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保護者から担任への不満を聞いたら?スクールカウンセラーのポジショニングと関係調整

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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■ 結論

  • 保護者から担任への不満を聞いたときは、「愚痴として聞いてほしいのか、要望として伝えてほしいのか」を確認してみる。
  • 保護者の感情には十分に寄り添いながら、担任への批判に一緒になって乗っかる必要はない。
  • SCが保護者と担任の間の「伝書鳩」にならないよう、引き受ける役割を整理する。
  • 批判の中にある要望を見つけ、保護者と教職員が協働できる関係を少しずつ作っていく。

大切なのは、保護者の気持ちに寄り添いながら、関係の構造にも目を向け、見守りと具体的な働きかけのバランスを考えていくことです。

保護者から「担任の先生、おかしいと思いません?」と言われたら

スクールカウンセラーをしていると、保護者から担任への不満を聞くことがあります。

「先生の対応って、おかしいと思いません?」
「こんなことを言われたんです」
「もう少しちゃんとしてほしいんです」

こういうとき、意外と難しいのがスクールカウンセラー(SC)のポジショニングです。

担任をかばえば、「この人も学校側なんだ」と思われるかもしれない。一方で、保護者に合わせて「それはひどいですね」と担任批判に加わってしまえば、今度は学校との協働が難しくなる。

「担任の味方になるか、保護者の味方になるか」という構図に入ってしまうと、どちらを選んでもあまりうまくいかないことがあります。

「保護者にお願いされたから」とそのまま動いてしまうと、良かれと思って動いたのに、結局保護者からも学校からも信用を失うなんてこと、体験された方もいらっしゃると思います。。

では、どうするのか。

僕はこういうとき、比較的早い段階で「今、何を求めてこの話をしているのか」を確認することがあります。

「愚痴」なのか、「要望」なのかを聞いてみる

たとえば、こんなふうに聞きます。

「今お話しされていることは、担任の先生への要望として、僕から伝えてほしいという感じですか? それとも、今日はちょっとがっかりしたり、嫌な思いをしたことを聞いてほしいという感じですか? 」

つまり、今の話を愚痴として聞けばいいのか、それとも具体的な要望として扱えばいいのかを確認するわけです。

もし「担任への要望です」ということであれば、きちんと要望として扱えばいい。

「では、この点とこの点については先生にお伝えしますね」

と、伝える内容や範囲を確認する。

さらに、SCが伝言するだけでは解決しそうにないことであれば、

「これは僕から伝えるよりも、一度きちんと先生と話した方がよさそうですね。必要であれば、その場をセッティングしますよ」

と提案することもできます。

一方で、「いや、そこまでじゃないんです」「別に先生に言ってほしいわけではないんです」ということであれば、話はずいぶんシンプルになります。

「ああ、わかりました。じゃあ今日は愚痴として聞きますね。それは嫌な思いをされましたね」

と、保護者の気持ちを一生懸命聞けばいい。

もちろん、愚痴と要望がはっきり分かれているとは限りません。話しているうちに気持ちが整理され、要望が見えてくることもあります。

それでも、今この話をどのように扱えばよいのかを一緒に確認するだけで、SCのポジショニングはずいぶん楽になることがあります。

感情には寄り添う。でも、批判には乗っからない

ここで大切なのは、担任をフォローすることではありません。

保護者が嫌な思いをしたのであれば、その気持ちはそのまま聞けばいいと思います。

「それは腹が立ちますよね」
「それはがっかりしますよね」
「そんなことがあった中で、よく対応されましたね」

こういうふうに、保護者の経験や感情にはしっかりジョイニングする。ジョイニングというのは、相手の気持ちや立場を理解し、相談しやすい関係を作っていくことです。

ただし、「その担任はおかしいですよ」「それは先生が悪いですね」と、第三者への批判にまで一緒に乗る必要はありません。

感情には寄り添う。でも、批判には乗っからない。

これが僕の中での一つの目安です。

これは「中立でいましょう」という話とも少し違います。

目の前にいる人が傷ついているなら、その人の側に立って話を聞いていい。むしろ、そこで妙に中立的になって、「まあ先生にも事情がありますからね」と言ってしまう(こういう反射、バイアスってありますよね)と、相談者からすれば「私の話を聞いてくれない」と感じるかもしれません。

大切なのは、気持ちに寄り添うことと、第三者についての評価を共有することを分けることです。

もちろん、実際に教職員の対応に問題がある場合もあります。その場合には、必要な事実確認や対応を考えることも大切です。批判に乗っからないというのは、問題を見過ごすことではありません。

