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不登校支援で再登校を急がない理由|スクールカウンセラーが考えたい「エネルギー収支」と関係の整え方

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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不登校支援で再登校を急がない理由|スクールカウンセラーが考えたい「エネルギー収支」と関係の整え方

■ 結論

  • 不登校支援の初期には、「学校に行けるようにすること」を前面の目標から一度外した方がよい場合があります。
  • 再登校だけを成功の基準にすると、本人も家族も支援者も追い詰められやすくなります。
  • まずは本人のエネルギーを増やそうとするより、家庭や学校との関係の中で失われているエネルギーを減らす視点が大切です。
  • 本人が休まり、自分で選べる感覚を少しずつ取り戻せるよう、関係・見守り・バランスを整えていくことが、結果として選択肢を広げることがあります。

不登校支援では、登校という結果を急ぐよりも先に、本人がこれ以上傷つかず、エネルギーの収支を少しずつプラスにできる関係と環境をつくることが重要になる場合があります。

不登校臨床は、パラドックスに満ちている

不登校の支援に関わっていると、オーソドックスな対応だけでは動かない場面に出会います。

もちろん、生活リズムを整えること、学校とのつながりを保つこと、少しずつ外出や活動の機会を増やすことなどが役に立つ場合はあります。ただ、こうした一般的な対応によって比較的早く状況が整う子どもは、深刻な不登校状態に至らないこともあります。

スクールカウンセラーのもとに相談が来る時点で、本人も保護者も学校も、すでに「普通に頑張る」「励ます」「少しずつ登校を促す」といった方法を試してきていることが少なくありません。

それでもうまくいかなかったからこそ、支援者には、これまでと同じ方向に力を入れ続けるのではなく、一度見方を変えることが求められます。

不登校臨床がパラドックスに満ちていると感じるのは、「学校に行かせよう」と強く意識するほど、本人が学校から遠ざかってしまうことがあるからです。

「学校に行けるようにする」を最初の目標にしすぎない

学校に行っていないことを問題の中心に置くと、問題が解決したかどうかは「再登校できたかどうか」でしか測れなくなります。

すると、本人の毎日は「今日は行けた」「今日も行けなかった」という評価に回収されやすくなります。保護者も学校も善意で気にかけているのに、本人にとっては常に採点されているような感覚になることがあります。

しかし、不登校状態にある子どもにとって、登校は単なる行動ではありません。

教室での居心地の悪さ、友人関係、学習の遅れ、失敗への恐れ、先生との関係、自分への失望、親を心配させているという罪悪感など、さまざまな経験や感情が重なっていることがあります。

そのような状態で「学校に戻ること」を最優先にすると、本人にとって学校は、回復の場ではなく、再び自分を追い詰める場所になりかねません。

だからこそ初期には、「学校に行けるようにする」という目標を完全に捨てるわけではなく、一度前面から外してみることが必要になる場合があります。

これは再登校をあきらめることではありません。再登校を急ぐことで本人の回復を損なわないために、目標の置き方を変えるということです。

最初に考えたいのは、本人が元気を取り戻せる状態

不登校支援の初期には、登校の可否よりも先に、「本人が少し元気になっているか」を見ていく方が有効なことがあります。

たとえば、以前より表情がやわらいだ、家族と会話する時間が少し増えた、好きなことに手が伸びた、昼間に起きている時間が増えた、散歩や買い物に出られた、自分から進路のことを調べ始めた、といった変化です。

これらは、一見すると学校とは直接関係がないように見えるかもしれません。

ただ、本人が再び自分の生活を生きている感覚を取り戻すことは、その後の進路や学び方、学校とのつながり方を考える土台になります。

支援者が「学校に行けるかどうか」だけを見ていると、こうした大切な変化を見落としやすくなります。

一方で、「本人が何に少し関心を向けられるようになったか」「家の中でどの時間が比較的穏やかか」「本人が自分から動ける場面はどこにあるか」を見ていくと、回復の手がかりが見えてくることがあります。

