【本を読む】ミルトン・エリクソン入門 第一章1-1 自然的志向
ミルトン・エリクソン入門を読む
WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)という本があります。
この本は、ブリーフセラピーの源流になったと言われる天才的な精神科医ミルトン・H・エリクソンのアプローチについて、著者の目線からまとめられており、僕自身の臨床の中で一番大きな影響を受けている本の一つです。
自分の臨床を見直すという意味でも、ミルトン・エリクソンについて多くの方に知っていただくという意味でも、この本に書かれていることを紹介しつつ、自分なりにコメントを書いて行こうかと思います。
関心の在る方はお付き合いください。
エリクソン臨床の特徴:基本原理その1 自然的志向
WHオハンロン著「ミルトン・エリクソン入門」(金剛出版)ではエリクソンのアプローチの基本原理として次の5つが挙げられています。
自然的、間接的及び指示的、反応性、ユーティライゼーション(利用)、現在及び未来志向
今回はこのうちの自然的志向(The Naturalistic Orientation)について解説いたします。
自然的志向(The Naturalistic Orientation)
人間は本来、困難を克服し、問題を解決し、トランスに入り、全てのトランス現象を体験する能力を自らの中に持っている、とエリクソンは信じていた。彼のアプローチは、こうした本来持っている能力を引き出すことにあった。
出典:ミルトン・エリクソン入門 第一章 P17
相談に来た相手に対して「もともと良いものを持っている」と考えてカウンセリングをスタートするのと「何かが欠けている、間違っている、病だ」と考えてスタートするのとでは、その過程や結果に大きな違いをもたらすことは間違いないでしょう。
エリクソンによれば、治療者の仕事は、それまでは問題解決に用いられることのなかった患者の能力や資質を、彼らが使うことの出来るように、環境を作ることである。
もともと備わっている正常な行動や成長を引き出すだけでよいということ、相手を変えるのではなく、環境を整えることで相手と環境との相互作用が起こって良い方向に変わっていく、ということでしょう。
カウンセリングに来られる方は、自分のことについてでも、もしくは問題(に見えるもの)を抱えた自分の家族や配偶者についてでも、何かの困り事や解決したい課題を持って来られているわけです。
あまりにも重い困りごとについて話されるのを傾聴していると、ついその抱えてる出来事の大きさに、相談を受けているカウンセラーが圧倒されてしまいそうになることもあるかと思います。
相談に来た方の辛さや苦しさに共感しようとすればするほど、カウンセラー自身も不安になってしまうこともあるかもしれません。
経験やトレーニングが十分でない方は、その不安が実は自分のものだと気づかずに、相手を変えようと場当たり的なアドバイスを始めてしまうこともあるでしょうし、ただただ圧倒され、受け身になってしまうこともあるかもしれません。
無言で信じる
ちょっと、スピリチュアルな人っぽいい言い方に聞こえるかもしれませんが、その場で語られていないけど「その人の中に在るよきものを信じる」ということが大事なのではないかなと思います。
心がけるとか、信条的な意味ではなく、実用的に具体的に、良きものが在るという前提で、息を殺してその在処をじっくりと探しながら話を聞くということです。
そして、見つけたからと言ってかんたんに口に出してはいけません。
鬼の首を取ったように「あなたのいいとこ見つけました!」をやってしまうと、大抵の場合は相手から「自分のことが理解されていない」「苦しさをなかったコトにされてしまった」と思われるはずです。
重さに耐えきれなくなって、「良いとこ探し」に逃げ道を探すというのもまた間違いなんです。
辛さや苦しさに共感することと、まだ見ぬ良きものを信じることは決して両立しないわけではありません。
これが出来るようになることが、ミルトン・エリクソン入門を読み解くこと、カウンセラーとして自信を持って働けるようになることの第一歩かと思います。
↓解説動画を作ってみました。
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