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【論文読んでみよ】学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー を読む(その2)

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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帝京大学 心理学紀要 2003,No7,27-42

本永拓郎先生の 学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー

https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/tmotonaga7.pdf

 

【論文読んでみよ】学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー を読む(その1)

その1では治療構造と相談構造との違いについて言及してまいりました。

後編は学校では相談構造という考え方がどんな役割を果たしていくのかということと、今後の課題についてです。

世の中には様々な構造が転がっているわけですが、治療構造というのは、日常生活の構造の中でにっちもさっちもいかなくなっている方を病者という役割を与えることで一旦そこから救い出して、日常の構造(仕事であったり家族としての社会的役割だったり)を、一時的に棚上げすることで、治療や回復に向かわせることが出来ます。

例えば、どうしても仕事に行かなければならないと思い込んでいる方が、入院することで一旦仕事のことを忘れて我に返ることが出来たり。

それは視点を変えれば、その人がどっぷりつかっていた仕事における構造を弱体化したとも捉えることが出来ますよね。

治療構造はこのように、いったん日常の構造からその人を離す役割を持っているのですが、逆に相談構造は、先ほどの学校でのカウンセリングの例のように、日常的な構造から大きな影響を受けます。

相談構造は、確かに日常構造の影響を受けるんですが、そこで行われる相談活動には、今度は相談に来た方の日常的な構造に影響を与えたりすることもあります。

(というかそれこそが相談構造の本分かと思います)

僕自身が不登校などの相談を保護者の方から受けていてよく思う事なのですが、相談の中で何かが起こるのではなく、相談の中で相談していた方の中にあった何かわだかまりが解けたり、自分の行動や家族の行動について理解したり、自分自身の新たな可能性に気づき、その影響を受けて少しずつ家の中で起こってくることが変化してきて、その変化がさらにその家族の成員に変化を与える、ということがよく起こっているのではないかと。

例えば、学校の先生が生徒との相談中にガラガラと入ってくるのだったら、その先生はたいていはその生徒に関心があるわけだから「先生ちょうどいいところに来たじゃないですか~」と言ってその会話の輪の中に入ってもらってしばらく雑談に付き合ってもらったり、先生がその生徒に対して協力できそうなことを引き出してみたり、そううまくいくときばかりではないですが、可能な場合はその相談に来ている生徒にとってのサポーターであったり、理解者になりうるようなポジショニングをとってもらうようにすることもありですよね。

相談構造は、そうやって家庭構造や学校構造といった日常的な構造との関係の中で、お互い影響しあいながら存在しているし、その影響自体が構造の持っている力でもあると。

これが不安定だからと言ってほかの構造からの影響を排除しようとすると、逆にこちらが排除され、穴倉構造になってしまうというのが学校の又難しいところなので、スクールカウンセラーとしては安定しないことこの上ないですが、構造同士の相互作用も考慮する必要がありますよね。

この論文では協同性と書かれていますが、目の前の相談者を中心に考えることはもちろん大前提なのですが、そのうえで自分や相談者の周囲にある構造の存在についてもバランスよく注意を払って、隙あらば協力できる関係を持てるように関りを作っていくことが相談者にとっても利の多いことかと思います。

その3に続く。

【論文読んでみよ】学校臨床における「相談構造」試論 ―「治療構造」との比較検討ー を読む(その3)

 

 

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