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初回面接で症状だけを聞かないために|クライエントのストーリーを聞くということ

 

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臨床心理士/公認心理師 かけい臨床心理相談室代表/愛知学院大学特任講師 専門領域:ブリーフセラピー
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■ 結論

  • 初回面接では、必要な情報を集めることと同時に、クライエントが自分の言葉で話せる関係をつくることが大切です。
  • 症状の有無や経過だけでなく、その症状を本人がどのように体験し、どう意味づけているのかを聞いていきます。
  • 現在の困りごと、過去の体験、これから望む未来を行き来することで、クライエント自身の理解が深まることがあります。
  • 共感しながらも少し不思議がる視点を持つことで、関係・見守り・バランスを保ちながら面接を進めやすくなります。

初回面接は情報を集める場であると同時に、クライエントが自分の体験を語り直し、自分の人生とのつながりを見つけていくための関係をつくる場でもあります。

初回面接で、つい情報を集めすぎてしまうこと

スクールカウンセラー、臨床心理士、公認心理師として初回面接を担当するとき、確認したいことはたくさんあります。

いつ頃から困りごとが始まったのか。どのくらいの頻度で起きているのか。学校や家庭ではどのような様子なのか。家族との関係はどうか。これまでにどのような支援を受けてきたのか。

こうした情報は、見立てや支援方針を考える上で欠かせません。

一方で、情報を集めることに意識が向きすぎると、面接が「質問に答える時間」になってしまうことがあります。

クライエントは、聞かれたことに答え、また次の質問に答える。そのやりとりが続くと、「自分が何を話したいか」よりも、「何を正しく答えればよいか」に意識が向きやすくなります。

初回面接でこうした構造が強くできてしまうと、クライエントの主体性が発揮されにくくなることがあります。

支援者に聞かれたことへ答えるだけの関係では、クライエントが自分自身の体験を振り返り、意味づけし、これからを考えていく力が出にくくなることがあるからです。

もちろん、初回面接で必要な情報を確認することは大切です。

ただ、その情報を「こちらが聞き出すもの」としてだけ扱うのではなく、クライエントが自分の体験を語る過程で、少しずつ共有されていくものとして受け取る視点も必要なのだと思います。

症状を聞くことは、その人と症状の関係を聞くこと

初回面接では、症状や困りごとについて聞くことから始まる場合が多いと思います。

眠れない。学校へ行けない。人前で強く緊張する。電話が鳴ると体が固まる。家族とのやりとりが苦しい。

こうした症状を聞くとき、支援者が確認したいのは、症状の種類や程度だけではありません。

その症状を、本人がどのように感じているのか。どのような状況で強くなるのか。誰との関係の中で起きやすいのか。本人は、自分に何が起きていると考えているのか。

こうしたことを丁寧に聞いていくことが大切になります。

症状そのものを聞くというよりも、症状とその人との関係を聞いていく、と言った方が近いかもしれません。

現在の困りごとを広げて理解する

たとえば、ある学校の先生が、保護者からの電話に強い恐怖を感じるようになっていたとします。

一部の保護者から繰り返し強い要求や批判を受けるなかで、電話が鳴るだけで体がびくっと反応する。肩や首が固まり、呼吸が浅くなり、電話に出る前から「また責められるのではないか」と思ってしまう。

この場合、表面的には電話への恐怖や身体反応が問題として見えてきます。

しかし、面接では、その先生にとって電話がどのような意味を持っているのか、保護者との関係をどのように体験しているのかを聞いていくことになります。

現在起きている身体反応だけを見るのではなく、その人が今置かれている環境や関係の中で、何が起きているのかを少し広げて理解していくわけです。

そのとき、支援者の中に次のような問いが浮かぶことがあります。

「これまで色々な保護者対応をしてこられた先生が、ここまで体が反応するのは少し不思議にも感じます。何か思い当たることはありますか」

こうした問いが、過去の体験について話すきっかけになることがあります。

現在の体験と過去の体験をつなぐ

現在の困りごとについて丁寧に話を聞いていると、過去の体験が語られ始めることがあります。

たとえば、学生時代に年上の指導者から繰り返し厳しく叱責され、責められ続けた経験が思い出されるかもしれません。

そのときも何も言い返せず、体が固まり、その場に行けなくなってしまった。

現在の保護者とのやりとりと、過去の指導者との関係の間に、何らかの重なりが見えてくることがあります。

もちろん、ここで「過去の体験が原因です」と早く結論づけることが目的ではありません。

現在の体験と過去の体験の間に、クライエント自身がどのようなつながりを感じるのか。そのつながりを、支援者とクライエントが一緒に見ていくことが大切なのだと思います。

さらに、その場で何も言い返せずに硬直してしまう体の反応や、当時どのように対処していたのかを聞いていくと、その人が人との関係の中でどのように自分を位置づけてきたのかが、少しずつ見えてくることがあります。

