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スクールカウンセラーの助言を現場で役立つものにするには?学校理解と協働の視点

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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■ 結論

  • 心理学的に妥当な助言でも、学校の状況やこれまでの取り組みに合わなければ、実行につながりにくいことがあります。
  • 助言の前に、教師や保護者が何を考え、何を試し、どこで困っているのかを聞き、共通理解を積み重ねることが大切です。
  • 子どもへの対応を提案するときは、支える大人の努力や工夫にも目を向け、力を発揮しやすくなる伝え方を考えます。
  • 関係を整え、見守り方と具体的な働きかけのバランスを相談しながら、実行できる小さな一歩を一緒に考えていきます。

現場で役立つ助言は、相手の専門性を尊重する関係の中で、見守りと働きかけのバランスを確かめ、共に取り組める方法を探すことから生まれます。

「それで、具体的に私は何をすればいいですか?」

話は丁寧に聞いた。子どもの状態について、自分なりの理解も伝えた。それでも、先生や保護者から「それで、具体的に私は何をすればいいですか?」と聞かれ、言葉に詰まってしまう。スクールカウンセラー(SC)として、そのような経験をした方もいるのではないでしょうか。

僕自身、病院勤務からSCの仕事に移ったとき、この問題にかなり苦労しました。病院では治療の構造を整え、精神分析的な心理療法を中心に仕事をしていたので、学校でも「まず本人に会って、面接ができれば」と考えていました。ところが、そもそも支援を必要とする人に直接会うところまで、なかなか行き着かない。その手前に、教師や保護者との相談、具体的な対応の検討、支援の方向性の調整など、取り組む必要のあることがたくさんありました。

当時は、子どもの状態について力動的な理解を伝えることはできても、それを学校で実行できる対応につなげることが十分にできませんでした。理解することの大切さは学んできたけれど、その理解をコンサルテーションにどう生かすかは、改めて学ぶ必要があったんです。この記事では、そうした経験と、臨床心理学超基礎講座第5回で扱った内容をもとに、現場で役立つ助言について整理してみます。

心理学的に正しい助言が、学校では機能しないことがある

例えば、「本人の気持ちを受け止めることが大切です」という助言は、理屈としてはもっともです。ただ、先生がこれまで何を受け止めようとし、どのように関わり、どこで難しさを感じているのかを知らなければ、その言葉だけでは次の対応が見えてきません。すでに取り組んできた先生には、「まだ受け止め方が足りないと言われた」と伝わることもあるでしょう。

心理学の専門性に基づくケース理解は重要です。しかし、それを助言として口にする前に、「この学校では、その子をどのように理解しているのだろう」「今できていることや、成長に役立っていることは何だろう」「関わっている先生は、どんな気持ちで取り組んでいるのだろう」と関心を持つ必要があります。学校の理解を確かめることは、心理学的な見立てを現場に合う形にしていくためにも大切です。

学校では、心のケアに加えて、児童生徒の課題解決や成長をどう支えるかという目標があります。助言も、先生方が何を目指しているか、実際にどのような関わりができるかを踏まえて考える必要があります。「こうすることが望ましい」という理解を、「この学校で、今、どんな形なら取り組めるか」まで具体化していくことが求められます。

助言を急ぐ前に、こちらの理解を伝える

助言がうまくいかない理由の一つは、相手の状況を十分に理解する前に、対応策を思いついてしまうことです。すでに試してうまくいかなかった方法や、事情があって実行できない方法を提案すると、「こちらの話をわかってもらえていない」という感覚につながります。役に立とうと急ぐほど、これまでの取り組みを聞く時間が短くなることもあります。

そこで大切になるのが、「ここまでのお話を、僕はこう理解しました」と伝え、確かめることです。相手が何を大切にしているのか、どこまで取り組めていて、何が難しいのかを整理し、「この理解で合っていますか?」と確認します。そのやり取りを通して、こちらの見立ても修正され、共通理解が少しずつ積み重なっていきます。

「無知の姿勢」という言葉がありますが、専門知識を使わずに関わるという意味ではありません。心理学の知識は持っていても、その先生が経験してきたことや、その学校で起きていることについては、まだ知らない部分があります。その前提に立って教えてもらうことが、専門性を役立てるための土台になります。

