スクールカウンセラー初任者が子どもと話せないときに考えたいこと|会話が弾まない理由と関係づくり
目次
Toggleスクールカウンセラーとして学校に入り始めると、子どもとの面接で戸惑うことがあります。
保護者面接や相談意欲のあるクライエントとの面接とは違い、子どもは必ずしも「自分が相談したい」と思って来ているわけではありません。
担任の先生に言われたから来た。なんとなく連れてこられた。自分でも何を話せばいいかわからない。
そういう状態で相談室に座っている子も少なくありません。
■ 結論
- 子どもとの会話が弾まないのは、力不足だけが理由ではありません
- 臨床心理学的な構えだけでは、子どもが話しにくい場面があります
- まずは「何の時間かわからない」という空気を一緒に扱うことが大切です
- ただただ面接構造を守るだけでなく、半歩踏み込んでやり取りをしながらも、構造や関係を維持するバランスが必要です
子どもとの面接では、専門家として正しく聴くこと以上に、「この人とは話してもよさそう」と感じられる関係を、対話の中で一緒に作っていくことが大切です。つまりカウンセリングのニーズや動機がなくその場にいる子供にカウンセリング的な立ち位置から関わることは、ある意味侵襲的な関わりと言ってもいいのかもしれません。本人に意識的なニーズがなくても周りがニーズを持っているところが
子どもは「相談したい人」として来ていないことがある
大人のカウンセリングでは、多くの場合、本人が何らかの困りごとを持ち、それを話すために来談します。
もちろん迷いや抵抗はありますが、それでも「ここは相談する場である」という前提がある程度共有されています。
一方、学校で出会う子どもは、そうとは限りません。
本人は相談したいと思っていない。何を話す時間なのかもよくわかっていない。先生や保護者が心配しているから来ている。
そういうことがよくあります。
そもそも臨床心理学が前提にしている相談への動機や、構造がない状態で始まってしまっていることを認識する必要があります。
この状態で、最初から臨床心理学的な面接の型をそのまま使うと、子どもにとっては少し不自然な時間になってしまうことがあります。
そんな時に子供は「なんか話さなきゃいけないのかな?」「どういう時間??」「何すればいいんだろう」みたいに感じている場合が多いかと思います。
丁寧に聴いているのに、なぜか場が重い。話が弾まない。沈黙が長い。子どもが早く終わらないかなという顔をしている。
こうしたときは、「自分の傾聴が足りない」と考えるだけではなく、「そもそもこの子にとって、この時間はどう見えているのか」と考える必要があります。
「何の時間かわからない」を言葉にする
子どもとの面接で大事なのは、そこにある空気を言葉にすることです。
たとえば、子どもが「別に来なくてもいいかなと思っていた」と言ったとします。
そのときに、真面目に「そうなんですね」と受け止めるだけでは、会話が広がらないことがあります。
もちろん、否定したり責めたりする必要はありません。
ただ、少しだけ場面にツッコミを入れるように、こんなふうに言葉にしてみることがあります。
- たしかに、何の時間なんだろうって思うよね
- 自分から話したいって言ったわけじゃないのに、急にここに来ることになった感じだよね
- 正直、僕もこの時間をどう使うのがいいか、一緒に考えたいと思っている
子どもがそれを口にする前に、その子が感じていそうな違和感を先に言葉にする。
それだけで、子どもにとっては「この人は、こちら側の感じをわかろうとしている」と感じられることがあります。
「そう、そこなんです」となった瞬間に、子どもの表情が動き、そこには小さなジョイニング(家族療法の関係づくりの技法)が成立している、協働的な構えに向かっていることになります。
これは単なる雑談ではありません。
その場にある緊張や違和感を扱う(状況にツッコミを入れる)ことで、関係の入り口を作っているのです。
臨床心理学的な構えを一度ゆるめる
スクールカウンセラー初任者ほど、ちゃんとしようとします。(ベテランがちゃんとしていないと言っているわけではありません)
自分のことを話しすぎないようにする。中立性を保とうとする。評価的にならないようにする。傾聴を大事にする。
これらはもちろん大切です。
ただし、子どもとの面談では、特に子どもが明確なニーズを持ってその場にいない時には、そういった専門性を持った関わりが、やりとりの硬さをうみ、関係作りの足を引っ張ってしまうことになります。
子どもからすると、目の前の大人が「カウンセラー」として座っているだけでは、話したい気持ちになりにくいことがあります。
(ニーズが明確で、相談に至る文脈がきちんと設定されて始まる場合は別です。小学校中学校だと導線作りが難しく、高校だとやり易い傾向があります。)
特に中学生くらいになると、管理されることや、特別扱いされることへの違和感を敏感に感じ取ることがあります。
だからこそ、ときには少しくだけた言い方や、その場へのツッコミが必要になります。
その場へのツッコミというのはつまり、
これは、専門性を捨てるということではありません。
むしろ、子どもが話せる関係を作るために、専門性を少し柔らかく使うということです。
雑談のようで、実は臨床的な面接になっている
授業を抜け出して保健室に来る子
たとえば、授業の途中でふらっと教室を抜けて、保健室に来る子がいたとします。
それを最初から「逃避」や「問題行動」として扱うと、子どもは警戒します。
でも、少し角度を変えて、次のように関わることがあります。
- 絶妙なタイミングで抜けてくるんだね
- なんか“今だ”って瞬間があるわけでしょ?
