公認心理師・臨床心理士によるオンラインカウンセリング、スーパービジョン

スーパービジョンの選び方

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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■ 結論

  • 良いスーパービジョンは、スーパーバイジーとクライエントの役に立つものです。
  • スーパーバイザーは、正解を押しつける人ではなく、複数の見立てと選択肢を一緒に考えられる人が望ましいです。
  • スーパービジョンの関係そのものが、クライエントとの関わり方のモデルになります。
  • 違和感を無理に押し込めず、自分に必要な学びとのバランスを見ながら選んでよいのです。

スーパーバイザー選びで大切なのは、「この人は自分を支え、クライエントとの関係を見守りながら、臨床に戻る力を育ててくれるか」という視点です。

そのスーパーバイザーは、あなたとクライエントの役に立つか

スーパービジョンを受けるときに、何を基準にスーパーバイザーを選べばよいのでしょうか。

これは、臨床家にとってかなり大事なテーマだと思います。

スーパービジョンは、単に「正しい知識を教えてもらう場」ではありません。もちろん知識や技術を学ぶことも大切です。しかし、それだけでは十分ではありません。

良いスーパービジョンとは、最終的には、スーパーバイジーとクライエントの役に立つものである必要があります。

つまり、スーパーバイジーが少し力を取り戻し、「明日もう一度このケースに向き合ってみよう」と思えること。そして、その学びや見通しが、実際にクライエントへの支援に還元されること。

そこがとても大事なのではないかと思います。

良いスーパーバイザーの条件

僕が考える良いスーパーバイザーの条件はいくつかあります。

まず、スーパーバイジーをエンパワメントできることです。

スーパービジョンでは、ケースの難しさや自分の未熟さに直面することがあります。そのときに、ただ指摘されるだけでは、スーパーバイジーは萎縮してしまいます。

もちろん、耳の痛いことを言わなければならない場面もあります。

しかし、それが単なる批判ではなく、

「なるほど、そう見ればよかったのか」
「次はこうしてみよう」
「まだできることがありそうだ」

と思える形で伝えられるかどうか。

ここが大切です。

もう一つは、ケースの見通しを持てることです。

スーパーバイザーは、スーパーバイジーよりも少ない情報しか持っていません。それでも、その限られた情報から、ケース全体を俯瞰し、いくつかの仮説を立てる必要があります。

しかも、ひとつの見立てに決めつけるのではなく、複数の可能性を持てることが大切です。

「こうかもしれない」
「別の可能性としてはこうも考えられる」
「もしこちらの仮説なら、こんな関わりがあり得る」

というように、余白を持ちながら、具体的な選択肢を提示できること。

そして、その選択肢をスーパーバイジーが自分で選べるようにすること。

これが、良いスーパービジョンの重要な働きだと思います。

決めつけずに待つ力

良いスーパーバイザーには、すぐに答えを出しすぎない力も必要です。

話を聞きながら、すぐに「それはこうですね」と決めつけない。
わからなさを抱えたまま、少し待つことができる。

いわゆるネガティブ・ケイパビリティのような力です。

臨床では、すぐにわかることばかりではありません。

むしろ、本当に大事なことは、すぐには見えないことが多い。表面的な主訴や出来事の奥に、別の文脈や関係性があることもあります。

だからこそ、スーパーバイザーには、急いで結論に飛びつかず、複数の仮説を持ちながら話を聞く姿勢が必要になります。

そしてこの姿勢そのものが、スーパーバイジーにとってのモデルになります。

スーパーバイザーとのやり取りを通して、スーパーバイジーは、クライエントとの関わり方を学んでいきます。

「こういうふうに話を聞くのか」
「こういうふうに待つのか」
「こういうふうに見立てを押しつけずに共有するのか」

そうしたことを、スーパービジョンの場そのものから学ぶのです。

スーパービジョンは、臨床のモデルになる

スーパーバイザーは、単に知識を持っている人ではありません。

スーパーバイジーにとって、ある意味では臨床家としてのモデルになる存在です。

スーパーバイザーがスーパーバイジーにどう関わるか。
その関わり方は、スーパーバイジーがクライエントにどう関わるかに影響します。

たとえば、スーパーバイザーが一方的に正解を押しつける人であれば、スーパーバイジーもクライエントに対して同じような姿勢をとってしまうかもしれません。

逆に、スーパーバイザーが丁寧に話を聞き、仮説を複数提示し、スーパーバイジー自身が選べるように関わる人であれば、スーパーバイジーもクライエントに対してそのような関わりを学んでいくことができます。

だから、スーパービジョンの質は、単にケース理解の質だけではありません。

その場で起きている関係性そのものが、臨床の学びになるのです。

なぜ少ない情報から見立てができるのか

カウンセリングでは、クライエントのことを一番よく知っているのは、当然クライエント本人です。

クライエントは、自分の生活や人生について、膨大な情報を持っています。

一方で、セラピストが得られる情報は限られています。

50分、あるいは30分の面接の中で語られる情報。
それが何回か積み重なっていくとしても、クライエントの生活全体がすべて見えるわけではありません。

では、なぜカウンセリングが成り立つのでしょうか。

それは、限られた情報の中から、大事な情報を見つけ出し、見立てを立てているからです。

言葉として語られた内容だけではありません。

表情、沈黙、話す順番、話題が変わるタイミング、その話をするときの身体の反応。
そうした非言語的な情報や、セラピストとの相互作用の中で生まれる情報も含めて見ていきます。

