公認心理師時代の心理師の治療構造への考え方とは?
人に寄り添うというのは本当に難しい。
それは、人によって心地よい距離感が違ったり、その心地よい距離感が関係性で変わって来たりするから、実際には本当にややこしい。
治療構造という考え方
カウンセリングみたいな職業的な関係の場合は、場所や時間や料金を設定して、日常的な関係性と区切ることで、なんとかその距離感を適切なものに保ったり、お互いが見失わないように、そして言葉でその距離感を扱えるようにしたり、することができる。
こういった場所や時間や料金の区切り、そしてカウンセリングに関する契約を含めて、こういった機能のことを、臨床心理学の世界では治療構造と呼ぶ。
この治療構造についての考え方は、その心理療法の理論や、領域、対象によって異なる設定の仕方がある。
例えば病院の心理相談室でカウンセリングを行うのと、スクールカウンセラーとして学校で生徒の話を聞くのとでは、その構造設定は大いに異なる。
病院の方が構造の強度が強いため、深い話をじっくりとすることができる反面敷居が高い。
それに比べると、スクールカウンセラーに学校で話しかけるのはだいぶ敷居が低いが、その分深い話をじっくりと聞く環境を作るのは難しく、現実的な話が中心となりやすいが、これは逆に強度が低い構造が、話す内容が深まりにくいようにリミッターとして機能しているとも考えられる。
スクールカウンセリングでの治療構造の考え方の一例
スクールカウンセリングで考えると、廊下での立ち話と相談室を予約しての相談でも、構造の設定は全く異なる。
「立ち話でカウンセリングをするべきでない」なんてことを言う人がいるのももちろんで、できれば「それ大事な話だからちゃんと時間とって相談室で話さない?」と声をかけるのもいいかもしれない。
ただ「相談室でのカウンセリングを予約せずに廊下で声をかけた」ということにそも、そもその人の求める距離感や話の内容の深さのニーズもあったりするので、相談室に誘った瞬間「そこまでのことじゃないんで」となるかもしれない。
もちろんその学校にとっての相談室の機能がどんなものかというところか、どうしていきたいか?ということを考える必要もある。
それと同時に、廊下での立ち話も「ゆるい構造設定の中での心理的な支援となっている」と考えることも必要だろう。
公認心理師の立場から考えてみる
公認心理師法案には多職種との連携と国民の心の健康増進ということが明記されている。
これまで、スクールカウンセラーの機能が相談室の内側のみで留まっているための逃げ口上として、この治療構造の話が使われることがあったかもしれない。
しかし多職種と連携して仕事をするためには、臨床心理学の考える構造の中、面接室の中だけでは、カウンセリングのニーズのある人以外への心理的な支援を、多職種連携を前提に行うことが出来るのだろうか?
つまり、どんな状況であろうと、常に今いる構造の限界と、相談者の訴えやニーズを査定して、話す内容や深めていくのか、現実検討でいくのか、構造設定を仕切りなおすのか、適切に見極めることが必要になるだろう。
心理的な支援のニーズの広がりとニーズの変化
僕がこの仕事に関わるようになったこの20数年の間でも、カウンセリングという言葉が日常会話の中でも登場することが増え、心理的な支援というものに対する偏見や抵抗感が少しずつ減っていること、心理的な支援を必要とする人の裾野が広がっていることが実感できる。
そして、それは同時に、これまでカウンセリングや心理的な支援というニーズを持たなかった人たちや、なんとかカウンセリング無しでも生活できている人たちが、心理的な支援の場に顔を出すようになってきたということ。
それは、もう気持ちがいっぱいいっぱいで、とにかく話を聞いてほしい、自分の心を理解することで現状をなんとかしたい、というカウンセリング的なニーズではなく、なんとか自分でやれてるけど、今の生活をより良くしたい、気になることを解消したい、そのためには具体的にどうすればいいのか?といった問いかけや、専門性を踏まえた具体的な指示を求められること、つまり心理教育的なニーズの割合いが増えてきているということでもある。
とはいえ、まずはかっちりとした構造の中での心理療法のやり方、見立て方を確立した上で、どうやって心理の専門性を持ちつつも、そこから一歩出ていくのか?ということが、公認心理師時代の心理師のテーマとなることだろうと思う。
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