- 教室に残るのもしんどいけど、完全に帰るわけでもないんだね
これは問題を軽く扱うという意味ではありません。
「教室にはいられないけれど、なんとか学校内で居場所を見つけようとしている」という、その子なりのバランスや工夫を見ようとしていることを「認める」関わり、あなたの頑張りに気づいているよと伝える関わりです。
例えば
- この時間まで頑張って耐えてたんじゃない?
- 何日振りじゃん?
- ◯◯の時間は全然飛び出してこないんじゃない?
といったように、通常では「当たり前のこと」と流されてしまう、その子どもが「密かに頑張っていたこと」に言及することや、例外的にやれている部分があることに言及していくことは、子ども自身の健康さや適応的な努力に光をあて、自尊感情を育てていくことになります。
ただ許容する、傾聴するみたいなのが、臨床的な関わりと思われがちですが、一見素人っぽく見える雑談のような関わりの中に、リフレーミングや例外探し、リソースへの注目といった、エンパワメントの要素を薄く積み上げていくことこそが、学校臨床で子どもに関わる場合には必要な相談スタイルではないかなと思っています。
面接構造は外から押しつけるだけでは作れない
カウンセリングでは、面接の目的や枠組みが大切です。
ただ、子どもとの面接では、最初から構造が共有されていないことも多いです。
そのため、スクールカウンセラー側が一方的に「ここは相談の場です」と構造を提示しても、子どもには届かないことがあります。
むしろ、次のように、その場で一緒に作っていくことが大切です。
- 今日はこの時間、どう使えたらよさそう?
- 話す感じでもいいし、ちょっと雑談でもいいし、何か決めてもいい
- このまま話を聞く感じでいい?それとも別の使い方にする?
面接の中身は、最初から固定されているわけではありません。
話しているうちに、子どもが本当に話したいことが見えてくることもあります。
そのたびに、こちらが小さく確認しながら、合意を作っていく。
これが、学校現場での面接構造の作り方として大切になることがあります。
もちろん直接こう聞いても「わかんない」ということもあると思いますので、「せっかく時間があるんだから、あなたが好きなことや楽しいことについてい何かやる時間にしない?学校でできそうなことで何か好なことある?」「◯◯が得意って聞いてるよ、ここで週に一回でもそれやると元気が出て、他の時間に頑張れる!みたいな感じってある?」といったように少し補助線を引くように提案しても良いかと思います。
重要なのは子どもが選べること。子どもの選択が、相談の中で子どもの主体性を高めることに役立ちますし、それが今度は家庭や学級での変化につながっていきます。
自己開示は「自分の情報」ではなく「今ここでの感じ」を伝える
自己開示というと、自分のプライベートな情報を話すことだと思われがちです。
しかし、子どもとの関係づくりで大事なのは、必ずしも私生活を話すことではありません。
むしろ大切なのは、「今この場で自分がどう感じているか」を少し言葉にすることです。
- 正直、僕もこの時間をどうしたらいいか考えながら座っている
- さっきまで少しカウンセリングっぽくしすぎていたかもしれない
- もう少し普通に話してみてもいいかなと思っている
これは、子どもにとって大きな意味を持つことがあります。
大人が一方的に評価する立場ではなく、この場を一緒に作ろうとしている人として見えてくるからです。
自己開示は、たくさんすればよいわけではありません。
でも、必要な場面で、今ここにある自分の構えや迷いを少し出すことは、関係を柔らかくする助けになります。
初任者は「自分のテンションでできる形」を探せばいい
子どもとの面接で、明るく盛り上げられる人もいます。
一方で、もともと静かな雰囲気の人もいます。
大切なのは、誰かのやり方をそのまま真似することではありません。
自分のテンションでできる形を探すことです。
無理にテンションを上げすぎると、不自然になります。逆に、省エネになりすぎると、関係が動きにくくなることもあります。
だから、少しだけ言い方を柔らかくする。少しだけ状況や出来事にツッコミを入れる。少しだけ場面の違和感を言葉にする。
そのくらいからで十分です。
子どもとの関係づくりは、最初が一番エネルギーを使います。
でも、一度「この人とは話せるかもしれない」という土台ができて、なんとなくでも「ああこの土台の上だったら自由にできるのだな」というコンセンサスが子どもと取れると、その後の面接はお互い自由で生き生きしたものになっていくはずです。