スクールカウンセラーが「伝書鳩」にならないように

もう一つ気をつけているのが、SCが保護者と担任の間の「伝書鳩」にならないことです。

保護者から「先生にこう言っておいてください」と言われ、それを担任に伝える。

すると今度は担任から「でも、こちらとしてはこうなんです」と言われ、それをまた保護者に伝える。

さらに保護者から「だったら先生にこう言ってください」と言われる。

これを繰り返していると、SC自身は自分が何をやっているのかわからなくなってきます。役に立とうという気持ちが、こういった中途半端な動きになってしまうこともままあります。

もちろん、SCが情報をつなぐことが必要な場合もあります。しかし、対話した方がよい問題までSCが運び続けると、対話から程遠い、対岸同士のヤジり合いをサポートする役目から降りられなくなります。

だから、ある程度重要な要望になってきたら、

「それなら、きちんと話せる場を作りましょうか」

と直接対話のルートに戻していく。

もちろん、保護者と教職員の関係が大きくこじれている場合には、話し合いの場の設定も慎重に考える必要があります。

これは冷たく突き放すことではなく、むしろ関係を整理するための援助だと思っています。

家族療法から考える「三角関係」への巻き込まれ

家族療法では、二者間に葛藤があるとき、そこに第三者が巻き込まれる現象を「三角関係」として考えることがあります。

学校でも同じことはよく起こります。

保護者と担任の関係がうまくいっていないとき、SCがその間に入る。

すると、「保護者+SC 対 担任」という連合ができたり、逆に「担任+SC 対 保護者」という構図になったりします。

SCとしては善意で動いているつもりでも、いつの間にかこの構造の一部になってしまう、巻き込まれ状態になることがあります。

だからこそ、「誰の味方になるか」を考えるよりも、

いま、この人は僕に何を求めて話しているのだろう?

と考えた方が役に立ちます。

感情を受け止めてほしいのか。具体的な要望を学校に伝えてほしいのか。担任との対話を仲介してほしいのか。あるいは、「先生がおかしいと言ってほしい」という同盟を求めているのか。

同じ「担任への不満」という話でも、その機能はずいぶん違います。

コンテンツではなく、コンテクストを扱う

これは、カウンセリングのコンテクストを一緒に扱うという話にもつながります。

「担任にこんなことを言われました」というのは、相談のコンテンツ、つまり話されている内容です。

それに対して、「この話を、僕はどういう話として聞けばいいですか?」と尋ねるのは、その相談が行われているコンテクスト、つまり会話の目的やお互いの役割を扱うことになります。

僕はこの視点が、学校臨床ではかなり重要だと思っています。

相談者が持ってきた話を一生懸命聞くことはもちろん大切です。ただ、ときどき一段上がって、「いま僕たちは何について話しているんだろう」「ここで僕には何が求められているんだろう」「僕はどんな役割を引き受けようとしているんだろう」と、関係そのものを眺めてみる。

そうすると、「担任と保護者のどちらにつくか」という二択から少し離れることができます。

批判の中にある要望を見つける

ただ、SCが三角関係に巻き込まれないこと自体が目的ではありません。

大事なのは、教職員が保護者の要望に気づけたり、保護者が「この先生になら伝えてみようかな」と思えたりすることです。

たとえば、「担任の先生は全然うちの子のことをわかっていない」という批判があったとします。

これをそのまま担任に伝えても、担任としては何をどう変えればよいのかわからないかもしれません。

でも、その批判の中には「もう少し子どもの気持ちを聞いてほしい」「本人なりに頑張っているところを認めてほしい」といった要望が含まれているかもしれません。

そこで、「先生にもう少しこうしてもらえたらいいな、ということはありますか?」と聞いてみる。

すると、それまで批判として語られていたことが、具体的な要望として整理されていくことがあります。

批判が要望の形になれば、そこをきっかけに一歩、協働に踏み出せることもあります。

これは解決志向的な発想ともつながります。何が悪いのかという話から、これからどうなってほしいのか、何が少し変わればよいのかという話に移していくわけです。

要望が出てきても、すぐに動かなくていい場合がある

もちろん、保護者から出てくる要望の中には、現実的には難しいものや、かなり無茶なものもあります。

そういうときに、すぐ「では先生と話す場を作りましょう」と進めるのも、少し慎重になった方がいいと思います。

そもそも、その要望が本当に実現してほしいことなのか、それとも、それくらい腹が立ったという気持ちの表現なのか、まだわからないこともあるからです。

そこで、まずは「それくらい嫌な思いをされたんですね」「そこまでしてほしいと思うくらい、大変だったんですね」と気持ちを聞いていく。

そうすると、十分に気持ちを聞いてもらったことで、「まあ、そこまでしてもらわなくてもいいんですけどね」と、保護者自身が要望を引っ込めたり、現実的な形に修正したりすることもあります。

