カウンセリングで助言はしてはいけない? 臨床心理士が考える「機能する助言」の技術
目次
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- カウンセリングにおける助言は、必ずしも避けるべきものではありません。特に学校臨床では、具体的な助言を求められる場面が多くあります。
- 助言を機能させるためには、その手前にある受容・共感・傾聴、そして「理解を伝える」技術が重要になります。
- 臨床的な助言には、目標設定、実行可能なスモールステップ、評価と修正までを含めた協働的なプロセスが必要になることがあります。
- 助言の上手さは、正解を伝えることだけではありません。クライエントとの関係を大切にし、変化を見守りながら、提案と本人の主体性のバランスを調整することが重要です。
臨床的な助言とは、正しい方法を一方的に教えることではなく、クライエントとの関係を土台に、本人の望む変化を一緒に考え、実践と評価を重ねていくプロセスなのだと思います。
カウンセリングで助言をしてはいけないと言われていた時代
大学に通っていた頃、カウンセリングの授業では、それこそ「助言は悪」くらいの勢いで教えられていたように思います。
もちろん、これにはそれなりの意味があったと思います。クライエントの話を十分に聴かず、支援者の価値観で「こうした方がいい」と伝えてしまえば、それはカウンセリングというより、単なるお説教になってしまうかもしれません。だからこそ、まずは受容・共感・傾聴を学ぶことが大切だと教えられてきたのでしょう。
ただ、実際に臨床を続けていると、助言についての考え方も少しずつ変わってきました。
カウンセリングが特別なものではなく、一般の人たちが利用するサービスとして広がっていく中で、心理支援に求められるものも変化しているように感じます。じっくり話を聴いてもらいたいというニーズもあれば、具体的にどうすればよいのか、一緒に考えてほしいというニーズもあります。
特にスクールカウンセラーをやっていると、僕の実感としては、相談の6〜7割くらいは何らかの具体的な助言を求められているように感じます。
「子どもにどう声をかけたらいいでしょうか?」「学校としては、どのように対応したらいいでしょうか?」「家では何をしたらいいでしょうか?」といった相談です。
こうした相談に対して、「そうなんですね。大変ですね」と共感するだけでは、相談者が求めている役割を十分に果たせないこともあります。
そう考えると、助言というのは、心理臨床において非常に重要なスキルなのではないかと思うわけです。
助言の技術を教えることは、実はかなり難しい
ところが、この助言のスキルを体系的に教える機会は、意外と少ないのではないでしょうか。
大学や大学院では、まず受容・共感・傾聴といったカウンセリングの基本を学びます。これらは心理臨床の土台になるものですし、実際にできるようになるまでには相当なトレーニングが必要です。
僕自身、大学院で臨床心理士や公認心理師を目指す学生のトレーニングに関わっていますが、限られた授業時間の中で、基本的な応答の技術を身につけるだけでもなかなか大変です。
その先にある、クライエントの状況を見立て、適切な助言を組み立て、実際に機能するように伝えるところまで教えるのは、かなり難しいことだと感じています。
そもそも、臨床心理学的な助言が機能するためには、その手前にある受容や共感、傾聴が重要になります。
例えば、保護者から「子どもが学校に行かないのですが、どうしたらいいでしょうか」と相談されたとします。
そこで、いきなり「まずは無理に登校させず、家で安心して過ごせるようにしてください」と助言したとしても、それが機能するとは限りません。
保護者がどんなことに困っているのか、これまでどんな努力をしてきたのか、何を心配しているのか、どんな状況なら少し安心できるのか。そうしたことを理解しないまま伝えた助言は、どれほど一般論として妥当であっても、相手にとって役に立たないことがあります。
場合によっては、「そんなことはもうやっています」「それができないから相談しているんです」となってしまうかもしれません。
つまり、助言するためには、まず相手を理解する必要があるわけです。
助言の前に必要な「理解を伝える」という技術
僕は、助言のスキルを考えるとき、その手前にある「理解を伝える」という技術が非常に重要だと思っています。
これは単に、相手の言葉を繰り返したり、気持ちに共感したりすることではありません。相手の置かれている状況や、そこで生じている葛藤、これまでの努力、本人が大切にしていることなどを理解し、その理解を相手に伝えていくことです。
例えば、不登校の子どもに対して、保護者が毎朝「学校に行かないの?」と声をかけてしまうという相談があったとします。
そこで「登校刺激は控えましょう」と助言することもできますが、その前に、次のような理解を伝えることができるかもしれません。