助言が、これまでの対応への否定として伝わること

「こうした方がいいですよ」という言葉には、今の対応を変えてほしいという意味が含まれます。そのため、伝え方や関係性によっては、「これまでの対応が間違っていた」「あなたの関わり方が足りない」と受け取られることがあります。助言が必ず否定になるわけではありませんが、相手にどのような意味で届くかには目を向けておきたいところです。

特に、教師や保護者がすでに精いっぱい取り組んでいるとき、新しい対応を追加するだけでは、負担が増えてしまいます。何を試してきたのか、その中で何が役立っているのか、どのような苦労があるのかを理解することが必要です。これまでの取り組みを十分に聞くことは、相手への敬意を伝えるとともに、次の対応を考えるための情報にもなります。

支援者側にも、「何か助言しなければ」「この対応は正した方がいい」という気持ちが生じます。その気持ちが強くなると、相手の話を理解するより、修正したいところに注意が向きやすくなります。自分の焦りや力みも観察し、すぐに答えを出さず、もう少し理解を深めるための手がかりにしていくことが大切だと思います。

子どもを支える大人が、力を発揮できる助言へ

助言では、児童生徒だけでなく、支える教師や保護者が力を発揮しやすくなることも考えたいところです。ここでいうエンパワメントは、単に相手を褒めることではありません。すでに役立っている関わりや、相手が持っている経験、工夫を具体的に見つけ、それを次の支援につなげることです。

例えば、校門まで来ても教室に入れない子について、教室に入るための工夫ばかり考えていると、校門まで来られていることが見えにくくなります。講座で扱った事例では、本人がそこまで来るためにしている努力に目を向け、「よく来たね」と、すでに達成していることを認める声かけを提案しました。できていることに目を向け直すことで、関わり方の選択肢が生まれる場合があります。

先生や保護者についても同様です。子どもとのつながりを保てていること、比較的落ち着いてやり取りできる場面があることなどを、一緒に確かめます。「これまでの取り組みの中に、使えるものがある」と感じられることは、次の一歩を考える支えになります。相談者の苦労を理解することと、子どもの安全や利益を大切にすることを、両方含めて考えていきます。

「どうなってほしいか」を共有し、課題を小さく分ける

僕がブリーフセラピーを学んで助けられたのは、具体的な質問や対応の方法に加えて、支援の目標を一緒に考える視点を持てたことでした。「問題をどうなくすか」だけで話を進めると、できていないことに注意が集まりやすくなります。そこで、「どうなってくると、今より少しよさそうですか?」と、望ましい状態を具体的にしていきます。

例えば、「学年末には、その子とどんな関係でいられたらいいですか?」と尋ねると、先生自身の願いや教育の目標にもつながります。そこから、今すでに近づいている部分や、比較的うまく関われている場面を探していきます。先生の経験や工夫も、支援に使える資源として見えてきます。

「元気になってほしい」「学校に来てほしい」といった大きな目標も、その子の生活の中で何が変わることなのかを具体的にする必要があります。朝の親子のやり取りなのか、友人への不安なのか、勉強へのプレッシャーなのか。場面や課題を分けて考えることで、誰がどこに関われるか、何から取り組めそうかを相談しやすくなります。

見守りと働きかけのバランスを、一緒に確かめる

「見守りましょう」という助言も、それだけでは具体的な対応がわかりにくいことがあります。何について本人のペースを尊重するのか、どのようなときには声をかけるのか、今続けている関わりをどうするのか。見守りの意味を共有できているか、確認する必要があります。

共通理解ができたら、実行できる小さな対応を考え、試した結果を確かめていきます。本人にどのような変化があったかに加えて、先生や保護者にとって続けられる方法だったかも大切です。少しよい変化があれば何が役立ったのかを確認し、変化がなければ状況の理解や方法を見直します。

助言を受け入れたかどうかだけで相手を評価せず、提案した側も結果から学ぶことが必要です。うまくいかなかったことも相談できる関係があると、対応を調整しやすくなります。協働は、日頃から親しくしておくことに加えて、理解や目標、実行できる方法を確かめ合うやり取りの中で育っていくのだと思います。