ここでも、感情には寄り添うけれど、要望をそのまま実現することまで引き受けるわけではない、という区別が大切です。

スクールカウンセラーの関係調整チェックリスト

保護者と教職員の間でポジショニングが難しくなったときには、次のようなことを確認してみるとよいかもしれません。

  • 保護者は今、気持ちを聞いてほしいのか、具体的な要望を伝えてほしいのか。
  • 保護者の感情に寄り添いながら、第三者への批判に乗っかっていないか。
  • SCが引き受ける役割や、情報共有の範囲は明確になっているか。
  • 保護者と担任の間の「伝書鳩」になっていないか。
  • 批判の中にある願いや具体的な要望を整理できているか。
  • 直接対話を促すことが適切か、もう少し気持ちを聞いて見守る方がよいか。
  • 保護者と教職員の協働につながる働きかけになっているか。

まとめ:寄り添いながら、線を引く

学校臨床では、寄り添いと境界設定は反対のものではありません。

気持ちには十分に寄り添う。一方で、引き受ける役割については線を引く。

この二つを同時にやることが大切なのだと思います。

「それは本当に嫌でしたね」と気持ちを受け止めることと、「僕も一緒に担任を批判します」ということは違います。「その要望はきちんと受け取ります」と言うことと、「あなたの代わりに何度でも伝言します」ということも違います。

そして、できれば教職員が保護者の願いや困りごとに気づけるようになること。保護者も、教職員に対して「この人になら少し話してみようかな」と思えるようになること。

そういう関係を少しずつ作っていけるといいですよね。

感情には寄り添う。でも、批判には乗っからない。批判の中にある要望を見つけ、必要であれば、それを協働のきっかけに変えていく。

スクールカウンセラーという、学校と子どもと保護者の間に位置する仕事では、こうしたポジショニングが大切なのではないかと思っています。

■ よくある質問(FAQ)

Q. 保護者から担任の悪口を聞かされたら、どうしたらいいですか?

A. まずは保護者がどんな嫌な思いをしたのかを聞いてみるとよいと思います。そのうえで、担任に何か伝えてほしいのか、それとも気持ちを聞いてほしいのかを確認することが役に立つ場合があります。感情に寄り添うことと、担任への批判に同調することは分けて考えられます。

Q. 保護者から「先生がおかしいと思いませんか?」と聞かれたら、同意すべきですか?

A. すぐに同意したり、反対に担任をかばったりする必要はありません。「それは嫌な思いをされましたね」と経験や感情を受け止めながら、何が起きたのか、どのような対応を望んでいるのかを整理していく方法があります。実際に不適切な対応が疑われる場合には、必要な事実確認も重要です。

Q. 保護者から担任に要望を伝えてほしいと言われたら、どうしたらいいですか?

A. まず、何をどのように伝えてほしいのかを確認します。SCから伝えた方がよい場合もあれば、保護者と担任が直接話す場を設定した方がよい場合もあります。本人の意向や情報共有の範囲、学校内での役割を確認しながら判断することが大切です。

Q. 保護者と担任の関係が悪いとき、SCは中立でいるべきですか?

A. 単にどちらの味方もしないという意味での中立では、十分でないことがあります。保護者の気持ちには寄り添いながら、担任との協働関係も維持していく。そのために、相談の目的やSC自身の役割を明確にすることが役立ちます。

Q. 保護者の要望が現実的に難しい場合は、どうしたらいいですか?

A. すぐに実現できるかどうかを判断する前に、その要望の背景にある気持ちを聞いてみることが大切です。十分に話すことで、保護者自身が要望を整理したり、現実的な形に修正したりすることもあります。ただし、安全や権利に関わる問題については、必要な対応を先延ばしにしないことも重要です。

学校臨床やカウンセリングについて、一緒に学びたい方へ

今回書いたような、保護者と教職員の間でのポジショニングや、三角関係に巻き込まれないための関係調整は、知識として理解することと、実際の現場でできることが少し違うように思います。

こうした学校臨床の実践について、一緒に考えたり学んだりする場として「臨床実践ラボ」を運営しています。

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