そこから、幼少期の親との関係や、怒っている人の前で自分を小さくしておくしかなかった体験が語られることもあります。

こうしたことを、支援者が一方的に解釈するのではなく、クライエントとともに現在と過去を行き来しながら見ていくことが、ストーリーとして聞くことにつながります。

面接は、ストーリーを協働的につくり直す場でもある

面接で現在と過去を行き来しながら話すことは、単に情報を増やすことではありません。

クライエントと支援者が協働して、その人のストーリーを組み立て直していく営みでもあります。

「なぜこんなに苦しいのか分からない」という状態から、「今の出来事には、過去のこんな体験が重なっているのかもしれない」「だから自分の体は、あのように反応していたのかもしれない」「それでも、自分なりに何とかやってこようとしていたのかもしれない」という理解が生まれてくることがあります。

症状は、単なる「治すべき問題」として見えるだけではありません。

その人がこれまでの関係の中で生き延び、自分を守るために身につけてきた反応として理解できる場合もあります。

そのような理解が生まれると、「自分はおかしいのではないか」という感覚から、「自分にはこういう経緯があったのかもしれない」という理解へと、少しずつ見方が変わることがあります。

過去・現在・未来をつなぐ

過去の体験と現在の苦しさが少し見えてきたとき、次に考えたいのは未来です。

解決志向的な関わりでは、たとえば次のような問いが役立つことがあります。

「この状況が少し良くなったとしたら、何が変わっていると思いますか」

「電話が鳴っても今ほど苦しくなくなったとしたら、どんなふうに仕事ができているでしょうか」

「これから、どんな自分になっていけたらよいと思いますか」

過去を理解することだけが面接の目的ではありません。

現在の苦しさを理解し、その人がこれからどのように生きていきたいのか、どのような関係をつくっていきたいのかを一緒に考えることが大切です。

過去、現在、未来を行き来しながら、その人のストーリーを一緒に組み立て直していく。

それは、クライエントが自分の困りごとを「ただ起きている症状」としてではなく、自分の人生の中で意味を持つ出来事として捉え直すことにつながる場合があります。

共感しながらも、「不思議がる」視点を持つ

クライエントの体験に寄り添い、その人の立場から理解しようとすることはとても大切です。

「それは怖かったですね」「そんな状況なら苦しくなりますよね」「よくそこまで頑張ってこられましたね」

こうした共感がなければ、クライエントは安心して話しにくくなります。

一方で、共感に集中しすぎると、支援者の中から「なぜこの人は、ここでこれほど強く反応するのだろう」という問いが消えてしまうことがあります。

その人の立場に立ちながらも、少しだけ不思議がる視点を持つ。

「確かに苦しい状況だ。でも、この人にとっては、なぜ今ここまで苦しいのだろう」「この反応には、過去のどのような体験が重なっているのだろう」「この人は、これまでどのように自分を守ってきたのだろう」

こうした問いを、支援者の中で持ち続けることが、見立てにつながることがあります。

成田善弘先生が示された「不思議がる」という姿勢は、共感と見立てをつなぐ一つの手がかりになるように思います。

クライエントの体験を否定せず、決めつけず、それでも「そうなのですね」で終わらせない。

クライエントと一緒に、「これはどういうことなのだろう」と考えてみる。その姿勢が、現在の困りごとと過去の体験をつなぎ、新しい理解が生まれるきっかけになることがあります。

クライエントの視点に立ちながら、少し俯瞰する

面接では、クライエントの視点に立つことが必要です。

何が怖いのか。何が苦しいのか。何を大切にしているのか。その人は、自分自身をどのように感じているのか。

その人の内側から体験を理解しようとすることが、関係づくりの土台になります。

しかし同時に、支援者には少し俯瞰的な視点も求められます。

今、どのような関係のパターンが起きているのか。何が繰り返されているのか。どのような悪循環が続いているのか。過去の体験と現在の反応が、どのようにつながっているのか。

クライエントの世界に入りながらも、少し離れたところから全体を見渡す。

この二つを行き来することが、初回面接の難しさであり、臨床的な面白さでもあるのだと思います。

初回面接で確認したいチェックリスト

  • 症状や困りごとを、本人の言葉でどのように語れているか。
  • 質問に答えるだけの面接構造になっていないか。
  • クライエントが大切だと思っていることを聞けているか。
  • 現在の困りごとが、どのような関係の中で起きているか見ようとしているか。
  • 過去の体験とのつながりを急いで決めつけていないか。
  • クライエントの視点に立ちながら、少し不思議がる余地を残せているか。
  • 見守りが放置にならず、支援者側の主導が強すぎる関係にもなっていないか。
  • クライエントが自分の人生について考え、選び直せる余白が残っているか。

まとめ

初回面接では、必要な情報を確認することが求められます。

ただし、情報を集めることだけに意識が向くと、クライエントは「聞かれたことに答える人」になりやすくなります。

症状を聞くことは、症状の有無や強さを確認することだけではありません。

その症状を本人がどのように体験しているのか。どのような関係の中で起きているのか。過去のどのような体験と重なっているのか。そして、これからどのように生きていきたいのか。

こうしたことを、クライエントと一緒に考えていくことが、初回面接の大切な役割なのだと思います。

共感しながらも、少し不思議がる。現在、過去、未来を行き来する。情報を取りながらも、クライエントが主体的に話せる関係をつくる。

その積み重ねが、治療や支援への期待を支え、クライエント自身の回復の力につながっていくことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 初回面接で情報を聞き切れないまま終わっても大丈夫?

