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【考えていること】作り手の視点と観客の視点

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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サムネイルは島本和彦先生の逆境ナインからです。

作り手の視点と観客の視点

ここ数年、youtubeで岡田斗司夫さんや山田玲司さん、最近は島本和彦さんのなどの漫画やアニメ、映画などの解説(?)をよくラジオがわりに聞いているのですが、よくこれだけ深く作品のことを深く読み解けるなあと、いつも驚きつつも「自分はなんて表面的に見ていたんだ」とショックを感じています。

で、バカな話なのですが「自分も仕事でなら、ある程度深いところまで踏み込んで理解して考えていけるのに、なぜ作品を見ても深く読み解けないのだろう??」とか考えるわけですよ。いやもちろん分をわきまえない発想であるのはわかっている前提で、そう考えるわけです。

一つは、彼らは作り手の視点で作品を見ているというところだと思うんです。一方で僕は楽しませてもらおうと思って観ているというところの差があるんだなあと。

以前ナルトの作者の岸本先生だったか(定かではない)、漫画家になるための修行法みたいな文章を書いていて。

「とにかく映画を何度も観て、画角の意味とかカットの意味とか作り手の立場に立って徹底的に分析する」と。(うろ覚えですいません)

「でもこれをやると二度と観客の立場で楽しく映画が見れなくなるから覚悟して」みたいなことが書いてあって怖!と思った記憶があって。

つまりクリエイターは「自分だったらどうするか」と言う視点で、また作り手は何を意図してこのセリフを入れたのか、この場面を設定したのか?というところを常に考えながら、(だってカットしても良いのに、残してあるんだから意味があるに決まってるじゃないですかね?)観ているということですよね。

その一言の意図を考える

で、ある意味同じことを僕らは事例検討やスーパービジョンというトレーニングの中でやっているわけです。

相談に来た方が、何を考えて何を訴えているか?も考えるのですが、指導やトレーニングの場では、それ以上にカウンセラーが何を意図して、何に引き摺られて言葉を発して、それがどんな効果を生んでいるのか?わざわざこの情報書くんだから何か意味があるはずだよねと。

なので「この一言の意図はなんだろう?」って考えて仮説立てながら話を聞くことになるのですが、そうすると、その一言の文字情報、言語情報を超えた、関係性や相互作用やその人のパーソナリティーを含めた情報を意図的に扱うってことになります。

単純に扱う情報量が飛躍的に増えるんですよね。

なぜその一言がここにあるのか「意図を考える」というのはとても考える力がいることなんです。

だからこそ、事例を読むたびにこういった体験を積み上げていくと、情報を扱う筋道が身に付くし、視座が深くなっていかざるを得ないんです。

そこまで出来て、さらにコンスタントに妥当な仮説や理解に辿り着けると、普通の人の会話とは違う「専門家としての会話や見立て」が出来るようになってくる。

ちなみに「妥当な仮説や理解」というのは「唯一の真実」などではなく、それを聞いた当事者がはたと膝を打ったり、関連して連想がどんどん生まれてくる、何か心に引っ掛かる、その「妥当な仮説や理解」を足場に、もう一段階深く広く探索に出かけられる、対話が生まれる、くらいのものとして考えてます。

「専門家としての会話や見立て」が出来るというのは、いわば専門家としての基本性能がちゃんと身に付くということ。

これに普通は10年くらいかかるという話で、その基本性能の上にそこにそれぞれの職域のニーズや自分の志向に合った技法を学んでいくことになります。

自分ごととして深くコミットする

作品であっても臨床であっても「どこまで自分を入れ込んで、そこで起こっていること、その人の内側で起こっていることにコミットするのか?」という必死さと深刻さが、より多くの経験と、視座の深さをもたらすのではないかと思います。

「作り手の視点で考える」というのも「その一言の意図を考える」というのも、目の前で起こっていること、話されていることについて、自分ごととして深くコミットするための一つの方法なのだと思います。

 

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おまけ

心理療法について、深いのがいいか?浅いのは悪いのか?みたいな話がXで話題となっていたことがありました。

「深いー浅い」に加えて「役に立つー役に立たない」の軸で考えてみてもいいのかなと思っていまして、「浅くて役に立つ」が一番、ニーズが広くて多くの方に役に立つ心理療法なのではと思っています。

でもある程度の深さなしに相談の仕事をすることだって不可能なわけです。(深く見えるかどうかはまた別の話)

深くて役に立つ+浅くて役に立つのどちらも世の中には必要ですよね。

「原理は単順を、構造は複雑を極め 人は最も人らしく」

一見浅く、構造は単純に見えるのに、実はとても精緻な作り込みがされており、実際は機能性が高い、というところを目指したいのです。

https://x.com/stwojapan/status/1542484996580966400?s=46&t=p3VSuxXEGJx3UpwPhtvw1A

士郎正宗「アップルシード(1)」より

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