【視聴レポ】協働・願い・繋ぐ・紡ぐ 〜傷つきからの回復に必要なこと〜
みなさん、こんにちは!
今回は2022年1月22日(土)に開催されました「協働・願い・繋ぐ・紡ぐ 〜傷つきからの回復に必要なこと〜」の視聴レポートをしていきます。
お話ししてくださったのは、赤鼻先生でおなじみの副島賢和先生です。
ドラマなどで取りあげられたことがあるので、ピンときた方も多いことでしょう。
ウェビナーの内容をまとめてみましたので、ご一読いただけたら幸いです。
目次
Toggle(1)成長と回復のために教育ができること
副島先生は教員という立場から、学校や院内学級の子ども達と関わってこられました。
そのため、ご専門である教育から子供たちの成長と回復について考えていらっしゃいます。
「学ぶことは、生きること」
教育は日常を支えてくれるものだとお話しされていました。
そのうえで、副島先生が子どもたちと関わるうえで大切な4つのポイントを教えてくださいました。
①その子の今を大切にする
②こころの声を聴く
③感情のうしろの願いを言語化する
④その子がひとりじゃないと思うことができる
この4つのポイントを念頭に置きながらウェビナーを視聴すると、より深い理解ができると思います。
SCHool -Safety-
SCHoolという言葉は、打ち合わせ動画でも話題にされていました。
詳しくはこちらをご覧ください。
今回のウェビナーでは、より詳しい解説を聴くことができました。
まずは、Safety。
これは「安心安全の確保・出会い」を意味します。
入院したての子どもたちは、「ちょっとだけ周りを傷つける」ことをするのだそうです。
院内学級で他の子がなにかをやっていると、わざわざ「俺、もうその勉強やったし?」と言ってみたり。
はたまた、我先に「わたしもそれできるよ!」とアピールしてみたり。
なぜそんなことをするのかというと、傷ついているから。
副島先生曰く、子どもたちは入院したこと自体を失敗だと思っていることが多いとのことです。
本来、子どもたちは「今」を生きたい生き物。
自分の健康よりも、「今」の友達や自分の挑戦を大切にしたい想いがあります。
入院することで、「今」に待ったがかかってしまいます。
さらに、親に迷惑をかけてしまっていると考えている子も少なくないそうです。
子どもたちはどうしても弱い存在であるが故に、他人のせいにするよりも、自分を責めることで耐え忍ぶことが多いのだとか。
無邪気に振舞うことがどうしても難しい。
打ち合わせ動画でも、副島先生は「子どもたちは、立派に『患者』をやっている」とおっしゃっていました。
さて、周りをちょっと傷つけてまわる子達に対してどうしているのか。
副島先生は「いや、あなたとこの子を比べてないし」と声をかけるのだそうです。
「患者」という鎧を脱いで、「子ども」へ戻るお手伝いをされていました。
その一歩として、比べられない安心感を育てるのだそうです。
人間は普通に生きているだけでも、あれこれ比べたり、比べられてしまうことはありますよね。
「比べられる・傷つけることがなくていいとは思わない。けど、エネルギーがない時にされると耐えられないよね」と副島先生はお話しされていました。
特に病院は、傷ついた人たちが「患者」として来、回復が優先される場所でもあります。
場所としては安心安全ですが、それが心にとってもそうだと、子どもたちはすぐには思えないでしょう。
「安心安全の中で、子どもたちは鎧を脱ぎ、素が出てくる」
その過程を経て、やっとその子たちの願いや想いがでてくるのだそうです。
ウェビナーでは掛井先生や視聴者がお話しする場面もありました。
その中で、会社や学校で誰かを支援していると、成果や成績が会社員や児童生徒に求められるが故に、比べられざるを得ない状況になってしまい難しいという話になりました。
それに対し、副島先生は「大人も子どもも、緊張する時間・緩む時間のメリハリがつけられるといいよね」とコメントされていました。
掛井先生は、先生方へのコンサルテーションで、休み時間におしくらまんじゅうをしてみるといった提案もされたことがあるとか。
所謂、オンオフの切り替えということでしょうか。
また、副島先生のご経験では「教員じゃない自分を持っている方は強いなと思う」のだそうです。