助言をする前に確認したいこと

教師や保護者に助言をするとき、次の点を振り返ってみると、伝え方や提案の内容を整理しやすくなります。すべてを一度に確認する必要はありませんが、助言が届きにくいと感じたときの手がかりになると思います。

  • 相手がこれまで試してきたことと、その結果を聞いているか。
  • 相手の願い、苦労、今役立っている関わりを理解しているか。
  • こちらの理解を伝え、相手と確かめ合っているか。
  • 学校や家庭の状況に合い、実行できる小さな提案になっているか。
  • 見守り方と働きかけのバランスを、具体的に共有しているか。
  • 試した後の変化や負担を、一緒に確認できるか。

まとめ:傾聴も助言も、協働の中で生かしていく

SCの助言は、心理学的なケース理解と、学校での実際の取り組みが結びついたときに役立つものになります。そのためには、教師や保護者の話を聞き、これまでの対応と願いを理解し、こちらの理解を伝えて確かめることが必要です。その土台の上で、すでに役立っていることを見つけ、取り組める次の一歩を一緒に考えていきます。

僕自身は、ブリーフセラピーを学び、常勤SCとして学校に関わる中で、コンサルテーションや、面接につながるまでの環境を整える仕事にも手応えを持てるようになりました。同時に、学校文化を理解する必要性と難しさも実感しました。そうした経験を重ねる中で、「助言も傾聴も介入の一部ですよね」と、以前より楽に考えられるようになりました。

理解を伝えることも、コンサルテーションも、相手の専門性を尊重し、協働する姿勢から始まります。助言に急ぐのではなく、共通理解を丁寧に積み重ね、小さな課題に分けて一緒に取り組んでいくこと。こうした過程が、臨床における支援の基盤になるのだと思います。

■ よくある質問(FAQ)

Q. 子どものことで学校に相談しても、「見守りましょう」と言われるだけです。どうしたらいい?

A. 何を見守り、家庭ではどう関わるとよいのかがわからないと、迷いますよね。「家ではどんな関わりを続けるとよいですか」「どのような変化があれば、また相談するとよいですか」と、見守りの具体的な意味を確かめてみるとよいと思います。家庭で困っている場面も伝え、一緒に対応を考えてもらうことが大切です。

Q. スクールカウンセラーの助言は、そのまま実行すべき?

A. 家庭の状況に合わなかったり、すでに試して難しかったりする方法もあると思います。実行しにくい理由や、これまで試した結果を伝えて構いません。その情報を共有することで、取り組める形に調整しやすくなります。

Q. 先生と子どもの理解が違うとき、どうしたらいい?

A. 家庭と学校では、子どもが見せる様子が違うことがあります。どちらかの理解をすぐに否定せず、「家ではこの場面でこうなります」「学校ではどのような様子ですか」と、具体的な場面を共有してみてください。SCにも間に入ってもらい、共通理解をつくる方法があります。

Q. 子どもへの対応をいろいろ試しても、うまくいきません。どうしたらいい?

A. 工夫を重ねても変化が見えないと、疲れてしまいますよね。新しい方法を増やす前に、何を試し、どの場面で難しくなり、少しでも役立ったことは何かを整理して相談してみてください。子どもの変化だけでなく、保護者が続けられる負担かどうかも含めて考えることが大切です。

Q. 保護者だけでスクールカウンセラーに相談してもいい?

A. 本人との面接だけでなく、保護者が状況を整理し、家庭での関わりを相談することも支援の一つです。子どもが面接を希望していない場合でも、保護者との相談から考えられることがあります。相談の方法や利用できる時間は、学校に確認してみてください。

臨床心理学超基礎講座で、理解を伝えることと助言を学ぶ

この記事は、臨床心理学超基礎講座 第5回「理解を伝える・コンサルテーション」の内容と、僕自身の学校臨床での経験を整理したものです。理解を伝えることと助言の違い、共通理解のつくり方、教師や保護者との協働について取り上げています。記事に書ききれなかった具体的な事例や、対話のリアルなニュアンスについては、録画視聴でご覧いただけます。

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かけい臨床心理相談室では、臨床実践ラボやウェビナー研修を通して、学校臨床やカウンセリングについて学ぶ場を設けています。ケース理解を具体的な対応につなげたい方や、教師・保護者との協働について学びたい方は、以下のページをご覧ください。

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