解決志向アプローチと抵抗処理:合気道に学ぶカウンセリングの技法
問題の所在をどこに見るか
カウンセリングにおいて、クライアントが抱える問題をどう捉えるかは、支援者の視点によって大きく異なります。
例えば、「眠れない」と訴えるクライアントに対して、支援者は次のようなアプローチを取るかもしれません。
「寝る前にリラックスしたほうがいいんじゃない?」と提案する人は、問題の所在を身体の緊張に見ています。
一方、「何か不安なことがあるんじゃないの?」と尋ねる人は、問題を心の状態に見出しているのです。
このように、支援者が問題をどこに想定するかによって、介入の方法は変わってきます。
なぜ問題そのものに直接アプローチできないのか
もちろん、問題そのものが解決できれば、それに越したことはありません。しかし、多くの人がカウンセリングを選択するのは、問題そのものを解決できなかった後なのです。
すでに自分なりに努力し、試行錯誤してきた。それでも解決できなかったからこそ、専門家の助けを求めている。そのような状況で、問題に直接ぶつかっていくのは、中々難しい場合が多いのです。
ただし、支援者が問題を直接扱える方法や技能を持っているときは、もちろん直接的なアプローチが可能です。しかし、そうでないときには別の戦略が必要になります。
合気道に学ぶ:小さなところから大きな変化へ
ここで参考になるのが、武術、特に合気道の考え方です。
合気道の小手返しという技は、小指側の小さな関節からロックしていきます。すると相手は逃げ場がなくなり、手首、肘、肩と順にロックされていきます。やがて頭が落ちつつ重心が側方に集まり、片足が浮いて投げられてしまうのです。
武術の多くはこのように、小さいところから大きなところへ力を流して、雪だるま式に崩していくという原理を用いています。できるだけ間接的に、相手の抵抗を最小限にしながら制するのです。
カウンセリングにおける間接的アプローチ
この原理は、臨床場面でも極めて重要な感覚です。
問題を細かく切り分けて、できるだけ小さな力でアプローチできるところを見つけて関わっていく。その関わりの効果を評価して、継続するか他の攻め口を探すかを判断する。
問題そのものから離れれば離れるほど、直接的な効果は薄くなりますが、同時にクライアントの抵抗も薄くなります。
小さな関節から連動させていくように、クライアントの変化も段階的に引き出していく。これは抵抗処理にもつながる重要な考え方なのです。
変化への願いと変化への抵抗
人は自ずから変わりたいと願って変わることができる存在です。しかし同時に、変わりたいと願っている本人の中に、変わることへの抵抗が生じていることがよくあります。
いえ、むしろ抵抗があるのが普通だと言えるでしょう。
なぜなら、「変わる」とは現状の自分への否定だからです。
今の自分に対する否定の文脈が、変化したい自分を縛ってしまう。このパラドックスを理解せずに支援を進めると、面接は容易に行き詰まってしまいます。
抵抗はなぜ強まるのか
特に他人(もちろんカウンセラーも含む)が変化を働きかければ働きかけるほど、抵抗は大きくなります。
「こうすべきだ」「これをやってみてはどうか」という直接的な提案は、クライアントにとって「今のあなたはダメだ」というメッセージとして受け取られる可能性があるのです。
だからこそ、抵抗処理については常に意識して面接を組み立てていかなければなりません。そうしなければ、面接は固着し、クライアントとカウンセラーの間に見えない壁ができてしまいます。
まとめ:小さな変化を積み重ねる
解決志向のアプローチとは、問題に正面からぶつかることだけを意味するのではありません。
合気道の小手返しのように、小さな関節から順にロックしていくように、クライアントが抵抗なく受け入れられる小さな変化のポイントを見つけ出す。そこから始めて、雪だるま式に変化を広げていく。
この間接的で段階的なアプローチこそが、クライアントの抵抗を最小限にしながら、持続的な変化を支援する鍵となるのです。
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