エネルギーを増やす前に、漏れているところを探す

不登校の子どもに対して、「元気を出せるようにしよう」「活動を増やそう」「自信をつけよう」と考えることは自然です。

ただ、本人のエネルギーがすでに漏れ続けている状態では、何かを付け加えても回復につながりにくいことがあります。

そこで役立つのが、「エネルギーを増やす」よりも「エネルギー収支をプラスにする」という見方です。

本人がどこで無駄に疲れているのか、どの関係の中で消耗しているのか、家庭や学校とのやりとりのどこに緊張があるのかを見立てます。

エネルギーを大きく増やそうとしなくても、漏れている部分を少し埋めることで、本人が回復に使える余力が残ることがあります。

家庭の中にある「エネルギー漏れ」

家庭は、本来なら本人が休める場所であってほしいものです。しかし、不登校が長引くほど、保護者の不安も強くなりやすく、家庭の中に緊張が持ち込まれることがあります。

たとえば、学校の話題が頻繁に出る、起床やゲームについて何度も注意される、進路の話が急に重くなる、親の不安を本人が受け止める形になる、といったことです。

保護者としては心配であり、放っておけないからこその関わりです。ただ、本人にとっては、家にいても「学校に行けていない自分」を突きつけられ続ける体験になることがあります。

支援の初期には、保護者を責めるのではなく、「家庭が本人にとって少しでも休まる場所になっているか」を一緒に考えることが大切です。

本人の中にある「エネルギー漏れ」

子ども自身も、何も考えずに休んでいるわけではないことが多いです。

「自分が頑張らないといけない」「みんなに迷惑をかけている」「いつか学校に戻らなければならない」「このままではだめだ」と考え続けている場合があります。

外からは動いていないように見えても、本人の内側では、強い焦りや自己批判が続いていることがあります。

そのため、「元気になったら学校に行こう」と言われても、本人には「早く元気にならなければならない」という新しい課題として届いてしまうことがあります。

支援者は、本人が自分を責めずに休めているか、休むことそのものが課題になっていないかも見ていく必要があります。

不登校の子どもは、頑張らなかったのではなく、頑張り続けたのかもしれない

不登校の子どもの中には、学校に行けなくなる前まで、かなり長い期間にわたって無理を重ねていた子どもがいます。

友人関係でつらい思いをしても、勉強が苦しくても、部活動がしんどくても、「自分が頑張るしかない」と考えて何とか学校に行き続けてきた子どもです。

そうした子どもは、ある時点で急に動けなくなったように見えることがあります。しかし実際には、急に弱くなったというより、これまで何とか保っていた力が尽きたのかもしれません。

最低でも数か月、場合によっては半年程度、疲れやすさ、ぐったりしやすさ、意欲の低下、刺激への敏感さなどが続くことは、不自然なことではないように思います。

もちろん、すべてを「疲れ」の問題として理解できるわけではありません。発達特性、対人関係、いじめ、家庭環境、精神的な不調、進路の問題など、丁寧に確認する必要があります。

それでも、「この子は怠けているのではないか」ではなく、「この子はもう十分に頑張ってきたのかもしれない」という仮説を置くことで、支援の出発点は大きく変わります。

見守りとは、何もしないことではない

再登校を急がない支援を説明すると、「では、ただ見守るだけでよいのでしょうか」と保護者から尋ねられることがあります。

見守りは、何も言わずに放置することではありません。

本人の生活の様子、疲れ方、表情、睡眠、食事、会話の変化、家族との距離感を見ながら、今の本人にとって負担が少なく、回復につながりやすい関わりを選んでいくことです。

ときには生活リズムについて話し合う必要もあります。学校との接点をつくる必要がある場合もあります。医療や福祉、居場所、通信制高校など、学校以外の選択肢を一緒に検討する必要もあります。

ただし、そのすべてが「早く学校に戻すため」の圧力になってしまうと、本人との関係が苦しくなります。

本人の状態を見ながら、必要な枠組みは保ちつつ、本人の回復を急がせない。このバランスを探り続けることが、不登校支援の難しさであり、大切さでもあります。

スクールカウンセラーが保護者と共有したい視点

保護者は、子どもの将来が心配だからこそ、登校を促したくなります。その不安は自然なものであり、簡単に「焦らないでください」と言われても、すぐに落ち着けるものではありません。

だからこそ、スクールカウンセラーは、保護者の不安を否定せずに受け止めながら、本人の回復に必要な視点を共有していく必要があります。

たとえば、「学校に行くことを考えないわけではありません。ただ、今は学校に向かう力を取り戻すために、まず家で消耗しない状態をつくる時期かもしれません」と伝えることがあります。

また、「今は登校そのものよりも、本人が自分から何かを選べる時間が少しずつ増えているかを見ていきましょう」と言葉にすることで、保護者が子どもの変化を別の角度から見られるようになる場合があります。