「お子さんがつらそうなのはわかっているけれど、このまま学校に行けなくなってしまうのも心配なんですよね。だから、声をかけない方がいいのかもしれないと思いつつ、何も言わずにいることにも不安があるんですね」
もちろん、これは実際に保護者の話を聴いて、そうした理解が妥当だと考えられた場合の話です。
こうしたやり取りを通して、「この人は自分の状況をわかってくれている」と感じてもらえることがあります。そして、そこから初めて「では、どんな声のかけ方なら、お母さんもお子さんも少し楽になりそうでしょうか」と、一緒に考えることができるようになる。
助言の内容そのものだけではなく、助言を受け取れる関係や文脈をつくることも、臨床的な技術の一部なのだと思います。
助言を機能させようとすると、臨床のプロセスそのものになる
では、実際に助言をしようとすると、どんなことが必要になるのでしょうか。
クライエントの望む方向を明確にする
まず、クライエントが何を望んでいるのかを理解する必要があります。「どうしたらいいですか?」と尋ねられたからといって、本人が何を目指しているのかが明確とは限りません。
例えば「子どもを学校に行かせたい」という相談であっても、もう少し話を聴いていくと、「子どもが元気になってほしい」「将来困らないようにしてあげたい」「親子で毎朝けんかするのをやめたい」など、さまざまな願いが出てくることがあります。
そうした願いを理解しながら、何を目標にするのかを一緒に考えていきます。支援者がよいと思う目標を設定するのではなく、クライエントが望んでいる方向を明確にしていくことが大切です。
無理なく実行できるスモールステップをつくる
次に、その目標に向けて、実際に何ができそうなのかを考えます。
どれほどよい方法であっても、本人にとって実行できないものであれば、助言としては機能しません。そこで、現在の生活や本人の能力、周囲の環境などを踏まえながら、無理なく取り組めるスモールステップをつくっていきます。
このとき大切なのは、単に課題を小さくすることではありません。本人が「これならできそうだ」と思えることや、その方法に納得していることも重要です。
評価の基準を共有し、結果を一緒に振り返る
そして、もう一つ大切なのが評価です。
実際にやってみて、何が変わったのか。どんなところがうまくいったのか。反対に、どんなところが難しかったのか。こうしたことを、クライエントと一緒に確認していく必要があります。
また、何をもって「うまくいった」と考えるのかについても、あらかじめ共有しておくと役に立ちます。例えば、子どもが登校できたかどうかだけではなく、朝の親子の衝突が減ったか、本人が少し安心して過ごせるようになったか、といった変化も評価の対象になるかもしれません。
そう考えると、臨床的な助言には、次のようなプロセスが含まれていることになります。
- クライエントの状況や困りごとを理解する
- その理解を伝え、共有する
- クライエントの望む方向や目標を明確にする
- 実行可能な方法やスモールステップを一緒に考える
- 何をもって変化とするのか、評価の基準を共有する
- 実際に試してみて、その結果を一緒に振り返る
- 必要に応じて、方法や目標を修正する
こうして並べてみると、もう単なる助言ではないですよね。
助言をちゃんとやろうとすると、いつの間にか臨床のプロセスそのものになってしまうわけです。
助言とコンサルテーション、そしてソーシャルワーク
心理臨床の現場では、こうした働きかけを「助言」というよりも、「コンサルテーション」と呼ぶことも多いと思います。
特に学校臨床では、教師や保護者に対して、具体的な対応方法を一緒に考えることが重要な仕事になります。ただし、コンサルテーションは単に助言を丁寧に行うことと同じではありません。相談を受ける人の専門性や役割を尊重しながら、問題の理解や対応方法を協働で検討していくという特徴があります。
先日、サービス管理責任者の基礎研修を受ける機会がありました。
そこで驚いたのが、普段自分が臨床の中でやっていることと、非常によく似たプロセスが扱われていたことです。
本人のニーズを把握し、目標を設定し、具体的な支援計画を立て、実施して、その結果を評価し、必要に応じて修正していく。
もちろん、サービス管理責任者の仕事には、制度上の責任や多職種との連携、サービス提供の管理など、心理臨床とは異なる役割があります。それでも、支援を組み立てる基本的な考え方には、かなり共通する部分があると感じました。
僕が普段、心理臨床の中でやっていることを、もう少しサービスとして明確に構造化し、組織的に実施するような印象だったのです。
そこで思ったのが、僕の考える「助言」をきっちりやっていくと、ソーシャルワークの実践とずいぶん重なってくるのだなということでした。
もちろん、心理療法とソーシャルワークは同じものではありませんし、両者にはそれぞれ固有の専門性があります。ただ、クライエントの望む生活を実現するために、本人の強みや周囲の資源を活用し、具体的な行動や環境の変化につなげていくという点では、非常に近いところがあるように思います。
