相談室の「開放」は本当にいい?見守りと関係から考える学校とのズレの正体/スクールカウンセリング超基礎講座#1
■ 結論
- 相談室の開放は「良いか悪いか」ではなく、その学校のニーズとの適合で考えることが重要です。
- ネガティブな見通しをチームで共有できているかが判断の分かれ目になります。
- 違和感や「なんで?」を仮説と観察で理解に変えていくプロセスが大切です。
- 学校理解はケース理解と同じく、関係の中で丁寧に育てていくものです。
関係を保ちながら見守るためには、善意や理想だけでなく、その場に合った現実的なバランス感覚が必要になります。
導入:良かれと思った関わりが、なぜ止められるのか
不登校や見守りの支援を考えていると、「安心できる場所を増やしたい」という思いはとても自然に出てきます。
たとえばスクールカウンセラーの相談室を、休み時間に開放する。子どもが気軽に来られるようにする。
一見すると、とても良い取り組みに思えます。
ただ実際には、学校側から「ちょっと待って」と言われることがあります。そのときに「なんで?」と感じてしまう。
このズレは、多くの支援者が一度は経験するものではないかと思います。
相談室の開放は「正しいかどうか」では決められない
ある投稿でも、「相談室の開放は賛否両論であり、個人的には慎重」という意見がありました。
https://x.com/yu_grpsycho/status/2050727995036577855?s=46&t=p3VSuxXEGJx3UpwPhtvw1A
理由としては、相談室のルールの維持が難しくなること、人が多く集まることで入りづらさを感じる子がいることなどが挙げられていました。
ここで大事なのは、「開放が良いか悪いか」という話ではないということです。
その学校にとって必要なのか。その学校の子どもたちに合っているのか。
この視点で考える必要があります。
判断のポイントは「見通し」を持てているかどうか
相談室を開放するかどうかを考えるときに重要なのは、次のような問いです。
- その学校のニーズに合っているか
- 開放したときに起こりうるネガティブな影響を想定できているか
- その見通しをチームで共有できているか
- それでもなおメリットが上回るのか
この「見通し」を持たずに進めると、善意だけで動いてしまいやすくなります。
そして、学校側とのズレが生まれます。
なぜスクールカウンセラーはズレやすいのか
スクールカウンセラーは、比較的「話せばわかる」「関係ができれば変わる」という前提で考えやすいところがあります。
これは臨床的にはとても大事な視点です。
ただ、学校という場は個人の関係だけで動いているわけではありません。
ルール、集団、安全管理、他の子どもへの影響といった複数の要素が絡みます。

そのため、現場の教員は「うまくいかないパターン」も含めて判断しています。
ただし、その文脈が丁寧に説明されることはあまりありません。
だからこそ、「なんで?」で止まりやすいのです。
「なんで?」を理解に変える方法
ここで大事になるのが、臨床でやっていることと同じプロセスです。
- 違和感をそのままにしない
- 仮説を立てる
- 観察する
- 関わる
- また修正する
この繰り返しです。
たとえば、なぜ開放に慎重なのか。どんなトラブルが起きたことがあるのか。どの子が困る可能性があるのか。
こうした仮説を持って関わると、少しずつ文脈が見えてきます。
これはケース理解とまったく同じです。

学校理解は「関係」の中で育つ
学校という組織を理解することは、一種の「異文化理解」です。
そしてそのためには、関係を保つこと、一方的に正しさを押し付けないこと、現場の文脈を尊重することが重要になります。
これは、子どもへの見守りとも重なります。
一方的に「こうした方がいい」と進めるのではなく、関係の中で調整していく。
そのプロセス自体が、支援の質を上げていきます。
チェックリスト
相談室の開放や関わり方を考えるときに、次の点を振り返ってみてください。
- その学校のニーズを具体的に把握できているか
- 起こりうる困りごとを想定できているか
- その見通しをチームで共有できているか
- 違和感をそのままにせず、仮説として扱えているか
まとめ
相談室の開放のようなテーマは、シンプルに正解があるものではありません。
むしろ、その場に合っているか、関係を壊さないか、見守りとして機能するかというバランスの中で判断されるものです。
そしてその判断力は、「なんで?」という違和感を丁寧に扱うことで育っていきます。
学校理解も、子どもの理解も、本質的には同じプロセスの中にあります。
■ よくある質問(FAQ)
目次
ToggleQ. 相談室は自由に開放した方がいいのでしょうか?
A. 一概には言えません。学校ごとの状況や子どもたちの特性によって、メリットとデメリットが変わります。まずはその場に合っているかを見ていくことが大切です。
Q. 学校から「やめた方がいい」と言われたとき、どう考えればいいですか?
A. まずは「なぜそう判断しているのか」を理解することが大切です。直接説明されなくても、仮説を持って観察することで文脈が見えてくることがあります。
Q. 見守りって結局何をすればいいのですか?
A. 何もしないことではなく、関係を保ちながら状況に合わせて関わり続けることです。その場に合った距離感を探ることが見守りの本質です。
Q. 不登校の子にとって安心できる場所は増やした方がいいですか?
A. 安心できる場所は大切ですが、「どんな形で」「誰にとって」安心になるのかは個別に考える必要があります。場合によっては、人が多い場所が負担になることもあります。
あとがき
これは常勤のSCをやっていた時に、はっきりと気づいたことなのですが、学校現場は思いつきで動いている事はなく、予期せぬトラブルが起こった時であっても、ちゃんと流れを見ていくと、予期できなかった理由が見つかったり、対応が遅れたときに対応ができない理由というものが、割とはっきり存在していることがあります。
定点観測みたいに、たまに来るからこそ見えることもあるのですが、たまに見ているだけでは、何かことが起こったときに、ついそこにいる当事者のスキルや人間性みたいなものに原因帰属してしまいがちですよね。
本来はネガティブなことが起こらないように、きっちりと積み上げていくのが学校教育なのですが、理想的な状態が作れることなんてまずなくて、どこか穴が空いてしまうところを必死でツギハギをしながら、少しでもマイナスが起こらないように頑張っているのが学校現場かと思います。
スクールカウンセラーに求められる態度としては、安易に自分の見えているところだけで、良い悪いの評価や、薄っぺらい原因貴族をするのではなく、その視点では絶対見えない。そこに至る文脈や、その言が起こってきている意味と言うところまで理解しようと努めること。理解をフィードバックして、少しずつコンセンサスを取っていくことを常としなければいけないのかもしれません。
自分がそれができていたかと言えば、なかなか難しかったなぁと思っております。
だからこそ、スクールカウンセラーには、子どもや保護者の理解だけでなく、学校という組織を理解する視点も必要になります。
今回の記事で扱った内容は、スクールカウンセリング超基礎講座 第1回でも詳しく取り上げています。
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