保護者が安心できると、本人への関わりにも少し余白が生まれます。その余白が、本人にとって休める空間になることがあります。

不登校支援で確認したいチェックリスト

  • 再登校だけが「成功」の基準になっていないか。
  • 本人が家庭の中でも学校のことを責められ続ける状態になっていないか。
  • 保護者の不安を、本人が受け止める役割になっていないか。
  • 本人が何に疲れ、どの場面でエネルギーを失っているかを見立てているか。
  • 表情、会話、睡眠、食事、興味、外出など、学校以外の回復のサインを見ているか。
  • 見守りが放置にならず、関係と生活の枠組みを保てているか。
  • 学校以外の学び方や居場所も含め、本人の選択肢を狭めていないか。

まとめ|登校を急がないことは、登校をあきらめることではない

不登校支援では、「学校に行けるようにすること」を最初から中心目標に置くほど、本人も家族も苦しくなることがあります。

もちろん、再登校を望む本人や保護者にとって、学校とのつながりを考えることは大切です。ただ、本人のエネルギーが尽きかけている状態で登校だけを急ぐと、かえって回復の道筋を見失いやすくなります。

まずは、本人がどこでエネルギーを失っているのかを見立てること。家庭が少しでも休める場所になっているかを確認すること。本人が自分で選べる感覚を取り戻せるようにすること。

そうした関係・見守り・バランスの調整が積み重なった先に、再登校という変化が起こることもあります。また、再登校とは異なる形で、本人が自分らしい学び方や進路を見つけることもあります。

不登校支援において大切なのは、本人を学校に戻すことだけではなく、本人が自分の人生を再び動かしていける状態をつくることなのだと思います。

■ よくある質問(FAQ)

Q. 不登校の子どもを、学校に行かせようとしない方がよいのでしょうか?

A. そう感じる保護者の方は多いと思います。学校に行かせたいと思うこと自体は自然なことです。ただ、本人がかなり疲れ切っている時期に、登校だけを強く求めると、学校や親子関係への不安が強まることがあります。登校を考えないということではなく、まず本人が少し落ち着き、回復するための余力を取り戻せるかを見ていくことが大切です。

Q. 家でゲームばかりしている場合も、見守っていてよいのでしょうか?

A. 心配になりますよね。ゲームの時間だけを見てしまうと、「このままで大丈夫なのか」と感じやすいと思います。ただ、ゲームが本人にとって、緊張を下げる手段や、人とのつながり、達成感を得る場所になっている場合もあります。一方で、生活全体が崩れたり、本人がより苦しそうになったりしている場合には、時間の使い方を一緒に考える必要があります。禁止か放任かの二択ではなく、本人の状態と親子の関係を見ながら、無理のない枠組みを探すことが大切です。

Q. 不登校の子どもには、生活リズムを整えさせるべきですか?

A. 生活リズムは大切な要素ですが、「早く整えなければならない」と強く迫ると、本人の焦りや自己否定を強めることがあります。まずは、なぜ夜に起きているのか、昼間に動けないほど疲れていないか、夜の時間が本人にとってどのような意味を持っているのかを理解することが先になります。その上で、本人が取り組めそうな小さな変化を一緒に考える方が、現実的なことがあります。

Q. 親はどこまで見守るべきですか?

A. 見守りの加減はとても難しいところです。何も言わずに放置することでも、毎日学校の話をして動かそうとすることでもなく、本人が休める関係を保ちながら、生活や安全に必要な枠組みは支えることが大切です。本人の表情、睡眠、食事、会話、外出、興味の変化などを見ながら、今の本人に必要な関わりを考えていくことになります。

Q. 学校とつながりを切らない方がよいのでしょうか?

A. 学校とのつながり方は、本人の状態によって異なります。担任からの連絡が安心につながる子どももいれば、連絡そのものが大きな負担になる子どももいます。学校との関係を完全に切るか、頻繁に登校を促すかという二択ではなく、本人が負担を感じにくい頻度や方法を検討することが大切です。スクールカウンセラーや担任、保護者で、本人にとって無理の少ない接点を相談できるとよいでしょう。

Q. 再登校を目標にしないと、このまま学校に戻れなくなりませんか?

A. その不安はよくわかります。ただ、再登校を強く目標にすることが、必ずしも再登校につながるわけではありません。本人のエネルギーが回復し、家の中で安心して過ごせるようになり、自分で選べる感覚を取り戻すことが、結果として学校との距離を考え直す力になることがあります。再登校をあきらめるのではなく、再登校だけに支援の成功を限定しないことが大切です。

 

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