不登校・ゲーム・見守りの背景にあるトラウマ反応|「わかっているのに動けない」子どもへの理解
目次
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- 不登校やゲームへの没入の背景には、意志の弱さではなく、身体に残ったトラウマ反応が関係していることがあります。
- 「話せば楽になる」「わかれば変わる」とは限らず、話すことでかえってつらさが強まる場合もあります。
- トラウマ反応は、頭で説得するよりも、身体の安心感や関係の安全性から整えていく視点が大切です。
- 保護者の見守りは、何もしないことではなく、子どもの反応を理解しながら、関係と関わりのバランスを整えていくことです。
不登校やゲームの問題を「甘え」や「依存」とだけ見るのではなく、その子の身体が何を怖がり、何から身を守ろうとしているのかを理解することが、回復の入口になることがあります。
「頭ではわかっているのに動けない」ということがあります
不登校の子どもを見ていると、保護者としては「行けるなら行ってほしい」「少しでも動いてほしい」と思うことがあります。
本人も、まったく何も考えていないわけではありません。
学校に行ったほうがいいことはわかっている。ゲームばかりではよくないことも、どこかではわかっている。親が心配していることも感じている。
それでも、身体が動かない。考えようとすると苦しくなる。学校のことを言われると固まる。少し責められたように感じるだけで、強く反応してしまう。
こうした状態は、単なるわがままや甘えとして見るだけでは、理解しきれないことがあります。
そこには、過去の傷つきや失敗体験、対人関係での怖さ、恥ずかしさ、追い詰められた感覚などが、身体の反応として残っている場合があります。
トラウマは「大きな出来事」だけではありません
トラウマというと、命に関わるような大きな出来事を想像される方も多いと思います。
もちろん、そうした大きな体験がトラウマになることはあります。
ただ、臨床の中で見ていると、いわゆる大きなトラウマだけではなく、もっと日常的な体験が、その人の中に長く残っていることも少なくありません。
たとえば、親や先生に言われた一言、友達との関係で傷ついた体験、人前で失敗した経験、恥ずかしかった場面、居場所がないと感じた時間などです。
その場では大きな出来事に見えなくても、本人の中では「もう二度とあんな思いをしたくない」という反応として残ることがあります。
そして似たような場面が近づくと、身体が先に反応します。
学校に行こうとするとお腹が痛くなる。先生や友達のことを考えると息が苦しくなる。勉強の話をされると急に怒る。ゲームをやめるように言われると強く抵抗する。
こうした反応の背景に、未処理のトラウマ反応が関係していることがあります。
「話しても楽にならない」ときに起きていること
カウンセリングというと、「話を聞いてもらうことで楽になる」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、安心できる相手に話を聞いてもらうことは、とても大切です。
ただ、トラウマ反応が強い場合には、話すこと自体が負担になることがあります。
思い出したくないことを思い出す。身体が固まる。涙が止まらなくなる。話したあとにぐったりする。かえってフラッシュバックが強くなる。
こうしたことが起こる場合、単に「もっと話せばよい」という方向ではなく、まず安全に扱える状態を整える必要があります。
トラウマ記憶は、通常の記憶とは少し違います。
昔のこととして整理されている記憶ではなく、今まさに起こっているかのように身体が反応してしまう記憶です。
そのため、言葉で理解するだけでは変わりにくく、身体の反応そのものに丁寧に関わっていくことが必要になる場合があります。
不登校とゲームを「依存」とだけ見ない
不登校の子どもがゲームばかりしていると、保護者としては心配になります。
このままで大丈夫なのか。昼夜逆転してしまうのではないか。ゲーム依存ではないのか。ますます学校から遠ざかるのではないか。
そう感じるのは自然なことです。
ただ、ゲームをしている状態だけを見て「依存だ」「逃げている」と決めつけてしまうと、本人の中で起きていることを見落としてしまうことがあります。
ゲームが、その子にとって唯一安心できる場所になっていることがあります。
現実の世界では失敗する。責められる。比べられる。うまくできない。何をしても怒られる気がする。
そうした感覚が強い子にとって、ゲームの中は、予測可能で、自分で操作できて、達成感が得られる場所になっていることがあります。
もちろん、ゲームを無制限にしてよいという話ではありません。
ただ、ゲームを取り上げる前に、その子が何から避難しているのか、何によって安心を保っているのかを見ていくことが大切です。
見守りは「何もしないこと」ではありません
不登校支援では、「今は見守りましょう」と言われることがあります。
この言葉自体は、とても大切です。
ただ、見守りという言葉は、ときに誤解されます。
何も言わない。何も関わらない。本人の好きなようにさせる。親は我慢する。
そういう意味で受け取ってしまうと、保護者の不安が大きくなり、どこかで限界が来ます。
見守りとは、放置ではありません。
子どもの反応をよく観察しながら、安心できる関係を保ち、必要なときには現実的な枠組みを一緒に考えていくことです。
ゲームについても同じです。
いきなり禁止するのではなく、かといって無制限にするのでもなく、子どもが何を支えにしているのかを理解しながら、少しずつ生活のリズムや関係を整えていく必要があります。
身体から整えるという視点
トラウマ反応は、頭で考えていることだけではなく、身体の反応として残っていることがあります。
そのため、支援では「なぜそう考えるのか」だけでなく、「そのとき身体はどう反応しているのか」を見ていくことが大切になります。
身体が固まる。胸が苦しくなる。お腹が痛くなる。呼吸が浅くなる。手足が冷える。頭が真っ白になる。