「この話は、この人にとってどれくらい重要なのか」
「どの出来事とどの出来事がつながっているのか」
「この苦しさは、どの文脈の中で生まれているのか」

そうしたことをつなぎ合わせながら、見立ては少しずつ明確になっていきます。

スーパービジョンでは、さらに情報が少なくなる

スーパービジョンでは、さらに情報が少なくなります。

クライエントの話を、セラピストが受け取り、整理し、それをスーパーバイザーに持ってくる。
つまり、スーパーバイザーが受け取る情報は、かなり限られたものになります。

その少ない情報の中から、スーパーバイザーは考えます。

このスーパーバイジーは、どんな視点でケースを見ているのか。
何を大切にしていて、どこに困っているのか。
クライエントとセラピストの間では、どんな相互作用が起きているのか。

そして、ケース全体を少し俯瞰しながら、一歩先の仮説を立てていきます。

ただし、それは「正解を見つける」ということではありません。

むしろ、今見えている情報から、どんな可能性が考えられるかを広げていく作業です。

そのうえで、具体的な方略を提案する。

しかも、それをスーパーバイジーが力を失わない形で伝える必要があります。

いくら正しいことを言っていても、スーパーバイジーが傷つき、萎縮し、臨床に向かう力を失ってしまうなら、それは良いスーパービジョンとは言いにくい。

大事なのは、

「これは明日やってみよう」
「もう少し頑張れそうだ」
「このケースに向き合う見通しが少し持てた」

と思えるように関わることです。

 

スーパーバイザーとの相性をどう考えるか

もちろん、スーパーバイザーとの相性もあります。

「この人の話をもう少し聞いてみたい」
「この人のような臨床家になりたい」
「自分に足りない部分を、この人は持っている気がする」

そういう感覚は、かなり大事にしてよいと思います。

スーパーバイザーとまったく同じ臨床家になる必要はありません。

ただ、自分が学びたい方向性や、自分に必要な視点を持っている人を選ぶことは、とても大切です。

逆に、

「なんか嫌だな」
「この人の前では、自分の感覚を無視してしまう」
「無理して合わせている感じがする」

という場合は、少し慎重になった方がよいと思います。

厳しいことを言われて傷つくけれど、それでももう少し聞きたい。
これはあり得ます。

しかし、「なんか嫌だ」「自分の大事な感覚を無視している感じがする」という違和感は、無理に押し込めない方がよいと思います。

スーパービジョンは、長く続く学びの関係です。

だからこそ、自分の感覚をまったく無視してまで受け続ける必要はありません。

大学の先生から受け続けることについて

大学時代に教わった先生から、そのままスーパービジョンを受けている方も多いと思います。

それ自体は、もちろん悪いことではありません。

自分のことを知ってくれている先生であれば、安心感もあります。信頼関係もあります。

ただ、臨床実践を続けていくうちに、少しずつ自分の現場感覚が変わってくることがあります。

大学の先生の中にも、実践をしっかり続けておられる方はいます。
ただ、大学の先生は本当に忙しいです。研究、教育、学内業務などがあり、臨床実践に十分な時間を割くことが難しい場合もあります。