A. 初回は確認したい項目が多く、生活歴、家族関係、学校での様子、症状の経過などを一度に把握したくなります。

ただ、初回面接で必要な情報をすべて聞き切ることよりも、クライエントが「ここでは自分のことを話してよい」と感じられる関係をつくることが、その後の面接を支えることがあります。

安全面や緊急性に関わる情報は確認しつつ、その他の情報は、面接の流れの中で少しずつ理解していくこともできます。情報不足を急いで埋めるより、クライエントが何を大切なこととして語ろうとしているかを見失わないことが大切です。

Q. 症状の聞き取りが、問診のようになってしまうときはどうしたらいい?

A. 症状の頻度、強さ、きっかけ、持続時間などを確認しているうちに、質問が連続しやすくなることがあります。

そのようなときは、症状の事実だけでなく、「そのとき本人はどのように感じているのか」「何が一番困るのか」「本人はその反応をどう理解しているのか」といった、体験の意味に関する問いを加えると、面接の流れが変わることがあります。

症状の情報を取ることと、クライエントのストーリーを聞くことは対立するものではありません。症状を、その人の生活や関係の中で起きている体験として聞くことで、両方を同時に扱いやすくなります。

Q. 共感して聞いていると、見立てのための問いが浮かばなくなります。どうしたらいい?

A. クライエントの苦しさにしっかり寄り添おうとすると、「それはつらいですよね」と感じることに集中し、少し距離を取って考える余裕がなくなることがあります。

共感と見立ては、どちらか一方を選ぶものではありません。

クライエントの視点から「それは苦しい」と理解しながら、支援者の中では「なぜ今、この場面で、これほど強い反応が起きるのだろう」と不思議がる視点を持っておくことが役立ちます。

その問いは、原因を決めつけるためではなく、現在の困りごとと、その人のこれまでの体験や関係のパターンを、丁寧につなげて理解するためのものです。

Q. 過去の体験について、どこまで聞いてよいのでしょうか?

A. 過去のつらい体験に触れることで、クライエントの負担を強めてしまわないか心配になることがあります。

過去を聞くこと自体が目的ではありません。現在の困りごとを丁寧に聞く中で、クライエント自身が過去の体験とのつながりを語り始めたときに、その意味を一緒に見ていくことが大切です。

支援者側が「原因を探さなければならない」と急ぐと、面接は硬くなりやすくなります。クライエントが今話せる範囲を尊重しながら、現在の体験との関係を少しずつ理解していく方が、関係を保ちやすいことがあります。

Q. クライエントが話題をあちこちに移すとき、どう整理したらいい?

A. 現在の困りごと、家族の話、過去の体験、学校や職場での出来事などが行き来すると、どこを中心に聞けばよいのか迷うことがあります。

ただ、話題が移ること自体が、その人の中で何かがつながっている表れである場合もあります。

支援者がすぐに話を戻そうとするより、「今のお話と、先ほどの出来事には何かつながりがありますか」「この二つの話を並べると、どんな感じがしますか」と、クライエントと一緒に関係を見ていくことができます。

すべてを一度に整理しようとせず、その時点でクライエントが語れているストーリーを大切にすることが、見守りと整理のバランスにつながります。

Q. 解決志向の質問は、どのタイミングで入れるとよいですか?

A. 未来や解決について聞きたいと思っても、クライエントがまだ十分に苦しさを語れていないように感じると、早すぎるのではないかと迷うことがあります。

解決志向の質問は、過去の探索を終えてから使うものではありません。ただし、クライエントが「今の自分はどうなっているのか」「何に困っているのか」をある程度語れたあとに入れると、自然につながりやすいことがあります。

「この状態が少し楽になるとしたら、何が変わっていそうですか」「今より少しでもやりやすい日はありますか」といった問いは、現在の困りごとを否定せずに、未来への視点を開くことがあります。

過去・現在・未来を無理に順番どおり扱うのではなく、クライエントの語りの流れの中で行き来することが大切です。

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この記事は、『臨床心理学』創刊第1号に掲載された、原田誠一先生による初回面接・見立てに関する文章を学生とともに読み、その際に考えたことを筆者なりに整理したも

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