心のエネルギーと不登校支援

心のエネルギーと不登校支援
「心のエネルギーが、将来的には“見える”ようになればいい」──これは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した心理学者ピエール・ジャネの言葉とされる考えです。
実際、私たちの目には心のエネルギーそのものは見えませんが、臨床の現場では、それをどうやって”見えるようにするか”という工夫がとても大切になってきます。
不登校の子どもに対して「とにかくまずは休ませましょう」というのは、ごく基本的な対応です。ですが、休んでいる中で”何がどう変わったのか”が周囲に見えないと、「全然変わらない」「いつまで寝てるの?」「このままじゃダメになるんじゃないか」といった不安や苛立ちに支配されてしまいがちです。
ここで大切なのが、「小さなメモリ(目盛り)」を見るという視点です。
たとえば、
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自室から出てリビングに顔を出すようになった
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風呂に入れる日ができた(風呂に入るのは実はとてもエネルギーが要る行動です)
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受け身のメディア(YouTubeや漫画)を楽しめるようになってきた
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教科書を机に置くことができた(でもまだ開けない)
こういった「小さな変化」に気づくこと。
一見して”勉強していない”ように見える状態にも、実は”エネルギーの回復に向けた段階”があるのです。
心のエネルギーの5段階
不登校の子どもたちの回復のプロセスを、私の臨床経験から見えてきた「心のエネルギーの5段階」としてご紹介します。
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何かすることをイメージすらできない段階:
頭の中にすら行動のイメージが浮かばず、ただ疲弊しているような状態。
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イメージはできるが言葉にできない段階:
「学校に行けるかも」といった言葉にしてしまうと、周囲が「行けるんだ!」と前のめりになってしまう。本人にはまだ準備ができていないのに、「言ってしまった」ことで期待や圧が生まれ、心のバランスを崩してしまう恐れがある。
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言葉にはできるが行動に移せない段階:
「行きたいと思ってる」と言えるようになるものの、実際にはまだ身体がついてこない。周囲の応援が逆にプレッシャーになることも。
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試行錯誤の段階:
実際に動き出したり、また動けなくなったりを繰り返す。風呂に入れる日と入れない日、外出できる日とできない日。リビングに出てきたり、メディアに触れたり、今までやらなかった活動に急に取り組んだりと、さまざまな試行錯誤が見られる。→親から見たら突飛なことでも肯定的に関わるが吉。満足すれば次の興味に変わっていく。ココロの出足を挫くのが最悪な結果になりやすい。
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言わずにすっと動ける段階:
行動が自然と日常の中に溶け込んでいくような状態。自ら選んで動く感覚が伴っており、「自分で決めた」という手応えがある。
このように、見えにくいけれど確かに存在する「小さなメモリ」を丁寧に見ていくこと。そのことが、子どもたちの心の回復を支える一歩になると私は思っています。
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