ソリューション・フォーカスト・アプローチとのつながり
考えてみれば、僕が臨床の中心に置いているソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)も、ソーシャルワークと深い関係のあるアプローチです。
SFAは、スティーブ・ド・シェイザーやインスー・キム・バーグらによって、ブリーフ・ファミリー・セラピー・センターで発展してきました。インスー・キム・バーグ自身もソーシャルワークの専門的背景を持っています。
SFAでは、問題の原因を詳しく分析することだけに時間を使うのではなく、クライエントがどんな未来を望んでいるのか、すでにうまくいっていることは何か、そこからどんな小さな変化をつくれるのか、といったことを大切にします。
そう考えると、僕が助言について考えるときに、目標設定やスモールステップ、評価の共有といったことを重視するのも、自然なことなのかもしれません。
ただし、SFAはセラピストが解決策を一方的に教えるアプローチではありません。むしろ、クライエント自身の知識や経験、強みを活用しながら、解決に向かう方法を協働で見つけていくことを重視します。
だからこそ、助言をする場合にも、支援者が正解を与えるというより、クライエントが自分に合った方法を選び、試し、評価できるようにしていくことが大切なのだと思います。
助言の上手さとは、正しいことを言える能力ではない
こうして考えていくと、助言の上手さというのは、単に知識が豊富で、正しい対応方法を知っていることではないように思います。
もちろん、具体的な方法を知っていることは大切です。不登校への対応、発達特性に応じた環境調整、親子のコミュニケーション、学校での支援方法など、専門的な知識がなければ提案できないこともたくさんあります。
しかし、それだけでは十分ではありません。
同じ助言であっても、誰に、どのタイミングで、どんな言葉で、どのような関係の中で伝えるかによって、その後の展開は大きく変わります。また、どれほど適切だと思える助言であっても、実際に試してみなければ、その人にとって役に立つかどうかはわかりません。
そう考えると、助言は「正解を伝えること」ではなく、クライエントと一緒に、役に立つ方法を見つけていくプロセスとして捉えた方がよいのかもしれません。
そのためには、受容や共感、傾聴が必要ですし、見立ての力も必要です。さらに、目標設定、介入方法の選択、実行可能性の判断、評価と修正といった技術も必要になります。
助言をすること自体は簡単です。でも、助言を機能させることは、決して簡単ではありません。
臨床的な助言を振り返るチェックリスト
自分の助言が、単なる情報提供にとどまっていないかを振り返るために、次のような点を確認してみるとよいかもしれません。
- □ 助言する前に、相手の状況やこれまでの努力を十分に理解しているか
- □ 自分の理解を相手に伝え、その理解が合っているか確認しているか
- □ クライエントが本当に望んでいる変化を共有できているか
- □ 提案する方法は、本人や周囲の人にとって実行可能か
- □ 支援者の考えを押しつけず、本人が選択できる余地を残しているか
- □ 何をもって変化とするのか、評価の基準を共有しているか
- □ 助言した後の結果を確認し、必要に応じて修正しているか
すべてを毎回確認しなければならないということではありません。短時間の相談や緊急性の高い場面では、まず必要な情報を伝えることが優先される場合もあります。ただ、継続的な心理支援においては、こうした視点を持っていることで、助言の質を高められるのではないかと思います。
まとめ|助言を考えると、心理臨床の幅が広がる
かつては「助言をしないこと」が、カウンセリングの専門性を守るための一つの教え方だったのかもしれません。
ただ、現在の心理臨床では、助言を求められる場面がたくさんあります。特にスクールカウンセリングのように、本人だけでなく、保護者や教師、学校組織などに働きかける仕事では、具体的な提案やコンサルテーションの技術は欠かせません。
だからといって、受容や共感、傾聴を飛ばして、助言の技術だけを身につければよいという話でもありません。むしろ、その土台があるからこそ、助言が機能しやすくなるのだと思います。
そして、助言をきちんと機能させようとすれば、クライエントの理解から始まり、目標の共有、具体的な介入、評価と修正まで、臨床のさまざまな技術が必要になってきます。
そういう意味では、助言のスキルを磨くことは、心理臨床全体の技術を磨くことにもつながるのでしょう。
大学院の授業で、そこまで教えるのはなかなか難しいことだと思います。それでも、基本的な傾聴のトレーニングの先に、こうした実践的な技術を学ぶ機会がもっとあってもよいのではないかと感じています。
助言について真剣に考えていくと、心理療法だけでなく、コンサルテーションやソーシャルワークとの接点も見えてきます。
そうやって臨床の幅が広がっていくのは、なかなか面白いことだなと思っています。
■ よくある質問(FAQ)