チェックリスト
子どもとの面接が弾まないときは、次の視点を確認してみてください。
- 子どもは自分から相談したいと思って来ているか
- この時間が何の時間なのか、子どもに伝わっているか
- 臨床心理学的な構えが硬くなりすぎていないか
- 子どもが感じていそうな違和感を言葉にできているか
- 問題行動だけでなく、その子らしさやエネルギーを見ているか
- 面接の目的を、その場で一緒に作ろうとしているか
- 自分のテンションでできる関わり方になっているか
まとめ
スクールカウンセラー初任者にとって、子どもとの面接が弾まないことは大きな不安になります。
でも、それは必ずしも聞き方が悪いからではありません。
子どもが相談したいと思って来ていない場合、通常のカウンセリングの型だけでは、会話が動きにくいことがあります。
そのときに大切なのは、まずその場にある違和感を一緒に扱うことです。
「何の時間かわからないよね」「話したいと思って来たわけじゃないよね」「でも、せっかくならこの時間を少し使えるものにしたいね」
そうした言葉から、関係が少しずつ始まります。
スクールカウンセラーの仕事では、正しく見守るだけでなく、関係を作るために少し動くことも必要です。
子どもが安心して話せる関係は、最初からあるものではなく、その場のやり取りの中で少しずつ作られていくものなのだと思います。
■ よくある質問(FAQ)
Q. スクールカウンセラー初任者は、子どもと何を話したらいいですか?
A. まずは、無理に深い話を引き出そうとしなくても大丈夫です。子どもが「なぜここにいるのか」「この時間をどう感じているのか」「あなたはどんなことが好きなの?」を一緒に言葉にするところから始めると、関係が作りやすくなることがあります。
Q. 子どもが全然話さないときはどうしたらいいですか?
A. 沈黙をすぐに埋めようとするより、「急に話せと言われても困るよね」「何を話す時間なのかよくわからない感じもあるよね」と、その場の空気を言葉にしてみる方法があります。話さないこと自体を責めずに、関係の入口を探すことが大切です。
Q. スクールカウンセラーは子どもに自己開示してもいいですか?
A. プライベートな情報をたくさん話す必要はありません。ただ、「この時間をどう使うといいか一緒に考えたい」「少しカウンセリングっぽくなりすぎていたかもしれない」など、今ここでの自分の感じを少し伝えることが、関係づくりに役立つことがあります。場合によっては「実はカウンセラーだから秘密が沢山あるんだけど、誰にも秘密にしてね」と少しワクワクする建て付けをした上で、どーでも良いプライベートな趣味の話や失敗談などををするのも子どもとしては新鮮に感じることもあります。(面白がらせることが目的でないことに注意をしなければなりません)
Q. 子どもとの雑談はカウンセリングとして意味がありますか?
A. 意味があります。特に学校現場では、雑談のようなやり取りの中で、子どもの興味、感情、困りごと、その子らしさが見えてくることがあります。大切なのは、ただ時間をつぶす雑談ではなく、関係を作りながら子どもを理解していく雑談にすることです。そこには必ずアセスメントがあるのですが、子どもの強みや良さ、密かな頑張りに焦点を当てて行くと、アセスメントとエンパワメントが同時に起こるのではないかと思っています。ぜひやってみて下さい。
Q. 子どもの問題行動を面接でどう扱ったらいいですか?
A. いきなり問題として指摘すると、子どもは身構えやすくなります。まずは、「問題行動は子どもの(非適応的な)対処行動である、そこには葛藤と子どもなりの必然性がある」と捉えて、その行動の中にある気持ちやエネルギーを見ようとすることが大切です。その上で、必要な安全面や現実的な課題を、関係を保ちながら一緒に考えていくとよいと思います。
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子どもとの面接が弾まない。学校の中でどう動けばいいかわからない。担任の先生や保護者との関係づくりに迷う。
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今回の内容は第4講の「子ども面接と保護者面接」で詳しくお話しさせていただきます。

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