チーム支援で「グループ感」が生まれる瞬間とは? スクールカウンセラーの関わり方
目次
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- チームの「グループ感」は、一人が作るものではなく、対話の中から自然に立ち上がってくる。
- スクールカウンセラーは全員を動かすのではなく、動きやすい方向性と小さな一歩を示す役割を担うことが多い。
- 支援では、計画を押しつけるよりも、それぞれが役割を見つけられる過程を大切にするとチームが動きやすくなる。
- 関係性はコントロールするものではなく、互いのリズムを聴き合いながら育っていく。そのバランスを見守る姿勢が、グループ感につながる。
チーム支援では、「正しい答え」を提示することよりも、その場にいる人たちが自然と同じ方向を向き始める関係性を育てることが、支援全体を前に進める力になることがあります。
スクールカウンセラーとして学校に入ると、「どうすればチームがまとまるのか」「どうすれば先生方が同じ方向を向いてくれるのか」と悩む場面は少なくありません。
一人ひとりは熱心なのに、なぜか会議がまとまらない。
良い提案をしたはずなのに、誰も動き出さない。
そんな経験は、多くの臨床家が一度は経験しているのではないでしょうか。
上手くいく時と上手くいかない時の違いは何かと考えた時に、会議やチームのグルーヴ感てのがヒントになるのではないかと思いました。
同じメンバーでも「ノリ」は変わる
音楽では、同じ譜面を演奏していても、指揮者によってまったく印象が変わることがあります。
テンポはほとんど同じでも、どこで少し待つか、どこを前に進めるかによって、「気持ちよく流れる演奏」になったり、「どこか硬い演奏」になったりします。
その違いを音楽では「グルーヴ」と表現することがあります。
私はチーム支援にも、とてもよく似たことが起きていると感じています。
教員同士のチームでも、教員・保護者・子どもを含めた支援チームでも、それぞれが違う経験や立場を持っています。
つまり、それぞれが違う「リズム」を持っています。
スクールカウンセラーは、その違うリズムを無理に揃えるのではなく、「まずはこのくらいから始めませんか」と、小さな方向性を示していきます。
すると、少しずつお互いの考えが噛み合い始め、「それなら私がやります」「それなら学校でやってみます」という声が自然に出始めます。
その瞬間に、「グループ感が出てきた」と感じます。
「ノリが合う」は心理学でも研究されている
この感覚は、単なる比喩だけではありません。
心理学では、「ラポール(rapport)」という概念として長く研究されてきました。
Tickle-DegnenとRosenthal(1990)は、ラポールを次の3つの要素で説明しています。
- 互いに注意を向け合うこと
- 安心感やポジティブな雰囲気があること
- 自然な協調が生まれていること
特に「協調」は、お互いの動きやリズムが自然に同期していく状態を意味しています。
さらにRamseyerとTschacher(2011、2014)は、セラピストとクライエントの身体の動きを実際に測定し、身体の同期が高いセッションほど、治療関係や治療効果が良好になることを報告しています。
つまり、「ノリが合う」という感覚は、経験的な表現であるだけでなく、実際に測定可能な現象として研究されているのです。
グルーヴは、仕切りすぎると消えてしまう
ここが最も大切なポイントだと思っています。
グルーヴは、誰かが強くコントロールすると生まれにくくなります。
例えば、会議で最初から完成した計画を提示し、「これで進めましょう」と決めてしまえば、効率は良いかもしれません。
しかし、それでは参加している人たちは「自分たちで作った」という感覚を持ちにくくなります。
一方で、
「それなら学校ではこうしてみましょう。」
「保護者にはこんな説明ができそうですね。」
「その方法なら担任でもできそうです。」
というやり取りが積み重なっていくと、不思議なくらいチーム全体が動き始めます。
誰か一人が引っ張るのではなく、みんなが少しずつ参加しながら支援が組み立てられていく。
このプロセスそのものが、グループ感なのだと思います。
グループフローという考え方
心理学者R.キース・ソーヤーは、『Group Genius』の中で、ジャズの即興演奏やコメディ集団などを観察し、「グループフロー」という概念を提案しています。
彼が強調しているのは、「構造」と「即興」のバランスです。
何も決めなければ混乱します。
反対に、すべて決めてしまえば、創造性は失われます。
その中間にある「ちょうどよい余白」が、グループ全体の創造性を引き出します。
スクールカウンセラーのコンサルテーションでも、この考え方は非常に参考になるように感じています。
「ヨシ」と感じる瞬間
長年学校で仕事をしていると、「今、チームが動き始めた」と感じる瞬間があります。
会議の中で、
「それは私がやります。」
「担任でやってみます。」
「保護者にも伝えてみます。」
という言葉が自然と出始める瞬間です。
その場の空気が少し変わり、誰か一人ではなく、何人かが同時に前を向き始めます。
もちろん、全員が同じタイミングで動けるとは限りません。
どうしても今は参加しにくい先生がいることもあります。
そのようなときには、無理に全員を巻き込もうとするより、「このチームでの上手くいった経験が積み上がった時にちーむのなにがへんかするのか?」という視点で考えて、しばらくお手並み拝見ポジションでいてもらうことが結果としてチーム全体を守ることもあります。
関係を大切にすることと、全員を無理に揃えることは、必ずしも同じではありません。
スクールカウンセラーは指揮者ではない
こうして振り返ると、スクールカウンセラーはチームを作る人というよりも、チームが自然に生まれる条件を整える人なのだと思います。
方向性を示す。
小さな一歩を提案する。
話しやすい雰囲気をつくる。
そして、お互いが自然とリズムを合わせ始めるのを待つ。
音楽でいえば、指揮者が音を鳴らしているわけではありません。
実際に演奏しているのは奏者たちです。
スクールカウンセラーもまた、支援を「実行する人」というより、「支援が自然と動き始める場を育てる人」に近いのではないかと感じています。
チェックリスト
- 会議でメンバーそれぞれが「自分で決めた」と感じられる余白があるか
- 小さな一歩から始められる提案になっているか
- 強引に誰かを動かそうとしていないか
- 場の空気や関係性の変化にも目を向けられているか
まとめ
チーム支援で大切なのは、優れたアイデアを提示することだけではありません。
その場にいる人たちが、自分の役割を見つけ、自然と同じ方向へ動き始める空気を育てることです。
グループ感とは、誰かが作るものではなく、関係の中から立ち上がってくるものなのかもしれません。
スクールカウンセラーにできることは、その場に安心して参加できる余白を用意し、小さな一歩を示しながら、チームが自ら動き始める瞬間を見守ることなのだと思います。
■ よくある質問(FAQ)
Q. スクールカウンセラーは会議をリードするべきですか?
A. リードする場面もありますが、常に主導権を握ることが目的ではありません。方向性を示しながらも、参加者自身が考え、役割を見つけられる余白を残すことで、関係性が育ちやすくなることがあります。
Q. 意見が合わない先生がいる場合はどうしたらいいですか?
A. 全員を同時に納得させようとすると、かえって支援全体が止まることがあります。状況によっては、まず動けるメンバーで進めながら関係を見守ることも現実的な選択肢になります。
Q. チームの一体感はどうすれば生まれますか?
A. 一体感は説明だけで生まれるものではありません。小さな成功体験を共有し、「これならできそう」という感覚が積み重なることで、少しずつ関係性が変化していくことがあります。
Q. 支援者は答えを持っているべきですか?
A. 専門的な視点は大切ですが、それだけでは十分ではありません。その場の関係性や対話を大切にしながら、チーム全体で答えを育てていく姿勢も重要だと考えています。
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