Q. スクールカウンセラーは、保護者に具体的な助言をするべきですか?
A. 保護者が具体的な対応を求めている場合には、助言が役に立つことがあります。ただし、すぐに方法を伝えるのではなく、まず何に困っていて、これまでどのような対応をしてきたのかを理解することが大切です。そのうえで、保護者が納得して取り組める方法を一緒に考えていくことが、心理臨床的な助言につながります。
Q. 不登校の子どもには、学校に行くように助言した方がいいですか?
A. 基本的には「助言で行けるようになるくらいならすでに行っとるわアホめ」と思われるのが関の山ですが、不登校の背景や本人の状態によって対応は異なります。登校を促すことが役に立つ場合もありますが、促す手前でどれだけアセスメントができているか?促しで行けるところまで子供の意欲やエネルギー状況が整っているか?ってところがきっちり見えてる時と、「促さないこと」が悪循環を生み出しているのがはっきりしている時だけです。強い不安や疲弊があるときには、かえって負担になることもありますし、多くの場合はその状況でしょう。まずは本人が何に困っているのか、どのような状態を望んでいるのかを理解し、家庭や学校との関係を調整しながら、無理のない目標を設定し、実行できるスモールステップを同意をとりつつ具体的に考えていくことが重要です。その際に本人の主体性が活きる形を作らないとうまくいかないことが多いです。
Q. 子どもへの対応について、親はカウンセラーの助言どおりにした方がいいですか?
A. カウンセラーの助言は、一つの専門的な提案として考えるとよいと思います。家庭の状況や子どもの特性によって、実際に取り組めることは異なります。無理に助言どおりにするのではなく、できそうな方法を一緒に選び、試してみた結果を振り返る、カウンセラーと一緒に評価しながら進めていくことが大切です。
言うだけ言ってうまくいかなかったら「残念でしたね」と言うようなカウンセラー、評価に対して子供や親の責任にして責任逃れをするような方の助言は聞かぬが吉です。
Q. カウンセラーが助言しないと、相談者は困ってしまいませんか?
A. 具体的な対応方法を知りたくて相談している方にとっては、助言が得られないことが物足りなく感じられる場合もあると思います。一方で、十分に話を聴いてもらい、自分の考えを整理すること自体が役に立つ場合もあります。大切なのは、支援者が助言するかしないかを一方的に決めるのではなく、相談者が何を求めているのかを確認しながら進めることです。
Q. カウンセラーに頼りすぎてしまうことは問題ですか?
A. 困ったときに専門家を頼ること自体は、問題ではありません。ただし、何かを決めるたびにカウンセラーの判断が必要になると、本人が自分で選ぶ機会が少なくなることもあります。助言をする際にも、本人の考えや判断を尊重し、自分で試したり評価したりできるように支えることが大切です。常に相談者、そして関わる家族や支援者の主体性というところに戻って考えてみることが重要です。
カウンセリングの技術を一緒に学びたい方へ
今回取り上げたような、クライエントの理解、見立て、目標設定、介入、評価といった技術は、知識として学ぶだけでなく、実際の事例を通して考え、繰り返し練習することで深まっていくものだと思います。
かけい臨床心理相談室では、臨床心理士・公認心理師・スクールカウンセラーなど、対人支援に携わる専門職の方に向けて、ウェビナー研修や事例検討、スーパービジョンを行っています。
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「知っていること」を「臨床で使えること」に変えていきたい方や、一人で考えるだけでは難しい事例について、ほかの専門家と一緒に考えたい方に参加していただけたらと思います。
ウェビナー研修
かけい臨床心理相談室では、カウンセリングの基礎技術から、ブリーフセラピー、学校臨床、家族療法などをテーマにしたウェビナー研修も行っています。
受容・共感・傾聴といった基本的な技術だけでなく、見立て、理解の伝え方、助言や介入の組み立て方など、実際の臨床で必要になる技術についても、一緒に考えていきたいと思っています。
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