不登校支援の現場から考えること その1学校との協働
目次
Toggleスクールカウンセラーを取り巻く期待の変化
私はこれまで、不登校の支援を自分の仕事の大きな柱の一つとして取り組んできました。非常勤のスクールカウンセラーから常勤へと移行したのも、文部科学省が心理や福祉といった多職種の専門家と協働しながら支援を行う体制を強化したことが背景にあります。以前は、不登校になった子どもへの対応が中心でしたが、現在は未然防止や早期対応が重視されるようになり、相談体制そのものが変化しています。
以前のスクールカウンセラーの役割は、子ども・保護者・教師の間をつなぐことが中心でした。しかし、今は支援策の検討や実施・検証をチームとして行う形に変わってきています。この変化に対応するため、私自身のアプローチも見直す必要がありました。
精神分析からの家族療法への転換
非常勤のスクールカウンセラーを始めた頃、私は精神分析の手法を中心に据えていました。当時の私が所属していた医療機関でのカウンセリングではそれで十分でしたが、学校現場では「具体的に何をすればいいのか」というニーズに応えきれない場面が多くありました。「見守ることが大切」と教わってきたものの、現場では「どう見守ればいいのか?」という具体的な方法が求められます。このままではいけないと感じ、家族療法の一派である解決志向(SFA)とシステムアプローチを学びました。子供や親子関係の見立てを精神分析的なポジションから行いつつ、相互作用の見立てはシステムズアプローチで行う。さらに具体的な介入提案は解決志向とシステムズアプローチを織り込むというやり方です。これにより、保護者面接やコンサルテーションを通じて、子どもに影響を与える方法を見出すことができるようになりました。
その結果、子どもと直接カウンセリングをしなくても、保護者や教師との関わりを通じて状況を改善できることが分かってきました。しかし、その頃の多くのスクールカウンセラーや学校関係者にとっては、「とにかくスクールカウンセラーが子どもと会うことが大事」という風潮があり、毎週の面接を重視する傾向が強くなっていました。私は「カウンセリングだけが支援ではない」と考えていたため、少し違和感を覚えました。
コンサルテーションの重要性
カウンセリングはもちろん大切ですが、その前にコミュニティを支える方法はいくらでもあります。例えば、カウンセラーが一生懸命関わって子どもが良くなったとしても、翌年カウンセラーが変われば状況が振り出しに戻る可能性があります。しかし、教師と協力しながら支援を行うことで、学校全体としての支援力が向上し、長期的な支援が可能になります。
また、教師がカウンセラーに「この子の気持ちは分かったけど、具体的にどうすればいいの?」と聞いてくることがよくあります。以前の私は、心理的な理解を伝えることが重要だと考えていましたが、それだけでは現場のニーズに応えられません。教師が主体的に関われるような助言が必要だと気づき、具体的なアドバイスを行うようになりました。
未然防止の取り組み
現在、不登校支援では「未然防止」がキーワードになっています。これは、問題が顕在化する前にリスクを減らす取り組みのことです。一次予防・二次予防という考え方がありますが、不登校の問題も同様で、困っている子どもだけを支援するのではなく、まだ困っていない子どもたちのスキルを向上させることが重要です。例えば、自己理解を深めるプログラムや、友人関係を支える力を養うワークショップなどが挙げられます。
しかし、学校現場では「不登校になった子どもをどうするか」が優先される傾向があり、未然防止の取り組みが後回しにされがちです。私が常勤になったばかりの頃も、「とにかく不登校の子どもを見てくれればいい」という雰囲気があり、スクールカウンセラーの役割が誤解されていることを痛感しました。
協働的な支援の土壌を作る
スクールカウンセラーが学校で機能するためには、教師との信頼関係が不可欠です。しかし、常勤のスクールカウンセラーとして入ると、非常勤時代のように「専門家として頼られる」立場ではなくなり、むしろ「教師と同じ土俵で動く」ことが求められます。最初は戸惑いましたが、これはむしろ学校に溶け込むチャンスだと考えました。
例えば、ケース会議を充実させるためには、単に意見を述べるのではなく、教師が「やってよかった」と思える形にすることが大切です。また、教師が主体的に動けるようにするために、スクールカウンセラーがサポートする形を整えることも必要です。
こうした取り組みを続けることで、徐々に「スクールカウンセラーがいることで学校全体の支援力が上がる」という実感を持ってもらえるようになりました。これは、単にカウンセリングを提供するだけでは得られなかった成果です。
まとめ
不登校支援は、単に子どもとのカウンセリングを行うだけではなく、学校全体の支援体制を強化することが重要です。教師と共同で支援を行い、未然防止の取り組みを進めることで、より持続可能な支援が可能になります。スクールカウンセラーとしての役割も、単なるカウンセリング提供者から、学校全体の支援を調整する役割へと広がってきています。
今後も、現場のニーズに応じながら、より効果的な支援の形を模索していきたいと思います。
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