そうすると、現場で毎日ケースに向き合っているスーパーバイジーの方が、ある部分では実践知を積み重ねていくことがあります。

その結果、

「少し物足りないな」
「今の自分の現場には、別の視点も必要かもしれない」

と感じることもあると思います。

そのときに、新しいスーパーバイザーを探すことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。

「今の先生を裏切ることになるのではないか」
「また一から信頼関係を作るのは大変だ」
「別の先生に相談していると言ったら、どう思われるだろう」

そう感じるのは自然なことです。

しかし、僕は並行して別のスーパービジョンを受けてみるのは、全然よいと思っています。

複数のスーパーバイザーに学んでよい

本当は、複数のスーパーバイザーに学んだ方がよいのではないかと思います。

毎月必ず複数受ける必要はありません。

たとえば、隔月で交互に受ける。
必要なテーマに応じて、別の先生に相談する。
専門領域ごとに、学ぶ相手を変える。

そういう形でもよいと思います。

なぜなら、一人のスーパーバイザーからすべてを学ぶことはできないからです。

スーパーバイザーによって、見えるものが違います。
得意な領域も違います。
ケースの見方も、介入の仕方も、少しずつ違います。

だからこそ、複数の視点に触れることは、臨床家としての幅を広げてくれます。

もし今のスーパーバイザーに、

「別の先生にも相談してみたいです」

と言ったときに、怒り出すようであれば、その時点で少し考えた方がよいかもしれません。

それは、クライエントが、

「別のカウンセラーにも相談してみたいです」

と言ったときに、怒り出すセラピストと同じだからです。

もちろん、スーパーバイザーの側にも複雑な気持ちは起こるかもしれません。

少し寂しいとか、傷つくとか、そういう感情が起こること自体は自然です。

でも、それを自分で引き受けたうえで、

「あなたの役に立つなら、ぜひ他の先生の視点も聞いてみてください」

と言えること。

それが、スーパーバイザーとしても、臨床家としても、大切な姿勢なのではないかと思います。

スーパーバイジーも選んでいい

スーパービジョンというと、どうしてもスーパーバイザーが上で、スーパーバイジーが下という構図になりやすいかもしれません。

でも本来、スーパーバイジーにも選ぶ権利があります。

もちろん、スーパーバイザー側が受けるケースやバイジーを選ぶこともあります。
それと同じように、スーパーバイジーも、自分に合うスーパーバイザーを選んでよいのです。

肩書きがすごいから。
有名だから。
本を書いているから。
大学の先生だから。

そうしたことも、一つの参考にはなります。

しかし、一番大事なのは、

「今の自分に必要なものを、この人は提供してくれるのか」

ということです。

スーパーバイザーを選ぶということは、実は自分を見つめることでもあります。

今の自分には何が足りないのか。
どんなケースで困っているのか。
どんな臨床家になっていきたいのか。
どんな視点を身につけたいのか。

そこを考えることが、スーパーバイザー選びの出発点になるのだと思います。

スーパーバイザー選びのチェックリスト

スーパーバイザーを選ぶときには、次のような視点で考えてみるとよいかもしれません。

  • スーパービジョン後に、少し臨床に戻る力が湧くか
  • ケースについて、複数の見立てや選択肢を提示してくれるか
  • 一方的な正解ではなく、自分で考える余地を残してくれるか
  • 耳の痛いことも、こちらが潰れない形で伝えてくれるか
  • クライエントとの関係を丁寧に見守る視点があるか
  • 自分の違和感や疑問を話しやすい関係か
  • 今の自分の現場やケースに役立つ視点があるか

すべてを満たす人を探そうとすると、かえって苦しくなるかもしれません。

ただ、「この人とのスーパービジョンは、自分とクライエントの役に立っているか」という問いは、定期的に持っておいてよいと思います。

まとめ

スーパーバイザーを選ぶときに大切なのは、肩書きや有名さだけではありません。

そのスーパービジョンが、自分の臨床にどのように役立っているのか。そして、その学びがクライエントへの支援にどのように還元されているのか。

そこを見ていくことが大切です。

良いスーパーバイザーは、スーパーバイジーを萎縮させるのではなく、臨床に戻る力を育ててくれます。

少ない情報から複数の見立てを持ち、すぐに決めつけず、具体的な選択肢を一緒に考えてくれます。

そして、その関わり方そのものが、クライエントとの関係を見守る姿勢のモデルになります。

今のスーパーバイザーに不満がある場合も、それをすぐに否定する必要はありません。

ただ、自分の違和感を無視し続ける必要もありません。

必要に応じて、別のスーパーバイザーに相談してみること。複数の視点に触れてみること。

それは、臨床家としての幅を広げる大切な学びになると思います。

■ よくある質問(FAQ)

Q. スーパーバイザーが合わない気がするときはどうしたらいい?

A. まずは、「何が合わないのか」を少し分けて考えてみるとよいと思います。厳しい指摘がつらいのか、自分の感覚を無視してしまう感じがあるのか、現場に役立つ見通しが得られないのかで意味が変わります。違和感をすぐに結論にしなくてもよいですが、無理に押し込め続ける必要もありません。

Q. 今のスーパーバイザーに不満がある場合、別の先生に相談してもいい?

A. 相談してよいと思います。一人のスーパーバイザーからすべてを学ぶことはできません。専門領域やケースの種類によって、別の視点が必要になることもあります。今の関係を大切にしながら、並行して別のスーパービジョンを受ける選択もあります。

Q. スーパービジョンで厳しいことを言われるのが怖いときはどうしたらいい?

A. 怖くなるのは自然なことです。臨床の話は、自分の未熟さや不安に触れやすいからです。ただ、良いスーパービジョンでは、耳の痛いことも、スーパーバイジーが臨床に戻れる形で扱われます。終わったあとに少しでも見通しが持てるか、クライエントとの関係をもう一度見守ろうと思えるかが大切です。

Q. 大学の先生からスーパービジョンを受け続けるべき?

A. 大学の先生から受け続けること自体は悪いことではありません。安心感や信頼関係がある場合も多いと思います。ただ、現場経験を積む中で、別の視点が必要になることもあります。そのときは、今の先生を否定するのではなく、自分の臨床の幅を広げるために別の先生にも相談してみる、という考え方でよいと思います。

Q. スーパーバイザーは有名な先生を選んだ方がいい?

A. 有名であることや肩書きは、一つの参考にはなります。ただ、それだけで選ぶ必要はありません。大切なのは、「今の自分に必要な学びがあるか」「この人との関係の中で、自分の臨床が少し育つ感じがあるか」です。スーパーバイザー選びは、自分がどんな臨床家になりたいのかを考える作業でもあります。

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