「教員」という鎧を脱いで、1人の個人に戻る瞬間があることで、エネルギーが貯められているのかもしれません。
SCHool -Challenge, Hope-
次はChallenge。
「選択と挑戦」を意味し、安心と安全の関わりの中でチャレンジしてもらう段階です。
副島先生は、人には、あたま・からだ・こころの3つの声があるとお考えでした。
その子たちが発するそれぞれの声を聴き、読み取って、言葉で表現するのを手伝っていらっしゃいました。
特に、からだの声は、言葉や表現として出てくるのですぐに拾いやすい。
拾う際は、「その声の内になにがあるのか」を考えることが大切だとお話しされていました。
ここでは、子ども達を支える大人側の「余計なひとこと」が注目されていました。
目の前で痛いと叫ぶ子どもを見ると、大人は不安になってしまう。
その不安をなんとかするために、思わず「痛くない」などと声をかけてしまうことが多いという話です。
教員も心理士も、自信がない時や不安な時は、相手の想いを受け取り切れずに「余計なひとこと」を言ってしまって後悔することがあるよね、と盛り上がっていました(笑)
それを防ぐために、私たちができそうなことのヒントは、次章以降に詰まっていると思います。
さらに、ウェビナーの後半では「『頑張れ』って言っちゃいけない問題」が話題になりました。
おそらく、うつ病が世の中に知られるようになり、罹患者への基本的な支援の姿勢として広まったものだと私は記憶しています。
しかし、いつしか「『頑張れ』って言っちゃいけない」という言葉だけが独り歩きしてしまうようになってしまった気がします。
副島先生は「その人を見て。それから言うか言わないか。決めることが大切なんじゃないか」とおっしゃっていました。
その言葉を、目の前のその人は受け止めることができるのか。
その人の想いを応援することになるのか。
判断するためにも、その人のあたま・からだ・こころの声を拾う努力を欠かしてはならないと。
それらを重ねていくことで、最後のHope、すなわち「日常の保証・将来の希望」につながる礎が育っていくのだろうと私は解釈しました。
(Hopeについてはあまり明言されていなかったので、視聴されたみなさんが一旦思い思いに解釈されるとよろしいかと思います。)
副島先生がパッチ・アダムスから学んだこと
副島先生はなぜ「あかはなそえじ」になったのか。
きっかけは映画でした。
当時、副島先生はクラスの子ども達とうまくいかず悩んでいらっしゃったそうです。
そしてこの映画に出会い、「赤鼻をつければ自分が変われるかも。違う自分として子ども達と関われるかもしれない」と考え、クラウンの修行を始めました。
クラウンの修行では、自分のしぐさや表情を見つめる作業を繰り返し、自分の中のクラウンを見つけ出していくのだそうです。
「心理って、自分の気持ちや思考を見つめる作業でしょう?似てるなあって思った」
クラウンの修行も、心理士の修行もされた副島先生だからこそ気がつかれた共通点ですね。
その後、ついに副島先生はパッチ・アダムスさんご本人とお会いできました。
エピソードそれぞれがどれも聴いていて可愛らしく、はっとさせられるものでした。
パッチ・アダムスさんは、支援者のために大事な7か条を残してくださいました。
詳しくは次章にまとめましたので、続けてどうぞ!
みなとともに… ケアする人のケア
これを読んでくださっているのは、普段子どもたちの成長と回復に関わっていらっしゃる方がほとんどだと思います。
子どもたちの傍にいることは、楽しいことばかりではありません。
昔から、誰かを支える続ける立場の人はバーンアウトしやすいといわれてきました。
副島先生は、パッチ・アダムスさんによるバーンアウトしないための7か条を紹介してくださいました。
- 人を愛してください
- 自分をヒーローだと思ってください
- 笑顔を大切にしてください
- 運命。人は怪我を知らないと生きていけません
- 創造性を発揮してください
- 自分は必ずできると信じてください
- 「ケアや愛が人の役に立つ」と科学的に証明されています。だから、信じてください。
今回は、特に「自分をヒーローだと思ってください」について話が盛り上がりました。
ヒーローといわれると、どんな人を想像しますか?
なんでもできるあの人やこの人を思い浮かべていませんか?