こうした反応は、本人がわざとやっているわけではありません。
身体が危険を感じ、守ろうとしている反応です。
だからこそ、「怖くないよ」「大丈夫だよ」と頭で説得するだけでは届かないことがあります。
まずは、安心できる身体感覚を少しずつ育てること。落ち着いていられる時間を増やすこと。自分の身体が安全だと感じられる経験を積み重ねること。
そうした土台ができてくると、少しずつ現実の課題に向き合いやすくなることがあります。
トラウマ処理で起こる変化
トラウマ処理が進むと、出来事そのものが消えるわけではありません。
過去の記憶がなくなるわけでもありません。
ただ、その記憶との距離が変わっていきます。
それまでは、昔のことなのに目の前に迫ってくるように感じていたものが、少し離れた場所に置かれていくようになります。
たとえば、テレビの画面の向こうに映っているような感じになることがあります。
「確かにそういうことはあった。でも、今それが起きているわけではない」
そう感じられる距離が生まれてくると、身体の反応も少しずつ変わっていきます。
学校の話をしただけで固まっていた子が、少しだけ話を聞けるようになる。ゲームをやめる話になると激しく怒っていた子が、少しだけ相談できるようになる。人前での失敗を思い出すと動けなかった人が、少しずつ挑戦できるようになる。
こうした変化は、無理に気合いを入れて起こすものではありません。
安全な関係と、身体の安心感の中で、少しずつ起こっていくものです。
保護者ができること
保護者がまずできることは、「なぜできないのか」と責める前に、「身体が反応しているのかもしれない」と見立てることです。
もちろん、すべてをトラウマで説明する必要はありません。
生活リズム、発達特性、学校環境、家庭内の関係、学習の困難さ、友人関係など、いろいろな要因が絡み合っています。
ただ、その中に「怖さ」「恥ずかしさ」「失敗体験」「傷つき」が残っている場合、それを無視して前に進ませようとしても、うまくいかないことがあります。
保護者ができるのは、子どもの反応を少し違う角度から見ることです。
怠けているのではなく、固まっているのかもしれない。
反抗しているのではなく、守ろうとしているのかもしれない。
ゲームに依存しているだけではなく、そこに安心を求めているのかもしれない。
そう見立てることで、関わり方に少し余白が生まれます。
また保護者自身の子供を見守る辛さ、苦しさが、保護者自身のトラウマ由来であることも。
保護者のトラウマケアを行うことで、連鎖的に子供の状態も良くなることもあります。
チェックリスト
次のような状態がある場合、トラウマ反応や身体の警戒が関係している可能性があります。
- 学校の話をすると、急に黙る、怒る、泣く、固まる
- 頭ではわかっているのに、身体が動かないように見える
- 失敗体験や友人関係の傷つきが、今も強く影響している
- ゲームやスマホが、唯一安心できる場所になっているように見える
- 親が少し声をかけただけで、責められたように反応する
- 人との距離感が難しく、近すぎるか遠すぎる関係になりやすい
- 見守りたいが、どこまで見守ればよいかわからない
当てはまるものがあるからといって、すぐに治療が必要ということではありません。
ただ、本人の努力だけでは変わりにくい反応がある場合、身体や関係の安全性から整える視点が役に立つことがあります。
まとめ
不登校やゲームへの没入を見ていると、保護者として不安になるのは当然です。
ただ、その状態を「甘え」「逃げ」「依存」とだけ見ると、子どもの中で起きている反応を見落としてしまうことがあります。
過去の傷つきや失敗体験、対人関係の怖さが、身体の反応として残っている場合、頭ではわかっていても動けないことがあります。
そのようなときには、説得や禁止だけでなく、安心できる関係、身体の落ち着き、現実的な見守りのバランスが大切になります。
見守りとは、何もしないことではありません。
子どもの反応を理解しながら、関係を切らず、必要な支援につなげていくことです。
よくある質問(FAQ)
Q. 不登校の子どもには、トラウマ治療を受けさせるべきですか?
A. 不登校だからといって、必ずトラウマ治療が必要というわけではありません。ただ、学校に関する話題で強く固まる、過去の失敗や人間関係の傷つきが大きく影響している、身体症状が強いといった場合には、トラウマ反応の視点が役に立つことがあります。まずは丁寧な見立てが大切です。
Q. ゲームばかりしているのは依存なのでしょうか?
A. ゲームへの没入が心配な状態になることはあります。ただ、ゲームがその子にとって安心できる場所や現実からの避難場所になっている場合もあります。いきなり取り上げる前に、なぜゲームが必要になっているのかを見ることが大切です。
Q. 見守るだけで本当に大丈夫なのでしょうか?
A. 見守りは大切ですが、何もしないことではありません。子どもの反応を観察し、安心できる関係を保ち、必要に応じて生活リズムや環境、相談先を整えていくことも見守りに含まれます。放置ではなく、関係を保ちながら関わることが大切です。
Q. 学校の話をすると怒る子には、どうしたらいいですか?
A. 怒りの奥に、不安や恥ずかしさ、怖さがある場合があります。まずは学校に行かせる話を急ぐよりも、「その話題になると身体がしんどくなるのかもしれない」と見立ててみることが大切です。話すタイミングや言い方を調整し、安心できる場面で少しずつ扱っていく必要があります。
Q. 親だけが相談しても意味がありますか?
A. 意味があります。不登校やゲーム、見守りの相談では、子ども本人がすぐに相談につながれないことも多くあります。その場合、保護者が子どもの反応を理解し、関わり方を整えることが大きな支援になります。
心のエネルギーについて
不登校の背景にある心のエネルギーや見守りの考え方については、関連記事もあわせてご覧ください。
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