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【ミルトンエリクソン入門を読む】 スプリッティングとリンキングとアンカーリング

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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患者が抵抗しているように見えた場合、エリクソンは抵抗をうながし、抵抗を処方したものであるが、ただ治療へそれが及ぼす影響を限定するような形で行ったのである。

『ミルトン・エリクソン入門』 ウィリアム・ハドソン オハンロン (森俊夫 菊池 安希子 訳) 金剛出版 P80 より

スプリッティングとリンキング

ここでいうスプリッティングは、精神分析で言う防衛機制のスプリッティングではなく、単にAとBを分ける、という意味でのスプリッティングです。

 

例えば、エリクソンはイヤイヤ治療を受けに来た重度の乾癬の女性に対して、「あなたが自分で思っている三分の一も乾癬にかかっていません」と、まるで乾癬が気のせいであるかのように伝えて、彼女が怒り出すと、「あなたは少しの乾癬ととても多くの感情を持っている」と伝え、彼女は起こったまま時間分の小切手を切り、帰ってからもエリクソンに対して怒り続け、しかし2週間後に「日がたつにつれ乾癬が消え、もうほとんど残っていない」とエリクソンに電話をかけてきたというケースについて。

 

本の中の解説では

ここでエリクソンは、まず分離(乾癬=少しの乾癬+たくさんの感情)を持ち出し、それから彼女がたくさんの感情を体験するようにしつらえたのであった。彼女が感情を体験すればするほど、乾癬は少なくなっていった。

と書いてあります。

もちろんエリクソンはわざと彼女を怒らせたのですが、きっと彼女は乾癬について無くしたいものであるけども無くなるはずがないもの、治療間無駄なことという考えがあり、そこには強いアンビバレント感情、こだわりがあったはずです。

「あなたが自分で思っている三分の一も乾癬にかかっていません」という言葉の中には、「あなたは間違っている」というメッセージと、でも三分の一程度は合っているという肯定のメッセージの両方が入っていることが一つ目のポイント。

彼女は否定されながらも部分的には肯定されているんです。

そして彼女がエリクソンに対して怒って否定しているのは、本当はなくなってほしい乾癬が無くなっていないこと、つまりそこにある、と言って怒っているんです。

書いていても訳が分からなくなりますが、ここですでに彼女も訳が分からなくなっているはずです。

そしてエリクソンは乾癬を少しの乾癬とたくさんの感情に分けてその場で述べた、それは乾癬について記述したのと、その場の彼女自身について記述したのと両方が掛かっているようにも思えます。

乾癬は掻けば掻くほどひどくなるものです。

彼女がエリクソンに怒りの感情を向けている間、彼女は乾癬への関心が薄れていたということでしょう。

エリクソンは怒りの感情の方向を自分自身に向けさせ、それが持続するように仕向けました。

エリクソンが巧妙にリバースセットを行ったことで、彼女自身もエリクソンの何に対して自分が怒っているのかよく分からなくなっていたかもしれません。

彼女が乾癬のことを気にすることで余計に乾癬が治らないという悪いループが持続しないようにエリクソンが介入したというようにも見えます。

エリクソンは彼女の乾癬をまず少しの乾癬とたくさんの感情にスプリットさせ、たくさんの感情を自分とリンクさせた、ということなのでしょう。

症状のアンカーリング

スプリッティングとリンキングを組み合わせ、特定の場所に症状を定位させ、日常生活への影響が少ないようにすることをここではアンカーリングと呼んでいます。

この章でのエリクソンは、飛行機恐怖症の女性の症例では、飛行機の着陸にリンクされていた恐怖症状を、面接室の中の椅子にリンクさせ、全身の疼痛を訴えるガン患者の医師には、全身の痛みを左手へリンクさせ、男性のヌードが頭上に浮かんでいるという幻覚を持つ女性に対しては、その幻覚を彼女から切り離し、マニラ封筒に入れて面接室に保管する、という介入を行いました。

これらの介入ではエリクソンはトランスに入る力や、医師としての知識、精神病といった患者の持つもの、時には症状や抵抗を及ぼすものとして扱われがちなものでもリソースとして扱っています。

彼の治療的態度は、症状を消ことではなく、健康な生活から症状をスプリッティングしていくことだったのではないのかなと感じました。

そしてエリクソンは、患者の恐怖症状や、疼痛、精神病的な症状(妄想)を、おそらくとても丁寧に大事なものとして扱っていたのではないでしょうか。

エリクソンが精神病エピソードの入ったマニラ封筒を、おそらくとても大事なものとして彼女の前でもそうでなくても扱っているところがイメージできます。

 

症状や抵抗を治療的に扱うコツのひとつは、相手が消したいもの、無くなってしまえばいいと思うもの、社会的に悪いものとして扱われている者であっても(だからこそ)、相手の大切な一部として大事にしていく、という態度そのものなのかもしれません。

 

 

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