パッチ・アダムスさんと副島先生曰く、ヒーローはすごくなくていいそうです。
日常生活の中の、小さな親切。
それで人が柔らかくなれたり、ほんのちょっとでもお役に立てていたら、立派なヒーローなのだと。
みなさんのお話を聴きながら、私は小学生~高校生の時にお弁当を忘れるといっぱい現れた『これ食べていいよ』と言って、お弁当箱のふたを山盛りにしていく人たちを思い出していました。
ちょっと量が多いくて困っちゃうんですけど、うれしいんですよね…(笑)
ちなみに副島先生は、パッチ・アダムスさんに ‘you are my hero! Shirataman!’ と言われたそうです(笑)
さて、小さなヒーローになるためには、子どもたちと安心安全な関係を作らねばなりません。
副島先生は、「あなたが主役。あなたが大切。Understand」という言葉を口にしていました。
’Understand’という単語を「相手のことを理解するためには、相手の下に立つ。相手の懐に入る必要があるんだ」と副島先生は解釈されているそうです。
素敵な解釈ですね。
しかし、簡単に子どもたちと関係ができるとは限りません。
副島先生は、相手の懐にはいるチャレンジをして失敗することをフラれると表現されていました。
大人から声をかけると、子どもたちが構えて微妙な反応をしたり、中には明確に嫌がることも。
そのときは無理をせず、「ああ、ごめんごめん」と言って引く。
この時、子どもたちに対して「あなたの邪魔をするつもりはないんだ。けど、困ったらまた声をかけてね」というように、置き土産をしてあげることが大切なのだそうです。
声をかけた子の中には、先ほどフってしまった手前、大人に声がかけづらくなっている子もいます。
その子のサインに気が付けるように、その子の表情や行動を見ておく。場合によってはモノを活用するということもあったとか。
このように子どもたちの懐に入ってはフラれ、時には受け入れられを繰り返し、子どもたちにとって安心安全な関係を少しずつ作っていくのだそうです。
しかし、フラれるってやっぱり少し傷つきますよね…(笑)
なので、フラれに行っている(挑戦している)と誰かにわかってもらい、フラれたら慰めて支えてくれる人が身近にいるといいそうです。
何度もフラれるようなら、その人にもバトンタッチしてみたり。
「その子の安心安全の役目を担える人は、自分の他にもいるかもしれない」と思っておくことも大切だと副島先生は話されていました。
1人で気負い過ぎて、その子の安心安全の可能性を狭めないよう心掛けておきたいものです。
今、頑張っている皆さんへ
ウェビナーの後半で、副島先生はこんなことをおっしゃっていました。
「時々『これでよかったんでしょうか』と尋ねられることがある。
もしかしたら結果的に、もっといい方法があったのかもしれない。
けれど、その時にその人が自分をかけてやってきたことを、否定できないよね」
この言葉を聴いて、私はこれからも子ども達を支えながら、自分を磨いていきたいと改めて思えました。
子ども達を支える皆さんが、ほんのちょっとでもご自分を褒めてもらえたらと思い、最後にこの言葉を取りあげてみました。
2/18(金)「副島先生と語る会」開催決定!
この度「副島先生と語る会」も開催されることになりました。
ウェビナー「協働・願い・繋ぐ・紡ぐ 〜傷つきからの回復に必要なこと〜」に申し込まれた方(録画視聴含む)が対象です。日時は、2月18日(金)20時00分 ~ 22時00分 です。
お飲み物やおつまみを片手に、お気軽にご参加ください。
本ウェビナーの録画視聴について、まだ申し込みが可能となっております。
詳しくは以下のリンクを御覧ください。
https://pro.form-mailer.jp/lp/fd74a3ee245851
ウェビナー概要
■講座名:協働・願い・繋ぐ・紡ぐ 〜傷つきからの回復に必要なこと〜
■講師 : 副島賢和先生
■MC : 掛井一徳
■受講費:5,000円
■主催:かけい臨床心理相談室
内容スケジュール
■ 第一部 SCH(セーフティ・チャレンジ・ホープ)
副島先生がスーパーバイザーを務めるさいかち学級では、その子供の望みや願いを引き出し、 安全な場所を提供することにより、その子自身が選択したチャレンジをすることができように、 子供への関わりを行っています。
つまりそれは傷つきや苦しさの中にいる子供が、 ちゃんと子供らしさを発揮できる場所を病院の中に作ると言うことです。
副島先生の教師としての体験、病院での臨床体験を通じて得られた SCH(セーフティ・チャレンジ・ホープ)についてのお話を聞かせていただきます。
■ 第二部 パッチアダムスから学んだこと
副島先生は映画のモデルになったパッチアダムス本人から、 クラウンのトレーニングを受けます。
パッチの心情の中にこんな言葉があります。
「ケアは愛を動詞化する。ケアは概念ではなく、行動です」
副島先生が学んだ、行動としてのケアとは一体どんなものなのか。
第二部では副島先生が、パッチアダムスから学んだことについてお話をしていただきます。
■第三部 ディスカッション
こんな方に参加してほしい
■対人支援に関わるカウンセラーや福祉職、教職員、現在学んでいる学生さん
■子育てに関わる方
■子供との関わりや、ケアについての精度を上げたい方
■今現在傷ついている誰かへの寄り添い方を知りたい方
申し込み方法
以下のリンクからお申し込みください
https://pro.form-mailer.jp/lp/fd74a3ee245851
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