なおさら担任とのちょっとホッとする楽しい時間があることは、不登校の児童生徒にとって価値のあることになるのではないでしょうか?

「宿題をしていなくたって」「早寝早起きが出来ていなくったって」「学校に来れていなくたって」そんなのどっちでもいいんです。

「ちょっとドキドキしたけど、会ったらなんか楽しかった」が、大切なんです。

担任がもしそこに全力投球することが出来れば、絶対に響くものがあるはずです。

プリントなどの配布物については「そう思う」と「少しそう思う」を合わせて65%を超えるということで、そこまでの抵抗感はないですよね。

なので、プリントを届けるふりをして、実際は楽しい時間を過ごすことに注力。

最初は子供も保護者も、「怒られたり強烈な登校刺激をされるのではないか」と不安になっているので「登校刺激をされなかった」「担任が笑顔で来てくれた」というだけで相当にほっとします。

「無理強いしない」というジャブを十分打ったうえで、「この人は大丈夫」と信頼関係を作った後に、「なんだか家に来ると楽しい」という時間を構築するのが王道かと思われます。

 

つづきます。

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